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母さんと数分違いで家を出る。まずは家の周辺から探したが、鍵らしきものは見つからなかった。ある程度の大きさがあれど、小物は小物だ。草むらになんか入っていたらと思うとおぞましい。
車の鍵も付いているのに、無くすなんて寧ろ凄くない? 僕なら無いわ。まぁあの人どこ行くか分かったもんじゃないしな――苛立ちを原動力に、地面を見ながらどんどん進む。
呆れながら進行していると、ふと気づいた。顔を上げた先、見慣れぬ空き地がある。日光は明るいが、草が生え放題でおどろおどろしい。廃墟同然の家も何件か並んでおり、裏の世界を彷彿とさせた。
見渡せば人の気配も消えており、外れに出てしまったのだと悟る。暗さ以外、和風ホラー映画張りの風景に息を飲んだ。僕は怖いもの《ホラー》が大っ嫌いなのだ。
父さんみたいに迷うなんて、僕としたことが迂闊だった。
焦りが膨らまないよう、冷静な振りで踵を返す。元来た方向を見失わないように――。
「君、ちょっといい?」
突然の声に、肩が跳ねあがった。逃亡が脳に過ったが、不思議と振り向いてしまう。糸に引かれるとは、まさにこのことかもしれない。
立っていたのは、どこかで見たような男だった。
車の鍵も付いているのに、無くすなんて寧ろ凄くない? 僕なら無いわ。まぁあの人どこ行くか分かったもんじゃないしな――苛立ちを原動力に、地面を見ながらどんどん進む。
呆れながら進行していると、ふと気づいた。顔を上げた先、見慣れぬ空き地がある。日光は明るいが、草が生え放題でおどろおどろしい。廃墟同然の家も何件か並んでおり、裏の世界を彷彿とさせた。
見渡せば人の気配も消えており、外れに出てしまったのだと悟る。暗さ以外、和風ホラー映画張りの風景に息を飲んだ。僕は怖いもの《ホラー》が大っ嫌いなのだ。
父さんみたいに迷うなんて、僕としたことが迂闊だった。
焦りが膨らまないよう、冷静な振りで踵を返す。元来た方向を見失わないように――。
「君、ちょっといい?」
突然の声に、肩が跳ねあがった。逃亡が脳に過ったが、不思議と振り向いてしまう。糸に引かれるとは、まさにこのことかもしれない。
立っていたのは、どこかで見たような男だった。
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