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第六話
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「何読んでるの?」
本屋で立ち読みしていると、真横から声が聞こえてきた。浅く顔を上げると、中身を覗き込む葉月の姿が確認できた。
「存在抹消ボタンについて? 興味あったんだね」
縦書きされる文面を見て、早々判断した葉月は、目の前に積まれている同じ雑誌を手に取る。そうしてパラパラと捲りだした。
「…………次のネタにでもと思ってな」
「あっ、なるほど……! もう次の考えるなんてさすがだね……!」
小声で交し合うと、葉月は持っていた鞄を地面に下ろした。最初のページに戻り、文字を追い始める。
「葉月も興味あんの?」
「……うーんと、一緒にネタ集めでもしようかと思って……」
積極的に作品に関わろうとしてくれる葉月の態度に、思わず頬が赤くなる。間接的にでも直接的にでも、サポートしようとしてくれる人物がいるというのは、とても心強い。
「……ありがと」
横目に、満足気に笑う葉月の笑顔が見えた気がした。
一通り立ち読み出来る物に目を通し、僕らは家へと向かった。もちろん僕の家だ。
実は、葉月の家には一度も行ったことがない。そもそも、提案した事すらないのだが。しかし、どんな家に住んでいるか、一人の男として気にならない訳では無い。
葉月は家に上がり込むなり、定位置に付いた。僕も横に腰掛ける。
二人して横に並びながらも、葉月は本を手に取り、僕はネタ帳という名のノートを手に取った。
「早く結果出て欲しいね」
ふと投げ掛けられ、僕は冷静に返答する。葉月が、視線1つ上げず口火を切るのは普通の事だ。
「うん、待ち遠しい」
懸命にシャーペンを動かしながらも、脳の片隅では結果を待ち侘びている自分がいる。今に限ったことではなく、応募してから何をしている時もずっとだ。精神が持つだろうか、と疑うほど落ち着かない。
「また本出たらさ、私たくさん買って宣伝するね」
「いや、良いよ。なんか恥ずかしいし」
たくさんの人に読んで欲しいのは正直な願いだ。しかし、知人となるとまた別だ。恥ずかしくて堂々と告知できない。もっと実績が出来たら、話は変わるかもしれないけれど。
「……気持ちだけ貰っとく」
「分かった、じゃあ私読んで感想語るね」
「楽しみにしとくよ」
不確定な未来をシュミレーションし、少し浮ついた心持ちで笑い合う。二人でなら少し上へ行ける気がする。
葉月が作品を大事にしてくれているからか、好きだと言われる嬉しさを常々味わっているからか、僕の中には30パーセントの不安と、70パーセントの自信が溢れていた。
もちろん、落ちたら格好悪いので公言はしないが。
本屋で立ち読みしていると、真横から声が聞こえてきた。浅く顔を上げると、中身を覗き込む葉月の姿が確認できた。
「存在抹消ボタンについて? 興味あったんだね」
縦書きされる文面を見て、早々判断した葉月は、目の前に積まれている同じ雑誌を手に取る。そうしてパラパラと捲りだした。
「…………次のネタにでもと思ってな」
「あっ、なるほど……! もう次の考えるなんてさすがだね……!」
小声で交し合うと、葉月は持っていた鞄を地面に下ろした。最初のページに戻り、文字を追い始める。
「葉月も興味あんの?」
「……うーんと、一緒にネタ集めでもしようかと思って……」
積極的に作品に関わろうとしてくれる葉月の態度に、思わず頬が赤くなる。間接的にでも直接的にでも、サポートしようとしてくれる人物がいるというのは、とても心強い。
「……ありがと」
横目に、満足気に笑う葉月の笑顔が見えた気がした。
一通り立ち読み出来る物に目を通し、僕らは家へと向かった。もちろん僕の家だ。
実は、葉月の家には一度も行ったことがない。そもそも、提案した事すらないのだが。しかし、どんな家に住んでいるか、一人の男として気にならない訳では無い。
葉月は家に上がり込むなり、定位置に付いた。僕も横に腰掛ける。
二人して横に並びながらも、葉月は本を手に取り、僕はネタ帳という名のノートを手に取った。
「早く結果出て欲しいね」
ふと投げ掛けられ、僕は冷静に返答する。葉月が、視線1つ上げず口火を切るのは普通の事だ。
「うん、待ち遠しい」
懸命にシャーペンを動かしながらも、脳の片隅では結果を待ち侘びている自分がいる。今に限ったことではなく、応募してから何をしている時もずっとだ。精神が持つだろうか、と疑うほど落ち着かない。
「また本出たらさ、私たくさん買って宣伝するね」
「いや、良いよ。なんか恥ずかしいし」
たくさんの人に読んで欲しいのは正直な願いだ。しかし、知人となるとまた別だ。恥ずかしくて堂々と告知できない。もっと実績が出来たら、話は変わるかもしれないけれど。
「……気持ちだけ貰っとく」
「分かった、じゃあ私読んで感想語るね」
「楽しみにしとくよ」
不確定な未来をシュミレーションし、少し浮ついた心持ちで笑い合う。二人でなら少し上へ行ける気がする。
葉月が作品を大事にしてくれているからか、好きだと言われる嬉しさを常々味わっているからか、僕の中には30パーセントの不安と、70パーセントの自信が溢れていた。
もちろん、落ちたら格好悪いので公言はしないが。
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