檻から逃げる

有箱

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友だち

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「美味しいでしょ」
「はい、食べたの初めてです」

 私の手には、ハンバーガーがある。知識として知ってはいたが、実食は初めてだ。

「そうなんだ!」
「はい、外出を制限されているのでこういう場所自体に……」

 呟きながら我に返る。重い話をしてしまっただろうかと、向かいの様子を伺った。
 名越くんはと言うと、頬にまでバーガーを詰め咀嚼している。そうして飲み込んで一言、

「いつも頑張ってるもんね。息が詰まったりしない?」

 くれたのは、またも嬉しい言葉だった。久々に誉められ、涙しそうなほど嬉しくなる。
 この感覚を、忘れかけていた。

「そういう時もありますが、慣れちゃいました」
「凄いなぁ。俺は勉強って駄目だからなー。頑張ってたけど疲れちゃったや。で、次はどこ行こう?」

 軽めに放った名越くんは、食い気味に次の話題へ移る。行き先を委ねられても、もう焦らなかった。
 当然、特定の場所は決まっていないが。

「じゃあ、碧音さんの行きたい所がいいです」



 委ねた結果、着いたのは学生向けのアクセサリー店だった。意外な場所に数秒固まってしまう。

「女の子にプレゼントしたいんだけど、どういうのが良いと思う?」

 だが、尋ねられて意図を組んだ。サプライズだろうか。
 プレゼントを共に選ぶなんて、友人っぽくてワクワクする。同時に、プレゼントを渡したい程の関係に憧れも抱いたけど。

「彼女さんですか?」
「友達かな」
「どんな方ですか?」
「可愛い人」
「……難しいですね」

 真剣に相手を想像してみる。自分なりのイメージでアクセサリーと向き合ったが、種類が豊富過ぎて難儀してしまう。

「じゃあ、あかりさんの好きなの教えて。参考にする」
「えっ、でも私自信ないです。流行も分からないですし」
「好きなので良いんだよ」

 ヒントを――だが、答えに結びつけるには勇気の要る提案を彼はくれた。
 目を惹くものも、身につけてみたいものもある。だが、可愛い友人に送る物を、私基準で選んではいけない気がする。

 何より、選択が否定された時が怖かった。

 それでも、答えを待っている以上、選ばずにいられないが。

「……これとか?」

 一番惹かれたネックレスを、恐る恐る指差す。だが、怖くなって直ぐ訂正した。

「でも、可愛い方ならあちらの方が良いかもしれませんね!」

 名越くんは、最初に指した商品を取り、私の前に掲げる。パッと笑顔の花が咲いた。

「うん、良い感じ!」
「わ、私を基準にされない方が……されるならもっと可愛い……」
「なんで? あかりさん可愛いじゃん。これにしよっと」

 当然の如く口にした名越くんは、翻ってレジに向かう。
 その背を見て、再び頬が紅潮した。否定されなかった安堵もあり、体が複雑に温もっている。

 ああ、今日が終わらなきゃ良いのに。
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