ご主人様の苦しみが、どうか安らぎますように。

有箱

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この痛みは思うが故に(2)

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 お世話係さんは、慣れた手つきでお部屋を整えます。気付けば、燃えきらない問いが勝手に零れていました。

「ご主人様のお仕事は何なのでしょうか」

 人の命を葬り去るお仕事。それでいて、人々の暮らしを守るお仕事。二つの情報で、容易に仮説は立てられます。
 しかし、風日向さまご本人に、直接訪ねることは出来ませんでした。あまりに強く、罪悪感を感じておられたからです。

 嵩を増す罪悪感と生きるのは、どれだけ苦しかったことでしょう。
 私は欠片さえ、気配を感じ取れていませんでした。苦しみを共有できなかった後悔を、今さらしてしまいます。

「役人さんに頼まれて、処刑を代行する仕事よ。表では裁けない人たちを裁くのね。代々受け継がれている仕事みたい」

 そっか、知らなかったのね。困り笑いを浮かべながら、お世話係さんは続けました。

「まあ、篝ちゃんのこと娘みたいに可愛がっておられたから、あまり知られたくなかったのかもしれないわね」

 補足はきっと正解です。けれど、私から知ろうとしなかったことが今は悔やまれます。
 こんなにも優しい人が、殺した相手を全員覚えているような人が、一人で抱えていた。

 それでもう、十分な罰だと言えるのではないでしょうか。いいえ、十分すぎます。
 そもそも、こんなにも優しい人が、罰を受ける必要なんてきっとないのです――いいえ、私が嫌なのです。

 ご主人様を、楽にして差し上げたい。

 私の心に、一つの答えが現れました。すんなり染みこんだ答えは、いつかに見た未来を見せるのでした。
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