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第二十二話

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「オオカミー!オオカミー!お茶会の話持ってきたわよー!オオカミー!」

 赤ずきんは森に飛び込んで直ぐに、オオカミ少年を探していた。
 だが、どこにもその姿が見えない。
 少しでも早く決定を教えたいのに、会えなければ伝えられないじゃないか。

「もー、どこにいるのよ、いつもは向こうから出てくるくせにー」

 赤ずきんはほほを膨らませながらも、少しだけ辺りを探してみる事にした。

 だが見つからず、赤ずきんは仕方なくおばあさんの家にやってきていた。

「あら、赤ずきん、元気がないわねぇ」
「そうなのよ、オオカミがどこにもいなくて」
「あら、オオカミちゃんが?どうしたのかしらねぇ?」

 昨日話をした時はとても楽しそうにしていたのに、どうしたのだろうかと考える。
 確かに、悩んでいるのはいたが。

「せっかくお友だちを作れるチャンスが出来たって言うのに…」

 オオカミ少年を思って、不満げにする赤ずきんを見ていると、おばあさんは、なぜだか笑顔になっていた。

「…やっぱり赤ずきんは優しいわねぇ」
「えっ、急にどうしたの?」
「いいえ、なんでも」

 多分、動物たちをお茶会に誘うのは、とっても大変だっただろう。
 それなのに、友だちがほしいオオカミ少年のために一生懸命がんばれるのだ、それは優しくないと出来ないだろう。

 ちょっと強引な所もあるが、それも全部愛があるからこそだろうから。
 ただ、赤ずきん本人は、自分が優しいと気付いていないみたいだけれど。

「お茶会、上手くいくといいわねぇ」

 赤ずきんとオオカミ少年も仲良くなれるといいね。との気持ちも含めて、おばあさんはほほえんだ。



「…赤ずきんと、お菓子パーティしてもいいのかな…」

 オオカミ少年は森の奥の奥の茂みにもぐって、ずっとずっと考えていた。
 赤ずきんが自分を呼んでいたから直ぐにでも出て行きたかったのだが、さっききいた動物たちの悪口がオオカミ少年の足を止めていた。

 自分はオオカミだから一人で生きなきゃいけないのかな。お友だちなんて欲しいと思っちゃいけないのかな。
 そう考えるとさみしくなってきて、ポロリと涙が出た。

「…うっえぇえ…お友だち欲しいよぉ…」

 心の声が、泣き声と一緒に零れてくる。
 おばあさんのアドバイスどおり、素直に言ったら誰かお友だちになってくれるだろうか。

 いいや、多分無理だろうな。
 だって僕は、オオカミだから。

「あっ、やっと見つけた!!!」
「ぎゃあぁあああ!!!」

 オオカミは、一番見られたくなかった赤ずきんに泣いている所を見られてしまい、びっくりして茂みに頭を突っ込む。
 だがそれでも、ちゃんとしっぽは庇った。

「何泣いてるのよ」

 赤ずきんはおばあさんに言って、もう一度オオカミ少年を探しに来ていた。
 泣き声が聞こえてきて、今見つけたところだ。

「…なっ、泣いてない…!」

 ひっくひっくと鼻をすすりながら強がるオオカミ少年に、赤ずきんは溜め息を吐いた。

「お茶会、明日やるわよ、場所はこの森を出たところで。絶対きなさいよ」
「えっ?森を出たところ!?」

 オオカミ少年は、振り向いて赤ずきんの顔を見る。
 森を出たところと言えば、他の動物もいるところだ。

「そうよ、あんた友だち欲しいんでしょう?だから皆でお茶会するのよ」
「ええーーー!みんなって皆!?」
「そうよ、来なさいよね」
「嫌だよー、怖いよー!それにお母さんが、森の動物たちとは仲良くしちゃダメだって…」

 オオカミ少年は強がるのも忘れて、本当の気持ちを叫んでいた。それほどに怖いのだ。
 それに昔、もっと小さな頃、お母さんに言われていた事も思い出す。

「私はあんたと皆がお友だちになって欲しいのよ」
「…でっ、でも」
「いるんでしょ?」
「…う、うん…」

 オオカミ少年は赤ずきんの強気に押されて、つい頷いていた。その後に、はっとなる。

「う、嘘!いらない!」
「なんで強がるのよ、これはチャンスなのよ」

 オオカミ少年は、強く言われ考えた。
 確かに今がんばらなければ、この先もずっと一人ぼっちで、寂しい生活を続けなければならないだろう。

 お母さんの言葉は引っかかるけど、今はそのお母さんもいなくなってしまって、一人ぼっちの悲しさを知ってしまった。

 夢中になって色々考えていると、赤ずきんの両手が耳の上に乗った。

「ぎゃっ」

 そして、サワサワとなでられる。
 千切られると思ったオオカミ少年は、その行動に照れてしまった。

「友だち、欲しいんでしょ?」

 今なら、赤ずきんが優しいと言っていたおばあさんの言葉を信じられる。
 今なら、素直になっても怒られなさそうだ。

「…欲しい…一人ぼっちは寂しい…」
「ちゃんと言えたわね、良い子じゃない」

 赤ずきんはいつもの強気な笑顔を見せると、わしゃわしゃとなでる手を強くした。

「大丈夫、きっと出来るわ!私が作ってあげるから安心しなさい!じゃあまた明日!」

 そして手をぶんぶん振ると、遠くへ駆けて行ってしまった。
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