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少しずつだよ(1)
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旧校舎での私を、教室にも反映させたい。
そんな内面は無視され、通常通り音楽の授業が開始された。二ヶ月近い練習は、見事な和を作り上げている。私を除いた歌声で。
やっぱり私も、ここに入りたい。
長い年月、諦めていたはずの願いが弾けた。自然と呼吸が大きくなる。これで波乗りの準備は整った。はずだった。
コントロール不足の喉が、突然声量をあげる。和を飛び出した声が、教室中に動揺を与えるのが分かった。
何事もないかのように演奏は続けられる。しかし、向いて逸らされる視線は、失敗を流し去ってくれなかった。
恥と恐怖が全身を包む。涙はなんとか堪えたが、教室からの逃亡は我慢できなかった。
私は初めて授業をサボタージュした。
ただ、理由もなく家には帰れない。結果、向かった先は旧校舎だった。爪先に案内され、自然と音楽室の前に立つ。
歌声は聞こえなかった。孤独を実感し、突然息が詰まりだす。上ってきた熱さが目の奥に溜まり、数秒の我慢虚しく涙零れた。
“私、やっぱり歌うのが怖いよ。楽しいと思ったのに怖くなっちゃったよ”
敢えて声は作らずに呟く。静けさを壊すことなく吐き出し続ける。
自分の声も歌も、もっと嫌いになりそうだよ。ううん、歌自体を嫌いになっちゃいそう。皆みたいに自由に歌いたかった。貴方みたいに楽しさいっぱいに歌いたかった。歌が苦しいものになるのは嫌だよ。
「それは私だって嫌だよ」
返事で嘆きが止まった。ないことを前提にしていたせいで、余計言葉に詰まる。
「貴方が歌を嫌いになるのは私も嫌。楽しく歌ってほしいな」
首肯も強がりもできず、ただ固まってしまった。何か言わなきゃ、いつかを思い出させる状況の中、涙だけが頬の上を動いた。
「大丈夫、貴方の声はとても魅力的だよ」
「……う」
惨めな声が漏れる。涙と共に次々溢れ出す。彼女の優しい声は、傷口に充てられた柔らかな包帯だった。大嫌いな声で、私はただ泣いた。
そんな内面は無視され、通常通り音楽の授業が開始された。二ヶ月近い練習は、見事な和を作り上げている。私を除いた歌声で。
やっぱり私も、ここに入りたい。
長い年月、諦めていたはずの願いが弾けた。自然と呼吸が大きくなる。これで波乗りの準備は整った。はずだった。
コントロール不足の喉が、突然声量をあげる。和を飛び出した声が、教室中に動揺を与えるのが分かった。
何事もないかのように演奏は続けられる。しかし、向いて逸らされる視線は、失敗を流し去ってくれなかった。
恥と恐怖が全身を包む。涙はなんとか堪えたが、教室からの逃亡は我慢できなかった。
私は初めて授業をサボタージュした。
ただ、理由もなく家には帰れない。結果、向かった先は旧校舎だった。爪先に案内され、自然と音楽室の前に立つ。
歌声は聞こえなかった。孤独を実感し、突然息が詰まりだす。上ってきた熱さが目の奥に溜まり、数秒の我慢虚しく涙零れた。
“私、やっぱり歌うのが怖いよ。楽しいと思ったのに怖くなっちゃったよ”
敢えて声は作らずに呟く。静けさを壊すことなく吐き出し続ける。
自分の声も歌も、もっと嫌いになりそうだよ。ううん、歌自体を嫌いになっちゃいそう。皆みたいに自由に歌いたかった。貴方みたいに楽しさいっぱいに歌いたかった。歌が苦しいものになるのは嫌だよ。
「それは私だって嫌だよ」
返事で嘆きが止まった。ないことを前提にしていたせいで、余計言葉に詰まる。
「貴方が歌を嫌いになるのは私も嫌。楽しく歌ってほしいな」
首肯も強がりもできず、ただ固まってしまった。何か言わなきゃ、いつかを思い出させる状況の中、涙だけが頬の上を動いた。
「大丈夫、貴方の声はとても魅力的だよ」
「……う」
惨めな声が漏れる。涙と共に次々溢れ出す。彼女の優しい声は、傷口に充てられた柔らかな包帯だった。大嫌いな声で、私はただ泣いた。
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