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第八話
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力の停止を感じ、目の前を見ると、先程まで生きていた兵は息絶えていた。
シュガは、離れるようになった右手で、傷のあった場所を強く浚う。流れた血を拭うと、傷痕さえ跡形も無く消えていた。
シュガは、治療後に何時も感じる疲れを感じ、小さく溜め息を吐く。
「グロードさん、終わりましたので今開けます」
気だるく感じる身体をゆっくりと移動させ、扉の前に立ち鍵を開けた。
グロードは、姿が見えると社交辞令を繰り出す。
「お疲れ様です」
「有り難う御座います」
「では、後は私が片付けますのでシュガは着替えて下さい。今の時刻なら誰も居ない筈です」
シュガはグロードの配慮を受け取り、血が染み付いた上着を脱いだ。
それを右手にもって更衣室へと移動する。仕事部屋はシュガだけ個別だが、更衣室はそうではない。
だが、使用は基本に無人の時を狙っている。無人の時、と言うのは皆が仕事に勤しんでいる時間帯である。
命の重さを感じない代わりに、シュガは己の薄情さだけを感じた。
自分のような人間を増やさない為にも、早く戦争を終わらせなければならない。
自分のこの力は、どこまで戦いに影響を及ぼせるのだろう。
辿り着いた更衣室の水道で傷を洗った後、考えながら服を着替えていると、後方から扉が開く音がした。
「わっ!シュガ!」
聞こえた声に緩く振り向くと、そこには驚いた様子のリガがいた。
「あぁ、リガ、どうしました?」
視線の先にあるのは、シュガが先程着用していた血の付いた服である。重症患者でも相手にしない限り、滅多にお目にかからないであろう真っ赤な血の付いた服だ。
リガは気まずそうに笑顔を浮かべ、苦々しそうに口を開いた。
「……忘れ物をしたから取りにきたんだけど…」
シュガは、離れるようになった右手で、傷のあった場所を強く浚う。流れた血を拭うと、傷痕さえ跡形も無く消えていた。
シュガは、治療後に何時も感じる疲れを感じ、小さく溜め息を吐く。
「グロードさん、終わりましたので今開けます」
気だるく感じる身体をゆっくりと移動させ、扉の前に立ち鍵を開けた。
グロードは、姿が見えると社交辞令を繰り出す。
「お疲れ様です」
「有り難う御座います」
「では、後は私が片付けますのでシュガは着替えて下さい。今の時刻なら誰も居ない筈です」
シュガはグロードの配慮を受け取り、血が染み付いた上着を脱いだ。
それを右手にもって更衣室へと移動する。仕事部屋はシュガだけ個別だが、更衣室はそうではない。
だが、使用は基本に無人の時を狙っている。無人の時、と言うのは皆が仕事に勤しんでいる時間帯である。
命の重さを感じない代わりに、シュガは己の薄情さだけを感じた。
自分のような人間を増やさない為にも、早く戦争を終わらせなければならない。
自分のこの力は、どこまで戦いに影響を及ぼせるのだろう。
辿り着いた更衣室の水道で傷を洗った後、考えながら服を着替えていると、後方から扉が開く音がした。
「わっ!シュガ!」
聞こえた声に緩く振り向くと、そこには驚いた様子のリガがいた。
「あぁ、リガ、どうしました?」
視線の先にあるのは、シュガが先程着用していた血の付いた服である。重症患者でも相手にしない限り、滅多にお目にかからないであろう真っ赤な血の付いた服だ。
リガは気まずそうに笑顔を浮かべ、苦々しそうに口を開いた。
「……忘れ物をしたから取りにきたんだけど…」
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