フレンドテロリスト

有箱

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 登校すると、偶然校門で穂積と会った。穂積も一時限目から授業があるのだろう。
 包容力のある笑みで、白都を迎え入れる。

「おはよう白くん、あれ? 寒くない?」

 白都が上着を着ていないことに早々気付いたらしく、何の気も無さそうに呟いた。
 白都は、予め作っておいた言い訳を口にする。

「あっ、はい、昨日暑かったので今日は止めたんです」
「なるほどねぇ。そうだね、昼間はまだ暖かいからねぇ」

 穂積は違和感を抱かなかったのか、いつも通りの幸福そうな笑みを浮かべたままだ。
 目映い日差しに何かを感じたのか、紐で肩に吊るしていたカメラを構え、突如シャッターを切る。

 視線が逸れた瞬間、白都はゴミ箱の中に放った布きれを思い出していた。同時に気分を落としたが、穂積の視線を感じて一笑した。

「今日はお昼来る?」
「はい、行きます。今日は一日中授業があるので」
「そっかぁ、じゃあ今日は皆で食べられそうだねぇ」

 嬉しそうに声を上げた穂積は、昼食の光景でも想像しているのかニコニコしている。
 穂積は人が好きなのか、いつも他人ばかりを見ている印象があった。言うなれば母親のよう、とでも例えようか。いや、それを超越し、お爺さんのようだと例えた方が合っているかもしれない。
 ただ単に、常にシャッターチャンスを探しているだけかもしれないが。

「じゃあお昼にね」
「はい」

 しかし、彼の優しさと人懐っこさが無ければ、こんなにも自分含め六人が親しくなることは無かっただろう。

 それぞれの教室に向かうため、穂積と分かれた所で白都は笑顔を落とした。
 話していても緊張感は抜けず、次なる命令を恐れている。昨日は悪戯染みた命令だったが、今に重篤な内容が送られてくるのでは無いかと心配してしまう。

 かといって念を押されてしまった以上、警察に相談はもちろん、友人に相談も出来ない。しかし、成り行きに任せたとしても、唯々ループする気しかしない。

 悪循環でしかないと分かりながらも、最善の方法が見出せず、白都は頭を抱えるしかなかった。
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