フレンドテロリスト

有箱

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 翌日、予定通り白都はコンビニに来ていた。
 第一にATMで金を引き出し、そしてから普段通り弁当コーナーへと赴く。
 しかし、白都の手は弁当には伸びず、おにぎりコーナーへと向かっていた。

 今回の命令は、実行しやすい命令だ。
 しかし、大学費用の為に稼いでいる白都にとって、一ヶ月分の給料というのはかなり高い金額だった。
 余分な費用を家族に請求し、困らせたくは無い――。

 そんな考えが及んだ結果、必然的に安い方へと足が向いたのだ。次の給料日まで、嫌でも節約する破目になりそうである。

 コーナーに並ぶ色取り取りのおにぎりの中から、白都は安いものを二つ手に取った。

***

 鞄に潜めた長封筒内のお金が、随分な重みを帯びているように感じる。
 白都は周囲を窺いながら、いつも使用している屋上に来ていた。人の影は無く、気配すらない。

 何度も辺りを見回し、誰も居ないことを何度も確かめた。そうして、指定場所である換気扇の上に封筒を置く。確りと、途中で拾ってきた石も上に乗せた。
 風は吹いていない。気候も暖かく、雨が降る心配もなさそうだ。

 白都は実行を目に焼き付けると、無音でその場を去った。

 続いて向かったのは図書室だった。
 実は、図書室には屋上の一部が見えるポイントがある。好都合なことに、その一部こそが換気扇も見える場所だった。
 角度上、載せた部分までは見えないが。

 これは、レポート製作の為、時々図書室を利用しているという帝に聞いた。余談だが、帝は図書館より図書室派らしい。
 その話を日向や侑也、和月にしたところ、気付かなかったと笑っていた。穂積だけは知っていたようだが。

 屋上を頻繁に使用する彼等でさえ気がつかないのだ。全く気に留めていない人間なら、恐らく範疇には入れていないだろう。
 白都は勉強する不利をして、何気なく屋上を注視し続けた。

 しかし、回収に当たる者は愚か、人一人として現れない。もしや偵察に気付かれているのでは無いか、と胸騒ぎを覚えだした白都は、一旦場を離れてみることにした。

 とは言え見逃しては元も子もないので、本を取り替えるだけの数秒のみだ。ここにいるのは偶然だと、知らしめる目的もある。

 戻って、改めて注意を注いだが、結局昼の予鈴が鳴っても人は現れなかった。

 もしや、図書室に向かう途中で既に回収されていたのだろうか。それか、目を離した隙にだろうか。

 一考しながら昼食のため屋上に向かう。すると、既に穂積と和月、日向が来ていた。
 何やら、一点を見詰めて会話している模様だ。

 白都には、輪の中に何があるか直ぐに分かった。群がっている箇所が換気扇の周りだったからだ。
 しかし、現金の代わりに何かが残されていたのか、未回収なのかは現時点では不明である。

「あっ……安斎さん……」 

 振り向いた日向の向こう、長封筒を手にする穂積が見えた。

「どうしたんですか?」

 白々しく駆け寄ると、穂積が封筒を見せてくれた。紛れも無く今朝置いていったものだ。

「今、来たらこれがここに置いてあってねぇ。中にお金が入っていたから職員室に届けようかって話をしていたんだ」
「そうだったんですか」
「誰かが落としたものを、除けて置いてくれたのかも……って考えもしたんだけど、金額的に微妙なんだよね……」
「結構たくさん入ってるもんねぇ」

 和月は、訝しげに穂積の手元を見詰める。穂積も、元々垂れ気味の眉を更に垂らし、不思議そうに見詰めている。日向だけがいつもの顔で――だが、じっと封筒に視線を向けていた。

「とりあえず届けてくるよ。持ち主の人が困っているかもしれないしねぇ」

 穂積は長封筒を軽く掲げ、一笑すると扉へと踏み出した。白都は進んでゆく物事に対し、絶句するしかなかった。

 命令は実行した。言い付け通りに遂行した。しかし、御面の手に渡ることは無かった。これは失敗に当たるのだろうか。
 いや、もし監視に気付いていたとしたら。気付いて取りに来なかったとしたら、次はどんな罰が下るのだろう。

 白都は恐怖に負け、その日裏道を使わなかった。
 反抗を積む度、カウントされている気がする。更には、それが重篤な罰に繋がるかもしれない。殺される可能性だって、なくはない。
 そんな恐怖が、白都を拒絶に導いた。

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