フレンドテロリスト

有箱

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「お早う白都」

 階段を降りる音を耳にし、見上げた視界に帝が納まる。

「おはよう帝」

 足音を聞いてからの出現により、冷静な対応を取ることは出来たが、心の中は昨夜の命令ばかりが巡っていた。
 自然と横並びになり、駅への道を歩き出す。青々とした空が目映く、見上げれば目が眩みそうだ。

「大丈夫か?」
「えっ? 何が?」

 思い当たる節がないことはないが、唐突過ぎて何に向けられているのか分からない。

「いや、顔色が悪いから食べてないんじゃないかと思ってな」
「あ、あぁ。そんなに分かりやすいかな」

 御面に関わる内容でなかったことに安堵する。
 実際、昨夜も今朝も、まともな食事をしていなかった。
 昼食は除くとしても、約十日間分の食事を今あるだけの食材で繋ぐには、必然的に食事量の制限が求められるのだ。

「……何かあったんだろう?」

 帝の確信的な問いかけに、白都は息を呑む。押さえ込んだはずの“暴露してしまいたい”との気持ちが溢れそうになる。

「特別な事は無いよ? 何で?」
「追い詰められるくらいの無駄使いをするなんて、白都ならないと思ったんだ」
「……そっか……」

 付き合いの長い帝だからこその理由に、白都は急に冷静さを取り戻した。
 気持ちは薄れ、脳内で演技の為の台詞が組まれる。

「でも本当に何でもないんだよ。ちょっと計画狂ったって言うか、計算ミスみたいな感じだから……本当自業自得って言うか……馬鹿みたいだよね」

 苦笑いと共に落とすと、帝は若干訝しさを残したままの顔で――だが、受け容れる様子を見せた。

「それでも困ったら言えよ」
「うん、ありがとう」

 自分をよく知る親友だからこそ、大切な人だからこそ、騙し続けなければならないと強く感じる。
 心から気遣ってくれる彼を、巻き込んでしまうなんて考えられなかった。

 帝と通学する時、裏道は使わない。帝の使用している表通りを使用するからだ。表通りは人が多く、視線の恐怖はあるが襲われる心配は無い。
 たったの三分の距離を面倒臭がらず、帝と同じように表通りを使い続けていたなら、御面との遭遇自体無かったのかもしれない。
 白都は可能性を思い、運命を呪った。

 しかし、通学路を熟知しているなんて余程のストーカーに違いない。家の場所や帰り道なんて一部の人間にしか話していないのだから。
 いや、道の話なんか、帝くらいとしかしない――。

 真横にて、真顔で駅のホームを見る帝が、一瞬おぞましく映る。
 だが、有り得ないと振り切り、御面のストーカー疑惑を認めようと懸命に努めた。
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