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“久しぶりに散歩に出ないか?”
昼頃、入ったメールは帝からのものだった。
本日も休校日であり、バイトも夜間にある。加えて、新たな命令も来ておらず、予定のない白都は、唯ぼうっとしていたところだった。
落ちてゆく思考を打ち切って届いたメールは、優しく白都の気持ちを揺らす。
しかし同時に、帝が御面だったらとの疑惑も湧いた。
“今日は私も外に出たい気分なんだ”
相次いで届いたメールが、気遣いや優しさから来る誘いだと信じたくて、白都は散歩の承諾を決めた。
「急に悪いな、予定は大丈夫だったか?」
既に三階の踊り場に来ていた帝は、気温に合わせた防寒着を着ている。白都は一つ目の命令を急に思い出した。
何も出来ないまま歳月が過ぎていることが、急に焦りを促進させる。
だが、一考するだけで直ぐしまいこんだ。
「うん、大丈夫。家でぼうっとしてた所だったよ、誘ってくれて有り難う」
「良かった。散歩、好きだっただろう」
「うん。寒くなって行かなくなってたよ」
一歩一歩、歩き進めていつもの景色を横切ってゆく。普段使わない場所まで出て、湖や道、建物なんかを眺める。
春や秋、また夏や冬でも気候の良い日など、散歩に出掛ける習慣が白都にはあった。最近は余裕が無く、気候の良い日も専ら自宅に篭りっぱなしだったが。
散歩に出て、光や影の角度等を見るのが特に好きだった。その気持ちを久々に思い出し、気分が高揚する。
「楽しいなぁ。ちょっと寒いけど」
「そうだな、俺は白都が楽しそうなら楽しいよ」
帝は、飛び立つ鳥を携帯でビデオ撮影しながら、仄かな笑みを湛えた。まるで状態を見透かした上、散歩に連れ出したかのように思えてしまう。
「……何それ変なの」
白都は気付いていない振りを見せ付ける為にも、無邪気に顔を綻ばせてみせた。
「白都、最近悩んでいなかったか?」
だが、帝の控え目だが真剣な問い掛けが返り、白都は表情を一瞬固めてしまった。
――帝は絶対に違う。帝は御面じゃない。こんなにも優しい帝が、御面になれる訳がないんだ。
心から確信した白都は、帝を巻き込んでしまわないようにと、目を合わせて答えを突きつけた。
「そんなこと無いよ」
「……そうか」
更に歩き進めていると、遠くの方に穂積を発見した。しかし、彼はこちらに全く気がついていない様子だ。
花屋と病院に挟まれた道の端で、植樹に背を預けてじっとしている。何だか表情が堅く見えた。
「穂積さんだ、何してるんだろう」
「珍しいな、誰か待っているんだろうか」
帝がそう思うのも無理はない。穂積はその場で一歩として動かず、ただ行き交う人々を見詰めていたからだ。
「穂積さー……」
白都が声を掛けようとした瞬間、何かに反応したらしき穂積は、ぱっと喜色を浮かべて病院を見た。
白都や帝には、角度上穂積の見ているものは分からなかったが、その先に誰かがいることだけは分かった。
結局、穂積は二人に気がつかないまま、方向転換し病院へと向かっていった。
昼頃、入ったメールは帝からのものだった。
本日も休校日であり、バイトも夜間にある。加えて、新たな命令も来ておらず、予定のない白都は、唯ぼうっとしていたところだった。
落ちてゆく思考を打ち切って届いたメールは、優しく白都の気持ちを揺らす。
しかし同時に、帝が御面だったらとの疑惑も湧いた。
“今日は私も外に出たい気分なんだ”
相次いで届いたメールが、気遣いや優しさから来る誘いだと信じたくて、白都は散歩の承諾を決めた。
「急に悪いな、予定は大丈夫だったか?」
既に三階の踊り場に来ていた帝は、気温に合わせた防寒着を着ている。白都は一つ目の命令を急に思い出した。
何も出来ないまま歳月が過ぎていることが、急に焦りを促進させる。
だが、一考するだけで直ぐしまいこんだ。
「うん、大丈夫。家でぼうっとしてた所だったよ、誘ってくれて有り難う」
「良かった。散歩、好きだっただろう」
「うん。寒くなって行かなくなってたよ」
一歩一歩、歩き進めていつもの景色を横切ってゆく。普段使わない場所まで出て、湖や道、建物なんかを眺める。
春や秋、また夏や冬でも気候の良い日など、散歩に出掛ける習慣が白都にはあった。最近は余裕が無く、気候の良い日も専ら自宅に篭りっぱなしだったが。
散歩に出て、光や影の角度等を見るのが特に好きだった。その気持ちを久々に思い出し、気分が高揚する。
「楽しいなぁ。ちょっと寒いけど」
「そうだな、俺は白都が楽しそうなら楽しいよ」
帝は、飛び立つ鳥を携帯でビデオ撮影しながら、仄かな笑みを湛えた。まるで状態を見透かした上、散歩に連れ出したかのように思えてしまう。
「……何それ変なの」
白都は気付いていない振りを見せ付ける為にも、無邪気に顔を綻ばせてみせた。
「白都、最近悩んでいなかったか?」
だが、帝の控え目だが真剣な問い掛けが返り、白都は表情を一瞬固めてしまった。
――帝は絶対に違う。帝は御面じゃない。こんなにも優しい帝が、御面になれる訳がないんだ。
心から確信した白都は、帝を巻き込んでしまわないようにと、目を合わせて答えを突きつけた。
「そんなこと無いよ」
「……そうか」
更に歩き進めていると、遠くの方に穂積を発見した。しかし、彼はこちらに全く気がついていない様子だ。
花屋と病院に挟まれた道の端で、植樹に背を預けてじっとしている。何だか表情が堅く見えた。
「穂積さんだ、何してるんだろう」
「珍しいな、誰か待っているんだろうか」
帝がそう思うのも無理はない。穂積はその場で一歩として動かず、ただ行き交う人々を見詰めていたからだ。
「穂積さー……」
白都が声を掛けようとした瞬間、何かに反応したらしき穂積は、ぱっと喜色を浮かべて病院を見た。
白都や帝には、角度上穂積の見ているものは分からなかったが、その先に誰かがいることだけは分かった。
結局、穂積は二人に気がつかないまま、方向転換し病院へと向かっていった。
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