フレンドテロリスト

有箱

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 合同授業の為、指定教室である体育館に入ったところ、既に侑也が床に腰を下ろしていた。

「おはよう侑也、久しぶり」

 扉の配置の関係上、背後から声をかける形になったからか、侑也は驚きを顔一杯に湛えていた。

「あっ、おっ、お早うございます! そうっすね、久しぶりっす!」
「驚かせた? ごめんね」
「いや、後ろからだったもんで!」

 侑也は無邪気に目を吊り上げる。右横に置いていた鞄を爪先に移し、どちらにでも着席出来るようにか左右を空にしてくれた。

「あの、最近大丈夫っすか?」

 足元の鞄を見詰めたまま、少し気まずそうに声を作った侑也は、顔面に不安を乗せている。

「……えっと、何がかな……?」

 普段から溌剌とした侑也の、暗い顔はかなり珍しい。そこまで煩わせていたことに、自分が演技しきれていなかったことに気付き、素直に気落ちした。

「お金とか……それと体調とか……あっ、気のせいなら良いんす! 皆心配してたんで!」

 爪先を見詰めていた侑也が、腰を落とした白都に顔面を向ける。白都は困惑する侑也に対し、受け容れた振りをした。

「そっか、そこまで可笑しいかな……僕……。全然大丈夫なのに情けないなぁ……。皆にも大丈夫って言わなきゃだね……! 心配してくれて有り難う」
「……えっ、あっ、なら良かったっす!」

 欺いているようで心苦しかったが、変に誤魔化しても疑われるだけだと思い、振りを突き通す。

「……でもあの、大変なら言って下さいね」

 決まり悪そうに残した台詞が、白都の中で軽く引っかかった。だが、担当教師の出現により、解決は先送りとされた。

 侑也の演技力は天性の物だと思う。それほどに彼は演技力が高い。遊び程度の演技でも、全力で挑むからだろうか。
 スイッチが入った侑也には、演じられないものがないのではと思うほどだ。

 今までならそれを素直に称賛できていたが、今日はどうしても感心出来なかった。
 理由は明白だ。御面を演じる人間にとって、演技力は必須能力だと気付いてしまったからだ。

 いや、順番としては逆だが、侑也なら御面になりきれると思ってしまった。
 彼が、演じる為のキャラクターとして、御面という役を作っているならの話になるが。

 ふと、侑也と目があった時、侑也の方から視線を逸らしてしまった――ように見えた。
 授業中の、色々な箇所に注意を置かなければならない状態にて、視線のふらつきは普通にあることだろう。しかし、妙に気になってしまい、その後落ち着きを取り戻せなかった。

***

 昼食時、六人全員が屋上に揃った。
 たった数日振りの再会だというのに、白都は距離感が大幅に空いてしまったような錯覚に襲われていた。

 疑いの眼差しで見てしまう自分を嫌悪しつつ、未だ言葉一つ一つにさえ注意深く耳を傾けてしまう。
 この中に、自分を苦局へ陥れている人物がいる。

「白くん、どっちがいい?」

 目の前、穂積が笑顔で差し出したのは二種類のパック飲料だった。味はカフェオレとミルクティーだ。どちらも校内の自販機で見たことがある。

「え? ……じゃあこっちで……ありがとうございます……?」
「いいえ~」

 白都は、反射的にミルクティーを手に取り、受け取ってから疑いを覚えた。これは多分、数日前の経験に基づいた反応だ。
 飲料に細工の気配は見えないが、もしかしたら分からないような細工がされているのでは無いか、と勘繰ってしまう。
 ――こんな明白な方法で嫌がらせする訳がないのに。

 穂積はカフェオレにストローを突き刺すと、嬉しそうに飲み始めた。もしかすると、選んでいたかもしれない方の飲料だ。
 白都は穂積の行動により落ち着きを取り戻し、パックにストローを差した。
 横にいた和月が喜々とした穂積を見詰め、安堵したように小さく微笑んだのが見えた。
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