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電車に揺られながら、白都は横の二人に隙を付かれないよう、懸命に表情を作った。
沈痛な面持ちを見せないよう、わざと前を向き、夕闇に落ちる町を眺め続ける。努力の甲斐あってか、二人ともこちらに気を留めていない様子だ。
そうこうしている内に、病院に辿り着いた。いつかに穂積が来ていた病院だ。
穂積は慣れた様子でナースに話しかけ、和気藹々と会話しだす。
そしてあっさりと部屋番号を突き止めると、先頭に立ち案内を買って出た。
先を行く穂積の後ろで、白都は気に掛かった件を小声で和月に尋ねる。
「……あの、穂積さんって病院に知り合いの方でも居るんですかね?」
「えっ、それ俺に聞くの?」
「あっ、いや、直接聞かれたら嫌かなぁと思いまして」
実際は、御面として疑った時、こじつけた動機に由来する。病院に知人がいるなら、金が必要なのも頷けると思ったからだ。
疑いは晴れたのに、まだ信じられないなんて、と半ば無意識の行動に嫌気が差した。
「あぁ、そっかそういう人もいるか……。ごめん、俺が直接穂積に聞いてたから……」
和月は思い出す仕草を取り、白都にあわせて小声で答えてくれた。
「穂積は妹が居てね、病気がちだからよく連れて来るんだって」
「そうでしたか……ありがとうございます」
「あっ、着いたよー」
立ち止まった穂積は、部屋内を見詰めている。いつの間にか距離が出来ていた白都と和月は、駆け寄って距離を詰めた。
部屋前の札には“設楽侑也”の名前がある。白都は急に緊張感を覚え、人知れず唾を飲んだ。
共同部屋であり、他の患者がいるのにも拘らず、穂積は一直線に侑也のいるらしき方へと歩いてゆく。
「侑くん、具合どうー?」
隔てである白いカーテンを開くと、侑也がベッドに伏せていた。
頭に軽く、足に厚く包帯が巻かれ、腕や僅かに見える肩にもガーゼが施されている。一目で損傷の度合いが見て取れた。
「……あっ、えっと」
侑也は三人を見るなり、気まずそうに目を逸らした。白都はそれが、自分に対してされた態度だと感じてしまい、動揺してしまう。
侑也の態度で、隠しごとが存在すると知られてしまったら。なんて不安が過ぎった。
「まだ体痛い?」
「……えっと、まぁ……でも昨日よりは……」
だが、侑也なりに努力しているのか、ぎこちないながらも平然を装おうとする様子が見えた。
「そっか、良かったー! 明日は何か持ってくるね!」
「いや、そこまでは大丈夫っすよ……!」
侑也の作られた笑顔は、多分自分の為のものだ。穂積と和月に怪しまれないよう、彼なりに違和感を塗り潰そうとしているのだ。
白都は心の中で『巻き込んでごめん』と呟いた。
***
表情の固い侑也を配慮してか、和月が早い帰宅を促し、見舞いはお開きになった。
穂積は寂しげだったが、和月の意向を組み、否定せずに従っていた。
落ち着けずに居た白都は内心安堵していたが、顔には出さないよう気をつけた。
一人になった帰り道、歩きながら白都は思案していた。
どうにかして、侑也を危地から救い出さなければならない。しかし方法が分からない。
御面に何が響くのか、いや、そもそも響く言葉などあるのか――。
『ちょっとこっちに来い』
声にはっとなり後ろを向くと、御面の姿があった。裏道までまだ距離はあるが、いつの間にか近付かれていたらしい。表通りで現れるなんて、思いもしなかった。
深く被られたフードに面の角は隠され、擦れ違う人々の視線を透かす。
御面の強い力に引かれ、白都は裏道へと連行された。
沈痛な面持ちを見せないよう、わざと前を向き、夕闇に落ちる町を眺め続ける。努力の甲斐あってか、二人ともこちらに気を留めていない様子だ。
そうこうしている内に、病院に辿り着いた。いつかに穂積が来ていた病院だ。
穂積は慣れた様子でナースに話しかけ、和気藹々と会話しだす。
そしてあっさりと部屋番号を突き止めると、先頭に立ち案内を買って出た。
先を行く穂積の後ろで、白都は気に掛かった件を小声で和月に尋ねる。
「……あの、穂積さんって病院に知り合いの方でも居るんですかね?」
「えっ、それ俺に聞くの?」
「あっ、いや、直接聞かれたら嫌かなぁと思いまして」
実際は、御面として疑った時、こじつけた動機に由来する。病院に知人がいるなら、金が必要なのも頷けると思ったからだ。
疑いは晴れたのに、まだ信じられないなんて、と半ば無意識の行動に嫌気が差した。
「あぁ、そっかそういう人もいるか……。ごめん、俺が直接穂積に聞いてたから……」
和月は思い出す仕草を取り、白都にあわせて小声で答えてくれた。
「穂積は妹が居てね、病気がちだからよく連れて来るんだって」
「そうでしたか……ありがとうございます」
「あっ、着いたよー」
立ち止まった穂積は、部屋内を見詰めている。いつの間にか距離が出来ていた白都と和月は、駆け寄って距離を詰めた。
部屋前の札には“設楽侑也”の名前がある。白都は急に緊張感を覚え、人知れず唾を飲んだ。
共同部屋であり、他の患者がいるのにも拘らず、穂積は一直線に侑也のいるらしき方へと歩いてゆく。
「侑くん、具合どうー?」
隔てである白いカーテンを開くと、侑也がベッドに伏せていた。
頭に軽く、足に厚く包帯が巻かれ、腕や僅かに見える肩にもガーゼが施されている。一目で損傷の度合いが見て取れた。
「……あっ、えっと」
侑也は三人を見るなり、気まずそうに目を逸らした。白都はそれが、自分に対してされた態度だと感じてしまい、動揺してしまう。
侑也の態度で、隠しごとが存在すると知られてしまったら。なんて不安が過ぎった。
「まだ体痛い?」
「……えっと、まぁ……でも昨日よりは……」
だが、侑也なりに努力しているのか、ぎこちないながらも平然を装おうとする様子が見えた。
「そっか、良かったー! 明日は何か持ってくるね!」
「いや、そこまでは大丈夫っすよ……!」
侑也の作られた笑顔は、多分自分の為のものだ。穂積と和月に怪しまれないよう、彼なりに違和感を塗り潰そうとしているのだ。
白都は心の中で『巻き込んでごめん』と呟いた。
***
表情の固い侑也を配慮してか、和月が早い帰宅を促し、見舞いはお開きになった。
穂積は寂しげだったが、和月の意向を組み、否定せずに従っていた。
落ち着けずに居た白都は内心安堵していたが、顔には出さないよう気をつけた。
一人になった帰り道、歩きながら白都は思案していた。
どうにかして、侑也を危地から救い出さなければならない。しかし方法が分からない。
御面に何が響くのか、いや、そもそも響く言葉などあるのか――。
『ちょっとこっちに来い』
声にはっとなり後ろを向くと、御面の姿があった。裏道までまだ距離はあるが、いつの間にか近付かれていたらしい。表通りで現れるなんて、思いもしなかった。
深く被られたフードに面の角は隠され、擦れ違う人々の視線を透かす。
御面の強い力に引かれ、白都は裏道へと連行された。
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