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恐怖が心身を支配し、異常へ導く。声は出ず息を継ぐタイミングも見失ってしまう。
やはり前回の件がトラウマになっているらしく、震えた足は縺れ、途中で転んでしまった。
『……まぁいい』
御面の声には明らかな怒りが篭っていた。読み辛いはずの感情に圧され、立ち上がれない。
『何で来たか分かってるか?』
「…………それは……」
御面を見られず、目前の暗い畦道を見詰めた。
『今回は許してやろう』
「……………………えっ?」
想定外の台詞に顔を上げる。だが当然、御面で顔は見えなかった。ゆらゆらと揺れるマントが、異様な不気味さを醸す。
『だが覚えておけ、次誰かに知られることや見られることがあれば、そいつの命もお前の命もないってことを』
言い放たれ、僅かな安堵を抱いたのも束の間、容赦のない打撃が腹部に放たれた。
***
数十分後、白都は地に伏せていた。刃物による攻撃は無かったが、激しい暴力が白都を連打し、容赦なく体力を奪っていた。
しかも、左足に激痛が走っている。感覚だけで、酷く損傷しているのだと分かった。
傷の言い訳や怪我の手当てよりも先に、今後の行動に付いての決断に迫られる。
次、誰かに知られたり、見られたなら。次こそ死しかない。
今の所、他の誰にも気付かれてはいないようだが。
――気付かれては。
帝に打ち明けたとの事実が、御面に知られたら。思い描き、悪寒が走る。そうなれば、帝も自分も命は無いだろう。
それは絶対に駄目だ。あってはならない。
白都は、無気力の中から何とか力を見出し、立ち上がった。
***
翌日、大学を休み、白都は病院に来ていた。
体は見せず、派手に転んだと説明し、足のみ処置を頼むことにしたのだ。
多少の疑いは向けられる覚悟で堂々としよう――と振る舞いの仕方まで計画した。
その甲斐あってか、医師は詮索も無く処置に当たってくれた。
因みに、骨折寸前状態だったそうだ。
その帰り、侑也の部屋に行った。侑也は相変わらず不器用な態度を見せ続ける。
大分痛手を受けたのか、まだベッドに伏せたままだ。
「……ごめん、無理させてるね」
「…………いや……あの……」
目を逸らす侑也に向かい、声が震えるのを抑えて強引な笑顔で問いかける。
「……コンビニの、見てた?」
侑也は、直接的な真実の暴露を想定していなかったのか、目を見張って白都を見た。
「…………はい……」
そしてから強く眉を寄せる。大きく動いた表情を目に、かなり感情を押さえていたのだと悟った。
「…………理由はまだ言えない。けど誰にも言わないでほしいんだ……。お願い……お願いだ……」
今日ここに来た目的は一つ、謝罪と口止めだ。
侑也が誰かに告げ口すれば、折角咎めなしで終わったものが無駄になってしまう。
巻き込んでしまい、人生まで奪ってしまったら、それこそ罪悪感で立ち直れなくなる。
「……お願いします……」
白都は泣きかけの顔を見られないよう、深々と頭を下げた。保障が無くとも言葉が欲しくて、瞳を瞑ったまま答えを待ち続ける。
***
しばらくすると、侑也の細い声が漏れた。
「……分かり……ました……」
角度を上げると、歯を食いしばって天井を見る侑也が見えた。瞳が潤み、苦悶がよく伝わってくる。
「…………ごめんね侑也……」
「…………いいえ……」
普段の侑也とは真逆の顔を前に、白都は孤独に似た気持ちを感じた。
これでもう、侑也とは元の気兼ねない先輩後輩に――友人には戻れないだろう。今まで通りの付き合いを心がけても、もう一生、近しい存在には戻れないのだ。
大事な友人を、一人失ってしまった。しかも悪い仕方で。酷い印象を残して。
白都にとって友人の喪失は相当なダメージだった。だが、侑也の為なら仕方がないと、泣き出した心を押さえつけた。
やはり前回の件がトラウマになっているらしく、震えた足は縺れ、途中で転んでしまった。
『……まぁいい』
御面の声には明らかな怒りが篭っていた。読み辛いはずの感情に圧され、立ち上がれない。
『何で来たか分かってるか?』
「…………それは……」
御面を見られず、目前の暗い畦道を見詰めた。
『今回は許してやろう』
「……………………えっ?」
想定外の台詞に顔を上げる。だが当然、御面で顔は見えなかった。ゆらゆらと揺れるマントが、異様な不気味さを醸す。
『だが覚えておけ、次誰かに知られることや見られることがあれば、そいつの命もお前の命もないってことを』
言い放たれ、僅かな安堵を抱いたのも束の間、容赦のない打撃が腹部に放たれた。
***
数十分後、白都は地に伏せていた。刃物による攻撃は無かったが、激しい暴力が白都を連打し、容赦なく体力を奪っていた。
しかも、左足に激痛が走っている。感覚だけで、酷く損傷しているのだと分かった。
傷の言い訳や怪我の手当てよりも先に、今後の行動に付いての決断に迫られる。
次、誰かに知られたり、見られたなら。次こそ死しかない。
今の所、他の誰にも気付かれてはいないようだが。
――気付かれては。
帝に打ち明けたとの事実が、御面に知られたら。思い描き、悪寒が走る。そうなれば、帝も自分も命は無いだろう。
それは絶対に駄目だ。あってはならない。
白都は、無気力の中から何とか力を見出し、立ち上がった。
***
翌日、大学を休み、白都は病院に来ていた。
体は見せず、派手に転んだと説明し、足のみ処置を頼むことにしたのだ。
多少の疑いは向けられる覚悟で堂々としよう――と振る舞いの仕方まで計画した。
その甲斐あってか、医師は詮索も無く処置に当たってくれた。
因みに、骨折寸前状態だったそうだ。
その帰り、侑也の部屋に行った。侑也は相変わらず不器用な態度を見せ続ける。
大分痛手を受けたのか、まだベッドに伏せたままだ。
「……ごめん、無理させてるね」
「…………いや……あの……」
目を逸らす侑也に向かい、声が震えるのを抑えて強引な笑顔で問いかける。
「……コンビニの、見てた?」
侑也は、直接的な真実の暴露を想定していなかったのか、目を見張って白都を見た。
「…………はい……」
そしてから強く眉を寄せる。大きく動いた表情を目に、かなり感情を押さえていたのだと悟った。
「…………理由はまだ言えない。けど誰にも言わないでほしいんだ……。お願い……お願いだ……」
今日ここに来た目的は一つ、謝罪と口止めだ。
侑也が誰かに告げ口すれば、折角咎めなしで終わったものが無駄になってしまう。
巻き込んでしまい、人生まで奪ってしまったら、それこそ罪悪感で立ち直れなくなる。
「……お願いします……」
白都は泣きかけの顔を見られないよう、深々と頭を下げた。保障が無くとも言葉が欲しくて、瞳を瞑ったまま答えを待ち続ける。
***
しばらくすると、侑也の細い声が漏れた。
「……分かり……ました……」
角度を上げると、歯を食いしばって天井を見る侑也が見えた。瞳が潤み、苦悶がよく伝わってくる。
「…………ごめんね侑也……」
「…………いいえ……」
普段の侑也とは真逆の顔を前に、白都は孤独に似た気持ちを感じた。
これでもう、侑也とは元の気兼ねない先輩後輩に――友人には戻れないだろう。今まで通りの付き合いを心がけても、もう一生、近しい存在には戻れないのだ。
大事な友人を、一人失ってしまった。しかも悪い仕方で。酷い印象を残して。
白都にとって友人の喪失は相当なダメージだった。だが、侑也の為なら仕方がないと、泣き出した心を押さえつけた。
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