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電話越し、声が消えた。当然の反応にも冷や汗が伝う。それでも伝える為、再度繰り返す。
「…………命令が来てたんだ、帝を殺すようにって」
帝は唖然としているのか、一向に返事がない。
「……でも期限はもう終わってて……。もしかすると帝も危ないかもしれない。だから気をつけてほしいんだ……誰かと二人きりにならないとか、変な行動はしないとか……とにかく周りに気を使って欲しいんだ……」
白都は思いを残らず伝達する為、一方的に伝え続けた。
この際、全員に伝えても良いかも知れない。
白都はそんな無茶な作戦を思いついていた。御面を含む五人に全貌を打ち明け、自己防衛を促す。御面は自分を殺しに来るだろうが、家に引きこもり鍵を掛ければ攻撃されることはないはずだ。
≪分かった≫
ようやく聞こえた反応は、意外にも静かだった。語気には、驚きも動揺も何一つ隠されていないように思える。
ただただ静かで、温和な語調だった。
「……う、うん。お願い」
≪……白都、今日は確かバイトだったな?≫
「……そうだよ?」
囁かれた突拍子な問いの根底が読めず、逆に動揺してしまう。吐息と声が混じり、聞こえてくる。
≪……だったら、バイトが終わってから家に来てくれ≫
「え?」
≪…………犯人が分かった。それを話したいんだ。じゃあこれから授業だから……≫
そこでようやく帝が大学に居たのだと気付いた。声を潜めていたのも、返事が少なかったのも、周囲に人が居たからだろう。
返事をする前に通話が切れた。無音になる脳内で、帝の言葉が反芻する。
帝は確信している。曖昧ではなく、犯人を突き止めている。どうやら、知らない内に正体を暴いていたらしい。
御面の正体が、大学院にいる誰かだとは自分でも確信している。しかしまだ、五人の中にいるとは信じられない。
それぞれ皆アリバイがあって、どう頑張っても御面には成り得ない人達ばかりなのだ。
誰の名が帝の口から出てくるのか、想像しては拒絶を覚え、何度も変えてはイメージする。
白都は携帯を下ろし、何気なく画面を目にした。そこには、会話中に受信していたらしき御面からのメールが残されていた。
“バイト終了後、裏道に来い。絶対に来い。来なければ後悔する事になる。”
直接的に下された命令が胸を抉り、頭を真っ白にする。
裏道に赴いた先、何があるか大方察しは付いた。恐らく、殺されるのだろう。罰として殺されるのだ。
だが、逃げたら逃げたで、良くない何かが待っているのは明らかだ。
白都は内臓を掴まれる感覚に陥り、その場で蹲った。
***
授業への出席は命令に無かったため、白都は今日も大学を休んだ。単位が気にはなるが、どうしても心身が付いていかないのだ。
だが、それでもバイトへは無理矢理出向いた。
栄養不足と寝不足を自覚しており、ふらふらとしながらも仕事をこなす。足の怪我があり、あちこち走り回らされないのが唯一の救いだろう。
本日、和月は休みで、若干窺う様子を見せた同僚はいたものの、踏み込んで来る人間は居なかった。
八時十分、バイトが終了した。ついにこの時間が来てしまったのだ。答えを導けないまま、時間だけが追い詰めてくる。
今朝方受信した、御面のメールを想起し慮る。
しかし、それももう何百回と繰り返していて、これまでと同じく結論にまで至ることは無かった。
白都は一人、裏道と表通りの別れ道で、強く焦りながら佇む。
“後悔する事になる。”との意味深な文章が引っかかり、決断を鈍らせる。
帝に危険が及ぶかもしれない。今用意されている方法より、惨い仕方で報復されるかもしれない。
ネガティブに捩れてゆく想像が恐ろしく、白都は更に動けなくなった。
時間だけが、容赦なく過ぎてゆく――。
『バイトが終わったら裏道に来いって言っただろ』
一瞬呼吸が止まり、冷や汗が流れ出した。既に手首が掴まれており、強い力が加えられている。
白都が振り向く前に手を引かれ、強制的に裏道へ連行された。
「…………命令が来てたんだ、帝を殺すようにって」
帝は唖然としているのか、一向に返事がない。
「……でも期限はもう終わってて……。もしかすると帝も危ないかもしれない。だから気をつけてほしいんだ……誰かと二人きりにならないとか、変な行動はしないとか……とにかく周りに気を使って欲しいんだ……」
白都は思いを残らず伝達する為、一方的に伝え続けた。
この際、全員に伝えても良いかも知れない。
白都はそんな無茶な作戦を思いついていた。御面を含む五人に全貌を打ち明け、自己防衛を促す。御面は自分を殺しに来るだろうが、家に引きこもり鍵を掛ければ攻撃されることはないはずだ。
≪分かった≫
ようやく聞こえた反応は、意外にも静かだった。語気には、驚きも動揺も何一つ隠されていないように思える。
ただただ静かで、温和な語調だった。
「……う、うん。お願い」
≪……白都、今日は確かバイトだったな?≫
「……そうだよ?」
囁かれた突拍子な問いの根底が読めず、逆に動揺してしまう。吐息と声が混じり、聞こえてくる。
≪……だったら、バイトが終わってから家に来てくれ≫
「え?」
≪…………犯人が分かった。それを話したいんだ。じゃあこれから授業だから……≫
そこでようやく帝が大学に居たのだと気付いた。声を潜めていたのも、返事が少なかったのも、周囲に人が居たからだろう。
返事をする前に通話が切れた。無音になる脳内で、帝の言葉が反芻する。
帝は確信している。曖昧ではなく、犯人を突き止めている。どうやら、知らない内に正体を暴いていたらしい。
御面の正体が、大学院にいる誰かだとは自分でも確信している。しかしまだ、五人の中にいるとは信じられない。
それぞれ皆アリバイがあって、どう頑張っても御面には成り得ない人達ばかりなのだ。
誰の名が帝の口から出てくるのか、想像しては拒絶を覚え、何度も変えてはイメージする。
白都は携帯を下ろし、何気なく画面を目にした。そこには、会話中に受信していたらしき御面からのメールが残されていた。
“バイト終了後、裏道に来い。絶対に来い。来なければ後悔する事になる。”
直接的に下された命令が胸を抉り、頭を真っ白にする。
裏道に赴いた先、何があるか大方察しは付いた。恐らく、殺されるのだろう。罰として殺されるのだ。
だが、逃げたら逃げたで、良くない何かが待っているのは明らかだ。
白都は内臓を掴まれる感覚に陥り、その場で蹲った。
***
授業への出席は命令に無かったため、白都は今日も大学を休んだ。単位が気にはなるが、どうしても心身が付いていかないのだ。
だが、それでもバイトへは無理矢理出向いた。
栄養不足と寝不足を自覚しており、ふらふらとしながらも仕事をこなす。足の怪我があり、あちこち走り回らされないのが唯一の救いだろう。
本日、和月は休みで、若干窺う様子を見せた同僚はいたものの、踏み込んで来る人間は居なかった。
八時十分、バイトが終了した。ついにこの時間が来てしまったのだ。答えを導けないまま、時間だけが追い詰めてくる。
今朝方受信した、御面のメールを想起し慮る。
しかし、それももう何百回と繰り返していて、これまでと同じく結論にまで至ることは無かった。
白都は一人、裏道と表通りの別れ道で、強く焦りながら佇む。
“後悔する事になる。”との意味深な文章が引っかかり、決断を鈍らせる。
帝に危険が及ぶかもしれない。今用意されている方法より、惨い仕方で報復されるかもしれない。
ネガティブに捩れてゆく想像が恐ろしく、白都は更に動けなくなった。
時間だけが、容赦なく過ぎてゆく――。
『バイトが終わったら裏道に来いって言っただろ』
一瞬呼吸が止まり、冷や汗が流れ出した。既に手首が掴まれており、強い力が加えられている。
白都が振り向く前に手を引かれ、強制的に裏道へ連行された。
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