フレンドテロリスト

有箱

文字の大きさ
68 / 83

67

しおりを挟む
 朝一、校門の施錠が解かれる時間に合わせ、白都は学校に来ていた。
 誰かが先に来てボトルを持って行ってしまわないように、と考えた結果である。

 屋上の重い扉を開くと、直ぐ真横の換気扇にペットボトルを見つけた。前回より更に小さなボトルだ。
 白都は前回の経験を踏まえ、毒の混入を疑う。
 その為、自宅で飲み干すことにした。

***

「ねぇ、明日も来る?」

 穂積の切り出した質問の意味――込められたものが白都には分からず、一瞬絶句してしまった。

「……穂積、白都くん困ってるよ」
「あっ、ごめん、えっとあの、白都くんは学校辞めないよねって……」
「侑也も日向も来ないから、白都くんまで来なくなるんじゃないかって心配してるんだよ」

 帝くんのこともあったし。と聞こえてきそうな雰囲気があったが、和月は口にしなかった。
 ようやく穂積の気持ちを理解した白都は、明日の予定を思い巡らす。
 だが、一番に浮かんだのは命令の件だった。

「……えっと、一応来るつもりですよ……?」

 前回同様、具合を悪くしてしまったら――もしも混ぜられているのが劇薬で、来られなくなってしまったら。
 白都は、改めて背筋が凍る感覚を覚えた。メールが届いた時点で想定したが、いざ手にしていると怖くなる。

「……無理しなくて良いからね」

 和月の気遣いに、はっとなり顔を上げた。長期間問題を抱え続けている所為で、段々演技力が落ちてきているようだ。

「あっ、そうだよ! 辛かったら休んでも大丈夫だから……」

 穂積は汗々としながら、両手を顔の前で降った。
 変わらない二人の態度が、内側の辛さを押し殺して作られているように見えて苦しくなる。

「……ごめんなさい……」

 彼らに無理をさせないよう、自分も繕うべきなのに。
 頭で分かっていても行動できず、白都は涙目で俯いた。

***

 恐怖感と罪の意識、迫る選択に押し潰され、心が悲鳴を上げている。
 もうずっと、この調子だ。まだ残されている少ない気力だけで、上辺を取り繕っている状態でしかない。
 ゆえに、一人の空間では表情が無くなってしまう。
 扉が閉まる音と、鍵が閉まる単調な音を耳に残し、白都は自室へと歩く。

 鞄から小型ペットボトルを出し、机の上に置いて眺めた。色は透明で、傍から見れば唯の水だ。
 けれど、もしかすると死ぬかもしれない水――。
 白都は揺れだす決意が傾かない内にと、ボトルの蓋を開け、携帯を動画モードに切り替えた。
 命令を実行しなければ、また友人が消えてしまう。
 知らず知らず帝の遺骸に触れていた瞬間を思い出し、背筋が冷たくなった。

 こんな苦痛を味わうくらいなら、従う方がいい。もうどうなったって良いや。
 死んだって、怖いけれど仕方がないんだ。
 白都は、動画の撮影を開始し、ボトルを大きく傾けて内容物を一気に流し込んだ。

 ――冷たさが胃へと流れた瞬間、白都は嘔吐していた。それでも尚残る不快感と、息苦しさに蹲る。
 即効性の毒薬だと理解し、強くなる悪寒に死を覚悟した。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...