フレンドテロリスト

有箱

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 携帯を充電器に差す際、通知を確認したが連絡は無かった。
 電灯の下に立ち、下ろしていた袖を上げる。そこには無数の切創が刻まれていた。中には、今だ乾燥していない生傷もある。
 裾を捲くり、腹部や胸部を見てみても、鏡を使用し鎖骨付近を見てみても、どこもかもに残されている。

 まるで、体中に脅迫メッセージが刻まれているようで、白都は慄然した。直ぐに、血が付いたままの服で覆い隠す。

 穂積か和月の二人なら、金が必要な状況にあったり、学校に武器を持ち歩いていたりと、穂積の方が怪しい要素はある。
 しかし逆を突いて、和月が御面かもしれない。

 出現時バイトをしていたとのアリバイは存在するが、今の頭では思い付きもしないトリックがあるのかもしれない。
 それに、体調不良状態に会った穂積に、あんなに豪快な動作が出来るはずはない。

 けれど、どうしてもバイトが引っかかる。実際自分の目でも確認しているのだ。否定は出来ない。
 だったら穂積だろうか。いや、でも――。
 辿り着かない結論を探し、白都は同じ内容をループさせ続けた。

***

 翌日、白都は大学に行かなかった――行けなかった。ベッドから起き上がることさえ出来ず、枕に頭を乗せたまま天井を眺め続けてしまう。
 先行きは雲に覆われ濁っている。しかし、その反面、起こるであろう事柄や結末など、部分的に予想が付いてしまうものもある。

 きっと、もう一度命令がくる。多分、自殺命令だ。
 それを実行できず、罰が実施される。そうなれば結局死んで終わりだ。

 もし家に篭ろうものなら、残された友人が殺され、罪に苛まれる事態となるだろう。
 そして家から一歩も出られなくなって、餓死しして終わりかもしれない。
 最終的に、見える結末は一つだけだ。

 ここに帝が居たならば、彼はどんなアドバイスをくれるだろう。どんな英断を下すだろう。
 そんなことを思っても、彼はもう居ないのに。

 現実に触れる度、心が痛くなる。
 万が一事態が好転しようとも、幸せだった日々は一生戻らないのだ。多分、他の誰と知り合っても、あの頃と同じ気持ちは取り戻せないだろう。

 半ば無意識に歯軋りしてしまう。御面を殴ってやりたい。皆を返せと叫びたい。罵声を浴びせてやりたい。
 けれど、空想の中で幾度と繰り返した反逆も、実際行動には移せないのだろう。
 けれど、そうだ。理由くらい訊ねる権利はあるよね――。

 御面への憎しみで脳内を埋めていると、耳に着信音が届いた。短く切れる音がメールを知らせる。
 肩が竦み、現実感を味わい知った。曖昧に想像した未来が今、始まる。
 白都は携帯を手にすると、直ぐにメールを開いた。

 見えたのは未登録の番号だが、自ら消去したため御面からだとはっきり分かる。最初に味わった、暗闇へと落とされる感覚を思い出した。
 まだ、本当の地獄を知らなかったあの日を。

 綴られていたのは命令だった。二回ほど目にした単語が、奈落の底へ白都を突きおとして行く。

“今回の命令は、九十九穂積を殺害する事こと、です。方法はお任せします。しかし、見られたりした場合は失敗と見做します。
期限は2日後の夜12時まで、です。”

 ――――御面の正体は、和月だ。
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