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方法は不明だ。しかし、残されたのは和月しかいない。
和月が元々頭脳明晰であることは知っていた。だから、彼にしか成し得ない技があるに違いない。
それにしても、なぜこんなことを。
白都は、明確な答えを得た瞬間から、更に強い混乱に侵されていた。それと、痛苦も。
穂積殺害を実行しなければ、恐らく和月は自ら穂積を手にかけるだろう。それか、昨日のような脅しを掛けてきて、精神を潰し殺させるかもしれない。
考えても考えても、想像した未来の中に嵌ってゆくだけだ。好機が訪れる道は見えない。
選ぶべき道が、分からない――。
白都は再度シーツの中に潜り込み、全身を覆い隠した。思考放棄を掲げても、生まれ出る不安は消えない。
従わなければ、痛めつけられる。従わなければ、殺される。もしかすると、まだ味わったことのない苦痛を味わわされるかもしれない。
それは嫌だ、怖い、怖い。
―――けれど、もう誰も失いたくない。
***
時間だけを繰り返してゆく。焦りながら、けれど立ち止まったまま。進展一つ無いまま。
脳味噌をフル回転させて、心を砕いて、時計も見ないまま答えだけを求めて手を伸ばす。
けれど、それは見つからず、気付けば二日目の朝が来ていた。
一応、光の加減で凡その時間帯は把握している。ゆえに、丸一日が過ぎたこともはっきり理解していた。
携帯で時間を確認すると、¨AM10:23¨と表示されていた。因みに、通知は一切無い。
今から十四時間後、期限がやってくる。期限までに遂行しなければ、恐怖が待っている。
残された道で、自分が選べるのは――。
電話が鳴った。すかさず携帯を手に取る。宛先は穂積だった。
「も、もしもし……?」
≪……あっ白くん、良かったぁ≫
「……え、えっと」
電話の向こう側で急に安心され、白都は困惑する。穂積の声は緩やかに、そして静かに話を続けた。
≪……学校来ないから心配で……あとこの間のこと謝りたくて……無様な姿見せてごめんね……≫
穂積が倒れた日を想起する。そう言えば、声を聞くのはあれ以来だ。
「…………いえ、穂積さんはもう大丈夫ですか……?」
≪うん、すっかりだよ~。だから心配しないでね≫
何一つ知らない無知さが、胸をぎゅっと締め付ける。声だけでは的確な表情を掴めないが、笑顔は想像できる。
「…………相澤さんは?」
≪和月? 今横にいるよ。電話代わろうか?≫
「えっ、あっ、良いです」
白都は、会話が聞かれていたことに焦りを覚えた。和月は今、何を思っただろう。
≪そう? 元気になったら学校来てね。待ってるよ。……あ、あんまり思い詰めちゃだめだからね、じゃあね≫
深刻に気遣われ、白都は黙り込んでしまう。
そうして、返事に詰まっている内に電話は切れてしまった。
優しさが、壊れかけた心に染み渡る。大切だと、かけがえない存在だと、疑わず信じていた時の気持ちを思い出す。
「……駄目だよ、やっぱり出来ないよ……」
滲み出す涙を拭いて、白都は堪えきれず一人ごとを漏らした。
決意に辿り着かない感情を揺らしながら、刻一刻と時は過ぎてゆく。
そうして、自分の力では決められないまま期限である十二時時が訪れた。
和月が元々頭脳明晰であることは知っていた。だから、彼にしか成し得ない技があるに違いない。
それにしても、なぜこんなことを。
白都は、明確な答えを得た瞬間から、更に強い混乱に侵されていた。それと、痛苦も。
穂積殺害を実行しなければ、恐らく和月は自ら穂積を手にかけるだろう。それか、昨日のような脅しを掛けてきて、精神を潰し殺させるかもしれない。
考えても考えても、想像した未来の中に嵌ってゆくだけだ。好機が訪れる道は見えない。
選ぶべき道が、分からない――。
白都は再度シーツの中に潜り込み、全身を覆い隠した。思考放棄を掲げても、生まれ出る不安は消えない。
従わなければ、痛めつけられる。従わなければ、殺される。もしかすると、まだ味わったことのない苦痛を味わわされるかもしれない。
それは嫌だ、怖い、怖い。
―――けれど、もう誰も失いたくない。
***
時間だけを繰り返してゆく。焦りながら、けれど立ち止まったまま。進展一つ無いまま。
脳味噌をフル回転させて、心を砕いて、時計も見ないまま答えだけを求めて手を伸ばす。
けれど、それは見つからず、気付けば二日目の朝が来ていた。
一応、光の加減で凡その時間帯は把握している。ゆえに、丸一日が過ぎたこともはっきり理解していた。
携帯で時間を確認すると、¨AM10:23¨と表示されていた。因みに、通知は一切無い。
今から十四時間後、期限がやってくる。期限までに遂行しなければ、恐怖が待っている。
残された道で、自分が選べるのは――。
電話が鳴った。すかさず携帯を手に取る。宛先は穂積だった。
「も、もしもし……?」
≪……あっ白くん、良かったぁ≫
「……え、えっと」
電話の向こう側で急に安心され、白都は困惑する。穂積の声は緩やかに、そして静かに話を続けた。
≪……学校来ないから心配で……あとこの間のこと謝りたくて……無様な姿見せてごめんね……≫
穂積が倒れた日を想起する。そう言えば、声を聞くのはあれ以来だ。
「…………いえ、穂積さんはもう大丈夫ですか……?」
≪うん、すっかりだよ~。だから心配しないでね≫
何一つ知らない無知さが、胸をぎゅっと締め付ける。声だけでは的確な表情を掴めないが、笑顔は想像できる。
「…………相澤さんは?」
≪和月? 今横にいるよ。電話代わろうか?≫
「えっ、あっ、良いです」
白都は、会話が聞かれていたことに焦りを覚えた。和月は今、何を思っただろう。
≪そう? 元気になったら学校来てね。待ってるよ。……あ、あんまり思い詰めちゃだめだからね、じゃあね≫
深刻に気遣われ、白都は黙り込んでしまう。
そうして、返事に詰まっている内に電話は切れてしまった。
優しさが、壊れかけた心に染み渡る。大切だと、かけがえない存在だと、疑わず信じていた時の気持ちを思い出す。
「……駄目だよ、やっぱり出来ないよ……」
滲み出す涙を拭いて、白都は堪えきれず一人ごとを漏らした。
決意に辿り着かない感情を揺らしながら、刻一刻と時は過ぎてゆく。
そうして、自分の力では決められないまま期限である十二時時が訪れた。
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