フレンドテロリスト

有箱

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 そうして三日目の朝が来た。正しくはまだ明け方だが、期日を越えたことに変わりはない。

 白都は頭を抱えていた。あるはずの無い視線を感じ、シーツの中から顔を出すことさえ出来ない。
 自宅にいるのに拘らず、音を鳴らしてはならない気がして、呼吸まで潜めた。

 鳴るだけで緊張が走るようになったメロディが響き、白都は勢いよくベッドから出る。
 充電器に差しておいた携帯を手に取ると、すぐさま内容を確認した。

“命令は絶対って言っただろ”

 最早、敬語まで無くなった文章は、脅迫文と化していた。和月の声が脳内で再生され、無慈悲な表情まで精密に描いてしまう。

 白都は台詞で、暴行の痛みや、傷つけられた時の苦しみ、死を感じた時の恐怖を思い出した。
 全身が総毛立ち、恐怖が心を壊してゆく。思考が歪み、崩れ去ってゆくのも感じる。

 続けざまに連絡が更新された。

“もう一日チャンスをあげよう。今日の夜9時頃、穂積をお前の名で裏道に呼び出しておいた。だから次は殺せ。
まずは腹部を刺して、死ななければ首を刺せ。これが条件だ。
もし出来なければ、大切な人間が全員死ぬと思ってもらおう。勿論、お前自身も含む。”
 
 完全な脅迫は白都の内に入り込み、完全に正義と愛情を破壊した。恐怖心が心を満たしてゆく。
 何をしてでも、死ぬのだけは御免だ。自分は悪くない。決して悪くない。
 悪いのは全部、御面だから。

 白都は迷いだす思いを完全にシャットダウンし、キッチンへと足を踏み出した。 
 
***

 穂積は学校で、早朝受信したメールを見詰めていた。
 始め来た時は誰だろうと首を傾げたが、内容を見て直ぐに疑問は解けた。 

“白都です。アドレスを変えました。
それと急で申し訳ないんですが今日の9時ごろ相談に付き合ってもらえませんか?出来れば人の居ない場所が良いので分かり辛いですがここに来て欲しいです”

 添付画像として貼ってある手書きの地図には、図形と赤色の丸が示してあった。
 穂積は嬉しかった。様子が可笑しくなってゆく白都をずっと気にしつつも、何一つしてあげられなかったのだ。でも、相談の内容によっては、何か出来るかもしれない。

 それに、白都が侑也のようになってしまうのが怖かった。目の前で電車に飛び込んでいった侑也が忘れられず、友達を失うのはもう嫌だと何千回も苦しんだ。
 だから、少しでも力になれることが嬉しかった。

 幸い、母親は今日、夜の仕事が無いと言っていた。だから妹の心配は要らない。
 友人の悩みを聞きに行くのだと、誇らしく出掛けられる。

 どういった悩みが口にされるか分からないが、大好きな彼の為、内容がどんなであれ精一杯力になれるよう努力しよう。

***

 八時五十分、白都は裏道へ向かう道を歩んでいた。自ら地獄に踏み込んでゆく自覚を持ちながら、飲み込まれてしまわないように振り切る。
 仕方がない、と何度でも繰り返した。

 裏道に着くと、見慣れた姿が目に映った。背の高い彼が、月明かりに照らされた顔に笑みを湛える。

「白くん、早いね」
「…………穂積さんこそ早いですね……」
「……頼ってくれてありがとう」

 なぜ、今日に限って月が綺麗なのだろう。なぜ、今日に限って表情がよく見えるのだろう。

「……穂積さん、ごめんなさい」
「…………え?」

 なぜ、今日に限って刃がよく光るのだろう。
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