錆びた灯台で幽霊少女に恋をした

有箱

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僕だけの灯台

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 立入禁止の札なんて、もはや飾りだ。朽ちたロープを潜れば、そこから先は僕だけの空間になる。
 埃っぽさと錆の臭いに、混ざる磯の香りが心地いい。昼間なのに、幽霊でも出そうな古び具合もいい。
 長い螺旋階段を上った先、置かれた長椅子が僕の特等席だ。



 落ち込んだ時、思案に浸りたい時、必ず向かう場所がある。十二歳で今の町に越してきて、寂しさに侵されていた時偶然見つけた。

 忘れ去られた海と浜を、見守り佇む灯台だ。中には小さめの長椅子と、海の青で埋まる窓がある。空間自体もこじんまりとしており、冷静を集めるには十分すぎる環境だった。虜になり、早四年は世話になっている。

 最近は専ら、自らの不器用さを嘆いていた。運動も勉強も苦手で、コミュニケーション能力も恐らく平均。今日なんか、変な発言をしてしまい空気を白けさせてしまった。しかし、ここにこれば、波が後悔すら拐ってくれる。

 こんな場所だ。独り占めする特別感は素直に悪くなかった。むしろ、誰かに侵入されたら寂しくなってしまうかもな。
 なんて考えながら、静けさを満喫していたのに。しれっと椅子にいたのは見知らぬ少女だった。
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