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やよいとお友だち
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「やよいちゃん、今日ハル君って子と喧嘩しちゃったんだって?」
お家に帰ると、おやつを持ってきたママが言った。思い出して、また涙が出てくる。
「お兄ちゃんいるもん。嘘じゃないもん」
今だって隣にいてくれる。やよいが生まれてからずっと、いてくれてるのに。
なのに、嘘つきだと言われてしまった。
ママは、やよいの前の椅子に座る。そうして、やよいを見ると優しく笑った。
「そうだね。お兄ちゃんがいるのはママ分かってる。でもね、ママも見れないし、他の子も見れないの。神さまが特別に、やよいちゃんだけは見えるようにしてくれてるのかもね」
「そうなの?」
やよいだけの特別と分かり、少し嬉しくなる。皆に見えないのは寂しいけど、それなら仕方ないかもと思った。
「そうだよ。見えないのにいるよって言われたら、吃驚しちゃうし怖くなっちゃうかもしれないね。だから、もう他の子には言っちゃいけないよ。やよいちゃん出来るかな?」
「うん!」
手を上げると、ママは頭を撫で撫でしてくれた。
「良い子だね。吃驚させちゃってごめんねってハル君に言えるかな?」
また嫌な事を言われたらと考えたけど、ごめんなさいは大事だって知っている。だから、怖いけど頑張ることにした。
うんと頷くと、お兄ちゃんの声がした。
「やよいお姉さん、頑張れ!」
そうだ。もうすぐ6才なんだから頑張らなきゃ。お兄ちゃんを喜ばせる為にも、やよいは――。
*
次の日、こっそり謝りたくて、ハル君が一人になるのを待っていた。けれど、ハル君は人気者だったから、中々一人にならなかった。
だけど、不思議な事に、ハル君からやよいの所に来てくれた。
お喋りしない約束だから、目だけでお兄ちゃんに怖いって伝える。そうすると、お兄ちゃんは前みたいに両手をグーにした。
頑張れって言ってくれてる。
「ハル君!」
お兄ちゃんの為にもお姉さんになる為にも、大きい声を出した。ハル君は、怖い顔をびっくりさせている。
「な、なに」
「あのね……」
チラリと横を見ると、お兄ちゃんが隣にぴったりくっ付いていた。手をグーにしたままやよいを見ている。
ママとお兄ちゃんの言葉を思い出し、大きく息を吸った。
「昨日、びっくりさせちゃってごめんね。お兄ちゃんのこと見れるのやよいだけなのにごめんね。見えないのにいるって言ったら怖いね」
――出た声は、小さかったけど。
ドキドキしながらハル君を見ると、ちょっと困った顔をしていた。けど直ぐにツンとして、
「誰も怖いって言って無いだろ!」
と言った。
「俺も嫌なこと言ってごめん。やよいちゃん変じゃないよ。あっちで一緒に遊ぼ」
そしてから笑ってくれた。手の平が、こっちに向けられている。
「うん!」
嬉しくて、右手でぎゅっとすると引っ張られた。足を出しながらも、にこにこ顔でお兄ちゃんを見る。
けれど、そこにお兄ちゃんはいなかった。
*
ハル君と、他のお友達といっぱい遊んだ。皆とは直ぐに仲良しになれた。
約束だから、ちゃんとお兄ちゃんの事は言わなかった。
時間が経って、帰る時間になった。使ったおもちゃを一個ずつ分けて片付ける。
そこでやっと、お兄ちゃんと二人きりになった。
こんなにお兄ちゃんと喋らなかったのは久しぶりだ。どっかに行っていたお兄ちゃんは、気付いた時には隣に戻っていた。
「お兄ちゃんどこ行ってたの」
「えっ?」
「あのね、お兄ちゃんいない時にね、ハル君と皆で遊んだの! お友達いっぱい出来たよ」
おもちゃを元の場所に置いて、指で数を数える。お兄ちゃんは、名前を言っただけニコってしてくれた。
「良かったね。皆と仲良く出来て、お兄ちゃんも嬉しいな」
「うん!」
やよいもお兄ちゃんも嬉しい。それが何より嬉しかった。ごめんなさい出来て、友達と遊べて、凄く楽しい一日だった。
明日からの幼稚園が楽しみになった。
お家に帰ると、おやつを持ってきたママが言った。思い出して、また涙が出てくる。
「お兄ちゃんいるもん。嘘じゃないもん」
今だって隣にいてくれる。やよいが生まれてからずっと、いてくれてるのに。
なのに、嘘つきだと言われてしまった。
ママは、やよいの前の椅子に座る。そうして、やよいを見ると優しく笑った。
「そうだね。お兄ちゃんがいるのはママ分かってる。でもね、ママも見れないし、他の子も見れないの。神さまが特別に、やよいちゃんだけは見えるようにしてくれてるのかもね」
「そうなの?」
やよいだけの特別と分かり、少し嬉しくなる。皆に見えないのは寂しいけど、それなら仕方ないかもと思った。
「そうだよ。見えないのにいるよって言われたら、吃驚しちゃうし怖くなっちゃうかもしれないね。だから、もう他の子には言っちゃいけないよ。やよいちゃん出来るかな?」
「うん!」
手を上げると、ママは頭を撫で撫でしてくれた。
「良い子だね。吃驚させちゃってごめんねってハル君に言えるかな?」
また嫌な事を言われたらと考えたけど、ごめんなさいは大事だって知っている。だから、怖いけど頑張ることにした。
うんと頷くと、お兄ちゃんの声がした。
「やよいお姉さん、頑張れ!」
そうだ。もうすぐ6才なんだから頑張らなきゃ。お兄ちゃんを喜ばせる為にも、やよいは――。
*
次の日、こっそり謝りたくて、ハル君が一人になるのを待っていた。けれど、ハル君は人気者だったから、中々一人にならなかった。
だけど、不思議な事に、ハル君からやよいの所に来てくれた。
お喋りしない約束だから、目だけでお兄ちゃんに怖いって伝える。そうすると、お兄ちゃんは前みたいに両手をグーにした。
頑張れって言ってくれてる。
「ハル君!」
お兄ちゃんの為にもお姉さんになる為にも、大きい声を出した。ハル君は、怖い顔をびっくりさせている。
「な、なに」
「あのね……」
チラリと横を見ると、お兄ちゃんが隣にぴったりくっ付いていた。手をグーにしたままやよいを見ている。
ママとお兄ちゃんの言葉を思い出し、大きく息を吸った。
「昨日、びっくりさせちゃってごめんね。お兄ちゃんのこと見れるのやよいだけなのにごめんね。見えないのにいるって言ったら怖いね」
――出た声は、小さかったけど。
ドキドキしながらハル君を見ると、ちょっと困った顔をしていた。けど直ぐにツンとして、
「誰も怖いって言って無いだろ!」
と言った。
「俺も嫌なこと言ってごめん。やよいちゃん変じゃないよ。あっちで一緒に遊ぼ」
そしてから笑ってくれた。手の平が、こっちに向けられている。
「うん!」
嬉しくて、右手でぎゅっとすると引っ張られた。足を出しながらも、にこにこ顔でお兄ちゃんを見る。
けれど、そこにお兄ちゃんはいなかった。
*
ハル君と、他のお友達といっぱい遊んだ。皆とは直ぐに仲良しになれた。
約束だから、ちゃんとお兄ちゃんの事は言わなかった。
時間が経って、帰る時間になった。使ったおもちゃを一個ずつ分けて片付ける。
そこでやっと、お兄ちゃんと二人きりになった。
こんなにお兄ちゃんと喋らなかったのは久しぶりだ。どっかに行っていたお兄ちゃんは、気付いた時には隣に戻っていた。
「お兄ちゃんどこ行ってたの」
「えっ?」
「あのね、お兄ちゃんいない時にね、ハル君と皆で遊んだの! お友達いっぱい出来たよ」
おもちゃを元の場所に置いて、指で数を数える。お兄ちゃんは、名前を言っただけニコってしてくれた。
「良かったね。皆と仲良く出来て、お兄ちゃんも嬉しいな」
「うん!」
やよいもお兄ちゃんも嬉しい。それが何より嬉しかった。ごめんなさい出来て、友達と遊べて、凄く楽しい一日だった。
明日からの幼稚園が楽しみになった。
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