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お姉さんになるから
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次の日、ワクワクで目が覚めた。お兄ちゃんは部屋にいなくて、一人で起きれたと喜んだ。
部屋を出る頃にはお兄ちゃんがいたから、起きれたって言うと凄いねって言ってくれた。
幼稚園でも、お友達と遊ぶようになった。とっても楽しくて、ずっと遊んだ。
その時は、お兄ちゃんもどこかに行っているみたいで、お兄ちゃんとお話しない日が多くなった。
「ねぇお兄ちゃん、いっつもどこ行ってるの?」
二人っきりになった時、こっそり聞いてみた。お兄ちゃんは目を丸にして、ちょっと困った感じで笑った。
「園の外をお散歩してるんだよ」
「えー、やよいも行きたい!」
幼稚園の外には、色んな物がある。だから冒険してみたいと思っていた。
それなのに、先に行っちゃうなんてずるい。
「うーん、ならママも誘って今度行こう。だから幼稚園の時間はお――」
そうだ、良いこと思いついた!
*
皆で遊んでいると、お兄ちゃんはまたいなくなった。一人でお散歩に行ってしまったのだ。
でも、良いなぁなんて思わない。どうしてかと言うと、やよいも行くからだ。
「ハル君、やよいちょっとトイレ」
「んー」
もちろん一人で。お兄ちゃんを見つけて、びっくりさせようと思っている。
初めての冒険にワクワクした。
先生からも隠れんぼして、こっそり園を出る。いつもの扉は開いてないから、秘密の扉からだ。
小さい扉の先は、初めての世界だった。大きい建物や木がいっぱいある。外にはいつも出るのに、こんな所は見たことがなかった。
さぁ、お兄ちゃんを探そう。
*
色んな新しいものを見ながら、いっぱい歩いた。時々、ワンちゃんに吠えられたりしたけど平気だった。とっても楽しかった。
歌を歌いながら進んでると、やっとお兄ちゃんみたいな後ろ姿を見つけた。
「みーっけ!」
お兄ちゃんが振り返る――けど、その人はお兄ちゃんじゃなかった。
知らない人が怖い顔をする。それを見て急に不安になる。
「お兄ちゃん、どこー!」
たくさんの目がやよいを見るから、隠れたくて細い道に逃げた。けど、真っ暗でもっと怖くなる。
だから、そのまま走った。そしたら明るい場所に出た。けど、もうダメだ。
「お兄ちゃん……」
涙が出てくる。ぽろぽろ零れだした時、後ろから声が聞こえた。
「――ちゃん、どこ行くの!」
「お兄ちゃん!?」
ばっと振り向く。けど、そこには暗い道しかなかった。もう、怖くて入れない。
「お兄ちゃん、出てきてー!」
周りの木が、生き物みたいで怖かった。変な世界に来ちゃったみたいで、涙が止まらない。
もう、ママに会えないのは嫌だ。
「やよいちゃん!」
さっきより、くっきりと聞こえた。もう一度振り返ると、お兄ちゃんが立っていた。
「どこ行ってたの! やよい探したんだよ!」
そう言うと、お兄ちゃんはびっくりして悲しそうになる。
「……ごめんね。帰ろうか?」
ずっと怖かったし、疲れたから頷くだけした。隣に立ったお兄ちゃんは、きょろきょろしている。
やよいも真似してみた。けど、幼稚園はどこにもない。
「……幼稚園どっちか忘れちゃった」
「えっ、お兄ちゃんも……」
お兄ちゃんを見ると、眉毛がハになっていた。二人して困ったさんだ。
「誰かに聞ければ良いんだけど……あっ」
お兄ちゃんの見ている場所には、知らない女の人がいた。ワンちゃんもいるから多分お散歩中だ。
「やよいちゃん、聞いてみて?」
言われて首を横に振った。知らない人とお喋りなんて恥ずかしくて出来ない。
「やだ、お兄ちゃん聞いて!」
絶対に嫌だったから、しゃがみ込んだ。体操座りして、草にお尻をくっ付ける。
お兄ちゃんは、そんなやよいの前にしゃがんだ。
「やよいちゃんごめん。お兄ちゃん聞けないんだ……」
それを聞いてムッとしてしまう。助けて欲しいのに、何でやってくれないのか分からなかった。
「どうしてお兄ちゃんは誰かと喋れないの!? 見えないの!? 皆出来るのにお兄ちゃんだけ変!」
だから、そう言っちゃった。
「……そうだね、お兄ちゃん変だね」
けど、お兄ちゃんの凄く悲しい顔を見て、駄目な事を言ったんだと気付いた。
変だって言ったら、嫌な気持ちになるって知ってたのに。
「……ごめんなさい」
ごめんなさいの大切さを思い出し、小さく言った。そしてから、心の中で頑張ることを決める。
そうだ、私はお姉さんになるんだから。
女の人の方へ走った。服を引っ張って止めたら、ワンちゃんと一緒にこっちを見た。
「……あの、幼稚園ってどっちですか?」
もじもじしながら聞くと、女の人は優しく笑ってくれた。
*
園に帰ると、先生とママに怒られた。けど、帰ってきてくれて良かったと抱きしめてもくれた。声を掛けれた事を話すと、褒めてもくれた。
それが本当に嬉しくて、これからもっと頑張れる気がした。
今日は、特別に他の子より早く帰る。もっと特別に、ママと手を繋いで外を歩いてくことになった。それなのに。
「お兄ちゃん、また散歩かなぁ。ママ知らない?」
さっきまで隣にいたのに、気付いたらいなくなっていた。最近、本当にいないことが多い。
「うーん、知らないなぁ。いないの?」
「よくね、いなくなっちゃうの」
前はずっと隣にいたのに、今はいないことばっかりだ。お友達と遊べるからあんまり寂しくはないけど。
「そう。でもやよいちゃんは6才になるんだし、お兄ちゃんが居なくても大丈夫にならなきゃね」
「やよい大丈夫だよ。一人でもお喋り出来るもん」
「そっか、もうお姉さんだったね」
でも、一人でどっかに行っちゃうのは駄目だよ。
そんな言葉を聞きながら、もう一回周りを見てみた。けどお兄ちゃんは戻って来てなくて、残念だなぁと思った。
一人でも頑張れることを、褒めてほしかったんだけどな。
部屋を出る頃にはお兄ちゃんがいたから、起きれたって言うと凄いねって言ってくれた。
幼稚園でも、お友達と遊ぶようになった。とっても楽しくて、ずっと遊んだ。
その時は、お兄ちゃんもどこかに行っているみたいで、お兄ちゃんとお話しない日が多くなった。
「ねぇお兄ちゃん、いっつもどこ行ってるの?」
二人っきりになった時、こっそり聞いてみた。お兄ちゃんは目を丸にして、ちょっと困った感じで笑った。
「園の外をお散歩してるんだよ」
「えー、やよいも行きたい!」
幼稚園の外には、色んな物がある。だから冒険してみたいと思っていた。
それなのに、先に行っちゃうなんてずるい。
「うーん、ならママも誘って今度行こう。だから幼稚園の時間はお――」
そうだ、良いこと思いついた!
*
皆で遊んでいると、お兄ちゃんはまたいなくなった。一人でお散歩に行ってしまったのだ。
でも、良いなぁなんて思わない。どうしてかと言うと、やよいも行くからだ。
「ハル君、やよいちょっとトイレ」
「んー」
もちろん一人で。お兄ちゃんを見つけて、びっくりさせようと思っている。
初めての冒険にワクワクした。
先生からも隠れんぼして、こっそり園を出る。いつもの扉は開いてないから、秘密の扉からだ。
小さい扉の先は、初めての世界だった。大きい建物や木がいっぱいある。外にはいつも出るのに、こんな所は見たことがなかった。
さぁ、お兄ちゃんを探そう。
*
色んな新しいものを見ながら、いっぱい歩いた。時々、ワンちゃんに吠えられたりしたけど平気だった。とっても楽しかった。
歌を歌いながら進んでると、やっとお兄ちゃんみたいな後ろ姿を見つけた。
「みーっけ!」
お兄ちゃんが振り返る――けど、その人はお兄ちゃんじゃなかった。
知らない人が怖い顔をする。それを見て急に不安になる。
「お兄ちゃん、どこー!」
たくさんの目がやよいを見るから、隠れたくて細い道に逃げた。けど、真っ暗でもっと怖くなる。
だから、そのまま走った。そしたら明るい場所に出た。けど、もうダメだ。
「お兄ちゃん……」
涙が出てくる。ぽろぽろ零れだした時、後ろから声が聞こえた。
「――ちゃん、どこ行くの!」
「お兄ちゃん!?」
ばっと振り向く。けど、そこには暗い道しかなかった。もう、怖くて入れない。
「お兄ちゃん、出てきてー!」
周りの木が、生き物みたいで怖かった。変な世界に来ちゃったみたいで、涙が止まらない。
もう、ママに会えないのは嫌だ。
「やよいちゃん!」
さっきより、くっきりと聞こえた。もう一度振り返ると、お兄ちゃんが立っていた。
「どこ行ってたの! やよい探したんだよ!」
そう言うと、お兄ちゃんはびっくりして悲しそうになる。
「……ごめんね。帰ろうか?」
ずっと怖かったし、疲れたから頷くだけした。隣に立ったお兄ちゃんは、きょろきょろしている。
やよいも真似してみた。けど、幼稚園はどこにもない。
「……幼稚園どっちか忘れちゃった」
「えっ、お兄ちゃんも……」
お兄ちゃんを見ると、眉毛がハになっていた。二人して困ったさんだ。
「誰かに聞ければ良いんだけど……あっ」
お兄ちゃんの見ている場所には、知らない女の人がいた。ワンちゃんもいるから多分お散歩中だ。
「やよいちゃん、聞いてみて?」
言われて首を横に振った。知らない人とお喋りなんて恥ずかしくて出来ない。
「やだ、お兄ちゃん聞いて!」
絶対に嫌だったから、しゃがみ込んだ。体操座りして、草にお尻をくっ付ける。
お兄ちゃんは、そんなやよいの前にしゃがんだ。
「やよいちゃんごめん。お兄ちゃん聞けないんだ……」
それを聞いてムッとしてしまう。助けて欲しいのに、何でやってくれないのか分からなかった。
「どうしてお兄ちゃんは誰かと喋れないの!? 見えないの!? 皆出来るのにお兄ちゃんだけ変!」
だから、そう言っちゃった。
「……そうだね、お兄ちゃん変だね」
けど、お兄ちゃんの凄く悲しい顔を見て、駄目な事を言ったんだと気付いた。
変だって言ったら、嫌な気持ちになるって知ってたのに。
「……ごめんなさい」
ごめんなさいの大切さを思い出し、小さく言った。そしてから、心の中で頑張ることを決める。
そうだ、私はお姉さんになるんだから。
女の人の方へ走った。服を引っ張って止めたら、ワンちゃんと一緒にこっちを見た。
「……あの、幼稚園ってどっちですか?」
もじもじしながら聞くと、女の人は優しく笑ってくれた。
*
園に帰ると、先生とママに怒られた。けど、帰ってきてくれて良かったと抱きしめてもくれた。声を掛けれた事を話すと、褒めてもくれた。
それが本当に嬉しくて、これからもっと頑張れる気がした。
今日は、特別に他の子より早く帰る。もっと特別に、ママと手を繋いで外を歩いてくことになった。それなのに。
「お兄ちゃん、また散歩かなぁ。ママ知らない?」
さっきまで隣にいたのに、気付いたらいなくなっていた。最近、本当にいないことが多い。
「うーん、知らないなぁ。いないの?」
「よくね、いなくなっちゃうの」
前はずっと隣にいたのに、今はいないことばっかりだ。お友達と遊べるからあんまり寂しくはないけど。
「そう。でもやよいちゃんは6才になるんだし、お兄ちゃんが居なくても大丈夫にならなきゃね」
「やよい大丈夫だよ。一人でもお喋り出来るもん」
「そっか、もうお姉さんだったね」
でも、一人でどっかに行っちゃうのは駄目だよ。
そんな言葉を聞きながら、もう一回周りを見てみた。けどお兄ちゃんは戻って来てなくて、残念だなぁと思った。
一人でも頑張れることを、褒めてほしかったんだけどな。
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