×××回の人生に餞を

有箱

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×××回目の人生(1/2)

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 デジタル時計に表示される9月23日の並び。カーテンの隙間を埋めるくすんだ空の色。まだ白い枕カバー。
 こんな朝を見るのにも、すっかり慣れてしまった。ベッドの中で体を丸め、今度こそはと呟く。勝手に出ていこうとした涙を、唇に痛みを与え引っ込めた。

 ベッドから重い体を引き抜き、制服を纏うべくパジャマを脱ぐ。右腕に大きく二ヶ所、左腕に小さく五ヶ所――それから捲ったシャツの下、馴染みの青痣が腹に張り付いていた。
 手の甲と肘を覆う擦り傷、手首に整列する切り傷……幾つもの傷も点繋ぎのように辿る。
 今日こそ登校拒否をと考えたが、家を出る母の明るい「行ってきます」に勇気は掻き消えた。

 本能が確り働いているらしく、学校に近付くほど心臓が拒絶する。しかし、歩みは止めなかった。いや、止められなかった。習慣に引っ張られるがまま校門を潜る。

 さて、はじまるぞ。
 まずは玄関前で、上から水を被せられる。しかし、これは回避不可能ゆえ受け入れて被る。嘲笑を耳に進んだ先、下駄箱から蛇の死骸。これも回避不可だが完全に慣れた。上靴の中に隠された三つの画鋲は、ひっそりと取り出して鞄へ入れた。
 脳内では、本日生じる全ての展開が再生されている。その上で沸騰する、心の拒絶など構わず教室へ入った。
 
 僕は苛めを受けている。生傷を刻んでくるのは少数だが、学校中から無視という方法で攻撃されている。
 期間は中学三年生の九月からは卒業までだ。なぜ未来を予知できるかと言うと、何度も同じ月日を巡っているからである。
 確定ではない理由としては、卒業式を迎える前に必ず自分を殺してしまうからだ。乗り越えれば進める可能性がある――分かっていても、いつも擦りきれた心に阻害された。

 熟知している道筋を、敢えて変えるのは恐ろしい。経験している以上の苦痛が待っていたら。そう考えると戦う選択は取れず、日々はシナリオ通りに重ねられていく。
 今日という今日は何か行動を起こすんだ――心の中でだけ勇気を奮い立たせては、大嫌いな顔を前に砕け散った。

 今回はたった二ヶ月で、僕はベッドを血に染めた。
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