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「よく聞いて、ミランダ」
私の声は低く震えていた。
「レーラ……!」
狼狽えるグレッグの気持ちは痛い程よくわかる。ミランダは従姉妹。グレッグが、ミランダは誤解していると言うのだからそうなのだろう。
それでも、一つだけどうして許せない。
「私を騙そうとしても無駄よ!全部わかってるんだから!」
「聞きなさい、ミランダ!」
「!」
私は食って掛かるミランダの肩を逆に掴み、窓際に強引に足を進めた。
白い月の光に照らされるミランダの顔は蒼白く強張り、死を目前にしたかのように私を凝視する。
酷い恐怖に世界の全てが敵に見えている。
私は、その気持ちを知っている。
でも。
私たちは見つめ合う。
「確かに私は自ら命を断とうとした事があるわ。酷く傷ついて混乱していた。愚かだった」
「……」
「そんな私をグレッグが見つけてくれた。愛してくれた。私は決して愛する人を裏切りはしない」
「……」
「次に命を捨てるとしたら、それは子供たちを守るためだけよ」
「……」
「わかった?忘れないで。覚えていて。私はグレッグを愛しているの」
想いを伝えるために叫ぶ必要はなかった。
ミランダが私を見つめたまま膝から崩れ落ちる。
私は震えるミランダの髪を撫でてから、その少しだけ乱れた襟を直して、愛する人を呼んだ。
「グレッグ」
振り向くとグレッグは感極まったように胸を押さえ私を見つめていた。
「ミランダをお部屋に送ってあげて」
「え……?だが、あなたを放ってはおけない」
「私は大丈夫。支えが必要なのはミランダだから。お願い」
私が傍にいても意味がないだろう。
歩き出した私に、グレッグは戸惑いを見せた。
私は心配いらないと伝えるために、グレッグの腕をそっと撫でてすれ違うと、振り向かず足早に部屋へ向かった。
天使たちの寝顔を見たい。
部屋に戻り、子供たちの眠る続き部屋には忍び足で入る。
「……」
幼児用の可愛いベッドが二台並んでいる。足元のベッドで休む乳母は少しの物音で起きてくれるので、それこそ息を殺して子供たちの頭に回り込んだ。
跪き、柵の向こうのつむじを見つめる。
知らず知らず口元が緩み、私は柵に掴まって指を伸ばし、柔らかなハワードの髪に触れる。おっとりした性格のハワードは、眠っていてもマイペースでびくりともしない。
レイチェルの髪も同じように触れる。それからぷくりとした頬につんと指をあてた。
既におてんばな性格が表に現れ始めているレイチェルは、ふがふがと寝息を乱して反応してくれた。
くすりと笑いが洩れ、胸の内で柔らかな熱が膨張する。
本当に可愛いわ。私が生んだなんて信じられないくらい。
立ち上がり、柵の中に身を乗り出して二人の額にキスをする。
可愛い私の天使たち。
かけがえのない愛を教えてくれるあなたたちのためになら死ねるけれど、できればずっと傍で成長を見守りたい。
こうして愛する家族のほうだけ向いていられるのは、グレッグという善き夫に愛され守られているからだ。
「……」
私が思い詰め愚かな決断をしたように、ミランダも今、愚かな混乱の中にいるのだろう。
彼女は孤独に蝕まれ、悪魔に付け込まれてしまったのだ。
敏い乳母が目を覚まさないうちに自分たちの寝室に戻った。
ベッドに浅く腰掛けて息を整える。
グレッグが戻るまで眠る気はない。朝が来るなら、望む所よ。
私の声は低く震えていた。
「レーラ……!」
狼狽えるグレッグの気持ちは痛い程よくわかる。ミランダは従姉妹。グレッグが、ミランダは誤解していると言うのだからそうなのだろう。
それでも、一つだけどうして許せない。
「私を騙そうとしても無駄よ!全部わかってるんだから!」
「聞きなさい、ミランダ!」
「!」
私は食って掛かるミランダの肩を逆に掴み、窓際に強引に足を進めた。
白い月の光に照らされるミランダの顔は蒼白く強張り、死を目前にしたかのように私を凝視する。
酷い恐怖に世界の全てが敵に見えている。
私は、その気持ちを知っている。
でも。
私たちは見つめ合う。
「確かに私は自ら命を断とうとした事があるわ。酷く傷ついて混乱していた。愚かだった」
「……」
「そんな私をグレッグが見つけてくれた。愛してくれた。私は決して愛する人を裏切りはしない」
「……」
「次に命を捨てるとしたら、それは子供たちを守るためだけよ」
「……」
「わかった?忘れないで。覚えていて。私はグレッグを愛しているの」
想いを伝えるために叫ぶ必要はなかった。
ミランダが私を見つめたまま膝から崩れ落ちる。
私は震えるミランダの髪を撫でてから、その少しだけ乱れた襟を直して、愛する人を呼んだ。
「グレッグ」
振り向くとグレッグは感極まったように胸を押さえ私を見つめていた。
「ミランダをお部屋に送ってあげて」
「え……?だが、あなたを放ってはおけない」
「私は大丈夫。支えが必要なのはミランダだから。お願い」
私が傍にいても意味がないだろう。
歩き出した私に、グレッグは戸惑いを見せた。
私は心配いらないと伝えるために、グレッグの腕をそっと撫でてすれ違うと、振り向かず足早に部屋へ向かった。
天使たちの寝顔を見たい。
部屋に戻り、子供たちの眠る続き部屋には忍び足で入る。
「……」
幼児用の可愛いベッドが二台並んでいる。足元のベッドで休む乳母は少しの物音で起きてくれるので、それこそ息を殺して子供たちの頭に回り込んだ。
跪き、柵の向こうのつむじを見つめる。
知らず知らず口元が緩み、私は柵に掴まって指を伸ばし、柔らかなハワードの髪に触れる。おっとりした性格のハワードは、眠っていてもマイペースでびくりともしない。
レイチェルの髪も同じように触れる。それからぷくりとした頬につんと指をあてた。
既におてんばな性格が表に現れ始めているレイチェルは、ふがふがと寝息を乱して反応してくれた。
くすりと笑いが洩れ、胸の内で柔らかな熱が膨張する。
本当に可愛いわ。私が生んだなんて信じられないくらい。
立ち上がり、柵の中に身を乗り出して二人の額にキスをする。
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こうして愛する家族のほうだけ向いていられるのは、グレッグという善き夫に愛され守られているからだ。
「……」
私が思い詰め愚かな決断をしたように、ミランダも今、愚かな混乱の中にいるのだろう。
彼女は孤独に蝕まれ、悪魔に付け込まれてしまったのだ。
敏い乳母が目を覚まさないうちに自分たちの寝室に戻った。
ベッドに浅く腰掛けて息を整える。
グレッグが戻るまで眠る気はない。朝が来るなら、望む所よ。
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