2 / 52
2
しおりを挟む
「え……?」
「今夜の主役は君じゃなくジュリエッタだ。それがそんなに不満か?」
ステファンが険しく私を睨みつけジュリエッタの肩を抱いている。
「僕が幼馴染に甘いと不貞腐れるのは勝手だが、やり方が汚すぎる!」
「……な、にを……!?」
意味がわからない。
私が責められている。私は無実なのに。
「何をしたかわかっているのか?ジュリエッタに嫉妬しすぎて、もうまともに考えられなくなっているんじゃないか?」
「ステファン……?」
確かに馬車の中で喧嘩をした。
些細な言い合いだ。
少しの嫉妬はあった。熱心に求婚してくれたステファンが、婚約してからは幼馴染のジュリエッタとの思い出ばかり語るのは小さな悩みの種だった。
でも、愛する人の幼馴染だから、愛そうと思った。
シュヴァリエ伯爵家の哀しみに敬意を表し、ジュリエッタを祝福するために来たのだ。
だからジュリエッタからの親友の証を喜んで受け入れた。
それが策略とは思いもよらずに。
「……」
息が、うまくできない。
「なんだ。僕を騙せると思っていたのか?」
「……」
騙していない。
「君は僕の大切な人たちを傷つけたんだぞ!!」
「……っ」
怒鳴られて身が竦んだ。
騙されたのはあなたよ。
私も騙され傷つけられている。
そう心が叫んでも声にならない。
「しかも、よりによって盗みだなんて……君に貴族を名乗る資格はない!」
「ち、がう……っ」
やっと声を絞り出す。
突き刺さる無数の視線に生きた心地がしないとしても、耐えて、耐え抜いて、ステファンにだけは理解してもらわなくてはならない。
「彼女がくれたの……っ、私は、盗んでないわ……!」
「嘘!見苦しいわよ、シルヴィ!」
「嘘じゃないわ……!」
「お黙り!!」
ジュリエッタとの怒鳴り合いになりかけたところでテレザが叫んだ。
葬儀の時以来、人前で涙を見せたことなどなかった気丈な貴婦人として名高い女傑のシュヴァリエ伯爵夫人テレザが、熱い涙を流しながら私を鋭く睨みつける。
「この子は私が認めたサミュエルの妻です。私の大切な指輪を他人にあげるどころか、触らせることさえ断じてありえません。あなた……よくも、私たちにこんな酷い仕打ちを……!!」
「追い出して!」
ジュリエッタが怒号を上げるとステファンが迅速に動いた。私の腕を乱暴に掴み強引に引き摺るようにして歩き始める。愛を囁いた婚約者としてではなく、汚い盗人として扱われていた。
「い、痛い……やめて……!」
ステファンは私を見もしない。
「今夜の主役は君じゃなくジュリエッタだ。それがそんなに不満か?」
ステファンが険しく私を睨みつけジュリエッタの肩を抱いている。
「僕が幼馴染に甘いと不貞腐れるのは勝手だが、やり方が汚すぎる!」
「……な、にを……!?」
意味がわからない。
私が責められている。私は無実なのに。
「何をしたかわかっているのか?ジュリエッタに嫉妬しすぎて、もうまともに考えられなくなっているんじゃないか?」
「ステファン……?」
確かに馬車の中で喧嘩をした。
些細な言い合いだ。
少しの嫉妬はあった。熱心に求婚してくれたステファンが、婚約してからは幼馴染のジュリエッタとの思い出ばかり語るのは小さな悩みの種だった。
でも、愛する人の幼馴染だから、愛そうと思った。
シュヴァリエ伯爵家の哀しみに敬意を表し、ジュリエッタを祝福するために来たのだ。
だからジュリエッタからの親友の証を喜んで受け入れた。
それが策略とは思いもよらずに。
「……」
息が、うまくできない。
「なんだ。僕を騙せると思っていたのか?」
「……」
騙していない。
「君は僕の大切な人たちを傷つけたんだぞ!!」
「……っ」
怒鳴られて身が竦んだ。
騙されたのはあなたよ。
私も騙され傷つけられている。
そう心が叫んでも声にならない。
「しかも、よりによって盗みだなんて……君に貴族を名乗る資格はない!」
「ち、がう……っ」
やっと声を絞り出す。
突き刺さる無数の視線に生きた心地がしないとしても、耐えて、耐え抜いて、ステファンにだけは理解してもらわなくてはならない。
「彼女がくれたの……っ、私は、盗んでないわ……!」
「嘘!見苦しいわよ、シルヴィ!」
「嘘じゃないわ……!」
「お黙り!!」
ジュリエッタとの怒鳴り合いになりかけたところでテレザが叫んだ。
葬儀の時以来、人前で涙を見せたことなどなかった気丈な貴婦人として名高い女傑のシュヴァリエ伯爵夫人テレザが、熱い涙を流しながら私を鋭く睨みつける。
「この子は私が認めたサミュエルの妻です。私の大切な指輪を他人にあげるどころか、触らせることさえ断じてありえません。あなた……よくも、私たちにこんな酷い仕打ちを……!!」
「追い出して!」
ジュリエッタが怒号を上げるとステファンが迅速に動いた。私の腕を乱暴に掴み強引に引き摺るようにして歩き始める。愛を囁いた婚約者としてではなく、汚い盗人として扱われていた。
「い、痛い……やめて……!」
ステファンは私を見もしない。
43
あなたにおすすめの小説
とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、
屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。
そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。
母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。
そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。
しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。
メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、
財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼!
学んだことを生かし、商会を設立。
孤児院から人材を引き取り育成もスタート。
出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。
そこに隣国の王子も参戦してきて?!
本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る
とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【完結】恋を失くした伯爵令息に、赤い糸を結んで
白雨 音
恋愛
伯爵令嬢のシュゼットは、舞踏会で初恋の人リアムと再会する。
ずっと会いたかった人…心躍らせるも、抱える秘密により、名乗り出る事は出来無かった。
程なくして、彼に美しい婚約者がいる事を知り、諦めようとするが…
思わぬ事に、彼の婚約者の座が転がり込んで来た。
喜ぶシュゼットとは反対に、彼の心は元婚約者にあった___
※視点:シュゼットのみ一人称(表記の無いものはシュゼット視点です)
異世界、架空の国(※魔法要素はありません)《完結しました》
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
花言葉は「私のものになって」
岬 空弥
恋愛
(婚約者様との会話など必要ありません。)
そうして今日もまた、見目麗しい婚約者様を前に、まるで人形のように微笑み、私は自分の世界に入ってゆくのでした。
その理由は、彼が私を利用して、私の姉を狙っているからなのです。
美しい姉を持つ思い込みの激しいユニーナと、少し考えの足りない美男子アレイドの拗れた恋愛。
青春ならではのちょっぴり恥ずかしい二人の言動を「気持ち悪い!」と吐き捨てる姉の婚約者にもご注目ください。
死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?
神崎 ルナ
恋愛
アレクシアはこの一国の王妃である。だが伴侶であるはずの王には執務を全て押し付けられ、王妃としてのパーティ参加もほとんど側妃のオリビアに任されていた。
(私って一体何なの)
朝から食事を摂っていないアレクシアが厨房へ向かおうとした昼下がり、その日の内に起きた革命に巻き込まれ、『王政を傾けた怠け者の王妃』として処刑されてしまう。
そして――
「ここにいたのか」
目の前には記憶より若い伴侶の姿。
(……もしかして巻き戻った?)
今度こそ間違えません!! 私は王妃にはなりませんからっ!!
だが二度目の生では不可思議なことばかりが起きる。
学生時代に戻ったが、そこにはまだ会うはずのないオリビアが生徒として在籍していた。
そして居るはずのない人物がもう一人。
……帝国の第二王子殿下?
彼とは外交で数回顔を会わせたくらいなのになぜか親し気に話しかけて来る。
一体何が起こっているの!?
家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
日下奈緒
恋愛
そばかす令嬢クラリスは、家族に支度金目当てで成り上がり伯爵セドリックに嫁がされる。
だが彼に溺愛され家は再興。
見下していた美貌の妹リリアナは婚約破棄される。
捨てられた王妃は情熱王子に攫われて
きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。
貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?
猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。
疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り――
ざまあ系の物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる