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24(シャーロット)
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「そういうわけですから、私などに比べたら姫様は恐ろしいほど幸運なのですよ?今は混乱していらっしゃるのかもしれませんが、もう少し自分から希望を持って頑張ってみてくださいな」
レディ・イデアが私の手を摩る。
他人に優しくできない性格というような事を言いながら、彼女はそこまで冷たくはない。さっきから私の手を握り、あれやこれやと対処しようとしてくれる。
王太子の言う通り、信頼の置ける不遇な人なのだろう。
でも、違う……
私が泣いているのは、それは、だって……
「……っ」
「……」
私が嗚咽を堪えた瞬間、レディ・イデアも唇を引き結び奥歯を噛み締めた。
王太子が困り果てた様子で額を掻き、数日間の思い出を紹介がてらにふり返る。
「これでも努力しているんだ。ここへ連れてこられた初日は半狂乱で泣き叫び、可哀相で見ていられなかった。余程、故郷が恋しいようだ」
「泣き叫んだ?」
レディ・イデアが信じられないというような声を上げる。
私は……溢れる涙を止められない。
「可哀相だと思い陛下に掛け合ったが、隣国へは既に平和のための結婚を提案する使者を送ってあり、舌の根も乾かぬうちに翻せば新たな戦争の火種になると言って聞かない」
「それは……」
私の手からレディ・イデアが手を引き上げる。
そして私と同じように手を握り合わせ、美しく揃えた膝の上に置いた。
ただ座っているだけで御伽噺の中の女王様じみた風格がある、見るからに特別な御令嬢だ。姿勢とかではない。これが高貴な方の御姿。顔半分に嫌な肌荒れがあっても、残りの半分が本来の美と気高さを湛えている。
あの極悪非道なキャタモールが治療を施すならば、完璧に元通りにしてあげてほしい。医師としての腕は神がかっている。それしか取り柄の無い男なのだから……
「確かに、当事者であるシャーロット様は厳しいお立場ですが、王家の血が流れているお方なのであれば、あってもおかしくはないお話です。ましてや平和のための結婚となれば、そう酷い扱いは受けるはずがありません」
違う。
「ああ。私もそう言ったんだが……シャーロットは母親が稀代の歌姫クリスティーンである事さえ知らなかったそうだ」
「え?」
私は優しい両親のもとで愛を受けて育った。
「村娘として育ち、そのまま穏やかな一生を送ると信じて疑わなかった可憐な乙女にはきついのだろう。私たちの想像以上に、きっと」
帰りたい。
「だからできる限りいい思いをしてもらおうと、手は尽くしたつもりだ。幸い食事は気に入ってくれたようで、細いなりによく食べてくれる」
「お食べになるんですね」
レディ・イデアが感情の読めない視線で私を一瞥する。
「よかった。辛くても食べなくてはいけませんよ、姫様。この先何があろうと、食べてさえいれば命が潰える事はありません」
「……っ」
レディ・イデアに悪気はないとわかっている。
彼女もキャタモールに騙されたのだ。それに王太子も国王陛下もあの男に騙されている。
「……うぅ」
「ああ」
私に浴びせられる溜息なんて、私を追い詰めはしない。
レディ・イデア、ごめんなさい。
私はきっと良い生徒にはなれません。
なぜなら、私は……私には…………
レディ・イデアが私の手を摩る。
他人に優しくできない性格というような事を言いながら、彼女はそこまで冷たくはない。さっきから私の手を握り、あれやこれやと対処しようとしてくれる。
王太子の言う通り、信頼の置ける不遇な人なのだろう。
でも、違う……
私が泣いているのは、それは、だって……
「……っ」
「……」
私が嗚咽を堪えた瞬間、レディ・イデアも唇を引き結び奥歯を噛み締めた。
王太子が困り果てた様子で額を掻き、数日間の思い出を紹介がてらにふり返る。
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レディ・イデアが信じられないというような声を上げる。
私は……溢れる涙を止められない。
「可哀相だと思い陛下に掛け合ったが、隣国へは既に平和のための結婚を提案する使者を送ってあり、舌の根も乾かぬうちに翻せば新たな戦争の火種になると言って聞かない」
「それは……」
私の手からレディ・イデアが手を引き上げる。
そして私と同じように手を握り合わせ、美しく揃えた膝の上に置いた。
ただ座っているだけで御伽噺の中の女王様じみた風格がある、見るからに特別な御令嬢だ。姿勢とかではない。これが高貴な方の御姿。顔半分に嫌な肌荒れがあっても、残りの半分が本来の美と気高さを湛えている。
あの極悪非道なキャタモールが治療を施すならば、完璧に元通りにしてあげてほしい。医師としての腕は神がかっている。それしか取り柄の無い男なのだから……
「確かに、当事者であるシャーロット様は厳しいお立場ですが、王家の血が流れているお方なのであれば、あってもおかしくはないお話です。ましてや平和のための結婚となれば、そう酷い扱いは受けるはずがありません」
違う。
「ああ。私もそう言ったんだが……シャーロットは母親が稀代の歌姫クリスティーンである事さえ知らなかったそうだ」
「え?」
私は優しい両親のもとで愛を受けて育った。
「村娘として育ち、そのまま穏やかな一生を送ると信じて疑わなかった可憐な乙女にはきついのだろう。私たちの想像以上に、きっと」
帰りたい。
「だからできる限りいい思いをしてもらおうと、手は尽くしたつもりだ。幸い食事は気に入ってくれたようで、細いなりによく食べてくれる」
「お食べになるんですね」
レディ・イデアが感情の読めない視線で私を一瞥する。
「よかった。辛くても食べなくてはいけませんよ、姫様。この先何があろうと、食べてさえいれば命が潰える事はありません」
「……っ」
レディ・イデアに悪気はないとわかっている。
彼女もキャタモールに騙されたのだ。それに王太子も国王陛下もあの男に騙されている。
「……うぅ」
「ああ」
私に浴びせられる溜息なんて、私を追い詰めはしない。
レディ・イデア、ごめんなさい。
私はきっと良い生徒にはなれません。
なぜなら、私は……私には…………
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