序・思わぬ収穫?

七月 優

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はじまりはじまり

くすんだ空

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 私たち幼児組は、施設孤児院に缶詰状態ではありません。
 孤児院の敷地内や、外周辺に出て、お散歩することもあるのです。もちろん、大人たちや年上の子どもたちの引率ありきでね。

 異世界といえど、自然風景は、前世とあまり変わりません。
 前世見かけない生物や植物が、当然少しはあります。でも、それだけです。
 あとは、ほとんど似たようなもの。前世で見たことのあるものだって、存在します。
 全く前世とは異なる、奇抜な風景は広がっていません。

 太陽の役割をするものが一つ。
 それらが照らさない時間帯は暗くなり、夜になります。星と月に似たものが、夜空を照らしていました。
 そして夜が明ければ、また光が降り注ぐ朝が来るのです。

 ですので、景観などそこら辺は、さほどカルチャーショックはありませんでした。 

 ただ、私がどうしても変だと思わざるを得ないことが一点。
 それは、空です。
 厳密にいえば、空の色、ですね。
 空だけは、前世と違い、毎日くすんでいます。
 最初は、ずっと曇天気味だからだと思っていました。けれども、晴れの日も、空はくすんでいたのです。毎日毎日、空の遥か上空に、薄暗い膜が覆われているよう。
 多分、季節のせいとか、この場所だからってわけじゃない気がするのです。

 理由は、うまく説明できません。
 でも、嫌な感じがするのです。違和感や奇妙な感覚にも近しいものが、空を眺めていると伝わってくる気がしてなりません。
 この感覚はなんとなく、RPGゲーム中における、ラスボスのいる世界最後らへんとか、戦争中の感じに似ています。
 絶対に何か嫌なことがあることを、演出されているようなもの。

 だからこそ、私は不安に駆られました。
 今のところ、孤児院周辺は平和です。
 ですが、この世界に戦争や争い、厄介事が何もない保障はどこにもありません。
 お願いだから、そういった嫌な問題に巻き込まないでくれと、祈るばかりです。


 冬の寒さ対策の温かな格好で、そんなことを思いながら散歩していました。
 冬なので野草・野花は枯れ気味、木々もすっかり葉を落としてしまっています。
 雀や小鳥たちは丸々として、肥えて見えます。あれ、「温かい空気を羽毛の中に含ませているがために、太って見える説」ありましたけど……事実はどうなんですかね?
 前世冬太りした経験のある身としては、小鳥たちも冬に脂肪を蓄えてしまったと、決めつけたがったものです。

 孤児院の周辺は、民家などの建物がありません。
 やや遠くを見れば、固そうな材質の壁に囲まれた集落らしきものが、やっと視界に入るくらいです。大人の脚で歩いて、ここからそこまで十数分の距離はあるように思えますね。
 その集落は、村や町よりは栄えている感があります。おそらく、あそこで孤児院に必要な物資を購入しているのでしょう。

「リー」
「ん?」

 私に懐いてるあの子が、私の右袖を引っ張ります。
 横を向くと、その子はとある方向の上空を、指さしていました。つられて、私もその方向を見上げます。

 上空を、一羽の鳥が悠然と飛んでいました。
 とんび・鷹・鷲、そういう系の鳥に似ています。
 鳥は、風に乗って、翼を広げたまま、器用にぐるぐると旋回。一応時々は、翼を動かしてますね。

 隣の幼女は目を輝かせて、一心にその鳥を見上げていました。
 前世、私もこんな経験をしたのだなと、懐かしさを感じます。同時に、針で刺すような痛みが、胸をよぎりました。

 もう二度と、かつて自分が育った田舎で経験した自然風景を、見ることは叶いません。
 いつか、記憶に残っている故郷で見た風景も、色あせていってしまうのでしょうか?
 そう思うと、寂寥感が押し寄せてきます。

 あ~、もうやめやめ。浸ってちゃいけませんね。

 くすんだ空だって、鳥は気持ちよさそうに飛翔してます。
 それを見て、いいなと素直に感動できる子がいるのです。
 経緯がどうであれ、孤児院の子どもたちは、前に進んで生きています。
 私もそれを、見習わねばいけないでしょう。

 あ、れ?
 そういえばこの世界、魔法の存在を確認していますが、空って飛べるんでしょうか?
 空を飛んだり、浮遊したりしてる者は、見たことありません。
 でも、魔法があるなら、可能性はゼロじゃないでしょう。
 いつか、もっと言葉を上達できたら、誰かに訊ねてみたいと心に決めました。
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