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第一部
No.3 よくない出会い
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今日は嬉しいことがあった。
それは、こうして久々の休暇をもらえたこと。
なぜなら、明日のお祭りのためにベナサール様ご一家が館に泊まりに来たからだ。婚約者が来たのに、イノセンシオは相手をしないわけにはいかない。
こんなことなら、もうずっと館にいらっしゃってほしい。流石に、彼女が近くにいるときは彼も私と夜を過ごすのを控えている。
城下はもうお祭りで彩られていた。どの家も花や色彩豊かな布を飾り、どの商店街も人でにぎわっている。
「店内全部二十五パーセントオフ! お祭りまでですよー、ぜひいらっしゃってください」
可愛いエプロン姿の女性が、ケーキ屋の前で客引きをしていた。思わず、その店のショーウィンドウをちらりと見る。目に入るのは、見た目もおいしそうな様々なケーキ達。
ふぅ。思わず溜め息をついた。
食べたいとは思うが、流石に一人で店内に入りいくつかのケーキを一人で食べる勇気はない。
買って帰ればいいのだが、帰って一人だけ食べるのも気が引ける。かと言って、皆に買っていくと高くつく。
こういうとき、本当に友達が欲しいと思う。イノセンシオと関係を持ってから、使用人たちも距離を置くようになった。ただでさえ、広い人間関係ではなかったのに、余計に狭くなったというわけだ。ある意味いいとばっちりである。
ここは諦めて、雑貨や服でも見よう。
私がケーキ屋を後にしようとした、まさにそのときだった。
「待ったぞ、妹よ。ほらこっちだ」
突然左肩に手をおかれ、話しかけられた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「お客さん困りますよ、無銭飲食はっ!」
体格のいい、初老の男性が冷たく言った。
「いや、だから、もうすぐ家から誰かが来ますから」
そんな苦しい嘘をつく。
それもこれも、俺から財布をクスね、この場から逃げた仲間のせいである。とはいえ、財布をすられること自体、ホントは空賊としてされるべきでない、かっこ悪いことなのだが・・・・・・。
あー、くそっ。帰ったらタダじゃおかねぇ。
あぁ、このままじゃ本当に食い逃げしねぇといかねぇじゃねぇか。
そう思ったときだった。
隣のケーキ屋のショーウィンドウを見つめる少女が、目に映った。
少し変わった色の肩ほどのストレートの茶髪に、大きな赤目。背は低く小柄で、色白の頬はうっすら桜色をしていた。
服装からして、この国の者のようだ。この国ならではの草花の刺しゅうがところどころ施された、シンプルなワンピースを着ていた。
正直別に誰でもよかったし、彼女が自分が払えない金額ほどの金を持っているか分からなかったが、とりあえずターゲットに決めた。
女を脅すのは気が引けたが、俺はもう
「来たよ、あれ妹」
俺はあいつを指差すと、もうあいつに向かって歩き出していた。
そして、
「待ったぞ、妹よ。ほらこっちだ」
肩に手を置き、引き止めると、俺はそのこの右手を取り歩き出した。
抵抗されるかと思ったが、やけにおとなしい。
急いでいるので表情はよく分からなかったが、おとなしすぎる。
まぁ、いいや。
抵抗されれば、おとなしく言うことを聞かせるだけだ。
とりあえず俺は、さっき食事をした店長が訝しげににらみつける店へ、さっそうと少女を連れて歩いていった。
私たちの
それが、 初めての出会いだった。
俺たちの
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