初恋Returns

初恋Returns １３

　京介のことだからもって半年か。俺は嫌味ではなく心の中でそう予想した。誰とでも仲良く打ち解ける京介は男女ともに友だちが多いし、彼女だって途切れることがない。だけど、なんというか気が多いんだ。彼女のことはもちろん好きなんだろうけど、他の子にだって優しく接する。それは女の子からすると面白くなくて、結局は別れてしまう。

　それでも、別れた女の子に恨みを一切買わないってところは尊敬に値する。

　見習いたくはないけど、コミュニケーション能力の点では京介はまちがいなく満点だ。俺はといえば、家庭の事情もあってイマイチ相手に深く踏み込めない。自分がどう思われるかは気にならないけれど、もし武市を悪く言われるようなことがあれば我慢ができないと思うからだ。そして、大多数の人はヤクザってだけで、よく思わないってことも理解している。

　武市自身も俺に気を使ってくれているのか、あまり人前で並んで歩くようなことはしないし、小学校くらいのときは普通のサラリーマンに見えるからという理由で、来島さんに保護者代わりをさせていたくらいだ。すごく俺のことを大事にしてくれている。

　だからこそ、夕べの強引な運びが理解できなかった。武市はいつだって自信にあふれているけど、俺の意見を無視してことを運んだりすることはないんだ。

　それなのになぜ……。

　俺のことを食いたいからって、つまり武市が俺を抱きたいって意味になるよな。思考が情事の記憶を掘り起こしかけ、俺は慌てて頭を振った。

　クラスの違う京介とは教室の前で別れ、始業ベルに押されるように席に着いた。

　今日は放課後そのままバイトだ。すでに肉体の疲労度が半端ないところが不安だけど、とりあえず居眠りできるところは寝て体力回復に努めよう。成績のほうは自慢じゃないが全く心配のないラインだ。
　
　心持ちだけど、下半身の違和感がマシになってきたような気がした。