初恋Returns

二一

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初恋Returns 17

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「ペネルティ制にするか」

「え?」

「呼び間違い一回につきキス一回。五回で俺のいいなりになること」

 俺の脳内は情けないことにしばらくフリーズしてしまった。キス一回はまぁいい。けど、言いなりってなんだよ。

「とりあえず今の分、キス二回」

「……したじゃん」

 呆然と言い返す俺の頭を軽く叩かれる。

「おまえからに決まってるだろ?」

 俺から? 武市に? キス……!?

 いや、無理だろ!? そんな、昨日まで普通に保護者代わりだった相手にキスとか。

「キスの経験くらいあるだろ?」

「女としかねぇよ!」

「男も女も顔のパーツは一緒だ」

「いや、無理だし!」

 思わず立ち上がって一歩下がった。

「祥真」

 ぎくり。名前を呼ばれただけだ。それなのに俺は動けなくなっている。

 拒否権は、ない。そもそもどうしてこうなったのか、それすら分からないのに。

 俺はぎくしゃくと武市に近づき、ロボットのような動きで唇を寄せた。唇同士が触れる直前、武市がフッと笑ったように見えた。

 一回目。

 唇を合わせるだけでは納得してもらえないってことくらい承知のうえだ。それでも、武市の唇に女の子を重ねるのはさすがに無理がある。こんな情けないキスなんていつぶりだろう。

 ゆっくりと唇を離す。

 二回目。すでに濡れて冷たい武市の唇に、やっぱり濡れた俺の唇を乗せる。おかしな気分だ。俺はなんで武市とキスをしているんだろう。触れる前は有り得ないって思ってたはずなのに、いざ重ねてしまえばそれほどの嫌悪感はない。

 ゆっくりと舌を絡めていると、不意に武市の腕が俺の後頭部を引き寄せた。俺は倒れこむように武市の上に乗せられる。逃げられないように固定されたまま、まるでこうするんだと言わんばかりに、武市の舌が俺の中をかき混ぜていった。

「……んん……」

 こんなの前戯と変わらない。そう思った瞬間、武市の手が制服の襟元を広げた。今時珍しい詰襟は、一番上がホックになっていて、いとも簡単に着脱することができる。

「キレイについてるじゃねぇか」

 俺の首元を広げた武市が喉の奥で笑った。馬鹿な俺はやっぱり一瞬なんのことを言っているのか察することができなくて、武市の骨ばった指先が首筋をつついたところでようやく気づいたんだ。

 詰襟のときは隠れても、バイトの制服では隠れなかったそれ。

「リュウさん! あんたもしかしてわざと……!」

 わざとキスマークをつけたのかと、ここでやっと文句を言うって決意を思い出した。
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