魔法の杖になって、見守ることにしました。

高緋ぴお

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名前をつけることにしました。

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もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ



 ひたすらパンを食べ続ける少女に、エアリアルは呆気にとられると同時に、頬袋の膨らんでいる様がまるでリスの様で、可愛いと思ってしまった。いや、そんなことを思っている場合ではない。

 突然倒れた少女を背負い、なんとかあの異空間から抜けだし、彼女が指をさした先は、パン屋。

「あの~・・・・なんでそんなにお腹が減ってたんですか?」
「....何も食べてないから。」
「...........そりゃそうでしょうよ!そうじゃなくって、なんで何も食べてないのかなって・・・。君にも家族はいるでしょう?まさか、俺と同じく追い出されたとか・・?」

 見た所、彼女の年齢は14、5歳位だ。独り立ちをするにもまだ早い気がするのだが。

「かぞく・・・。そう、あなたにはいるんだね。」

「.....私には、そんなものいるのかもわからない。いたとしても、もうこの世にはいないんだろうね。」

「え?」
 どういうことなのか、エアリエルは理解できなかった。つまり、孤児ということだろうか。
「ごめん、野暮なこと聞いた。許してくれ。」
「ううん。かぞくは大事にしないとダメだよ、エアリアル。」
 
 今までずっと無表情だった少女は、かすかに、微笑んだ。あまりに突然の微笑みと名前呼びに、エアリアルの心臓が高鳴った。

「パンありがとう。それじゃあまたどこかで。」
 唐突に別れを告げ立ち去ろうとする少女の腕を、無意識に掴み、止めていた。
「待ってくれ!」

 呼び止めた自分に驚いた。一体何を言おうか必死に考える。
数秒の沈黙の後、エアリエルから飛び出た言葉は、

「君の名前、つけてあげるよ。」
 
 俺は、お父さんか。自分でつっこみ、大量の冷や汗が流れてきた。

「.....うん、お願い。」
「え・・・?いいのか?」
「.....名前がなくて、不便だったから。」

 確かに、名前がないと不便だよな、この先。ていうか、今までも相当不便だったのではなかろうか。しかしいざ名前を考えるとなると容易には浮かばないものである。どうせなら、自分が名付け親だということがわるような、名前をつけたいが。

「エアール・・。ううん女の子にこれはなあ。アリア・・。ちょっと乙女すぎるか。・・あ。」
「リアラ、はどうだ?」

 エアリアルのリアからとった、その名を提案してみた。

「.....リアラ・・・・。」
「リアラ。いい名前。ありがとう、エアリアル。」

 そして、彼女は満面の笑みを見せ、立ち去ろうとした。
 エアリアルは、その笑顔に目を奪われていたが、早々に立ち去ろうとするリアラを、また呼び止めなければという衝動に駆られた。

「あ、おい!待って!」
「・・・何。」

ちょっと不機嫌な顔になったリアラに、少々引き気味になったが、ここで引く訳にはいかない。

「俺も、ついて行っていいか、な。」
「駄目よ。」

「私に関わっては駄目。」
「だって、私は───。」
「許されない罪を、犯したのだから。」

 悲しげな瞳で、どこか遠くを見つめるリアラは、目の前のエアリアルは映っていないようだった。その瞳の青空は、揺れていた。エアリアルを、認識できない程に。

「許されない、罪・・・?」
 まさか殺人、とか、反逆罪とか。強盗犯とか・・・?さすがに犯罪に手を染めたら今度こそ家族から排除されそうな気がする。

「.....さっきの、転移魔法、みたよね。」
「ああ、あの渦ね。」
「私には、生まれ持った魔力があるの。それも、闇の。」
「!」

闇魔法。それは、他者を不幸にする魔術で、禁術と言われている。一部の上層階級の者しか使ってはいけない。
しかし、それは相当な修行を積まないと獲得できるものではないし、生まれ持ってなんて、聞いたことがない。

「......生まれ持って、かどうかも、わからない。気づいたら、私はこの世界にいたの。」
「......そして、記憶も消えた。大量の死体が、目の前にあったときに。」

「.....私がきっと、殺したの。そうじゃなきゃ、この闇の魔力はなんだっていうの、って。だから、私に関わっては駄目なの。共犯者だと思われてしまう。」

「.....これでわかったでしょう。短い時だったけど、名前をありがとう。さようなら。」

エアリアルは何かを言い返す言葉が見つからず、ただ、リアラが去って行くのを見つめることしかできなかった。



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