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魔法の杖になることにしました。
しおりを挟むリアラと別れたあと、エアリアルは途方に暮れていた。何も言い返すことができなかった自分を情けないと思うと同時に、なんとか彼女を救うことはできないのだろうかと考えた。
エアリアルは、貴族の生まれではあるが、さして突飛な特技も頭脳も持ち合わせてはいない。社交の場でも愛想は振る舞うことはできても、会話の意図を汲み取るのが苦手であった。先日の令嬢との破談でも、自分の不幸体質が仇となり、公衆の面前のダンスで足を踏んづけ、スカートを破ってしまったり。令嬢が他の男の話を持ちかけ、嫉妬してほしいという意図を読めず、いつものスマイルで会話をしたら、泣かれてしまったり。自分には、ことごとく何も才能がないんだということを、ひしひしと感じていた。
それだったら、自分より出来た誰かの役に立って、せめて引き立て役になって死にたい。そう思っていた。
そんなとき、リアラに出会った。彼女は、確実に自分より秀でた才能を持っている。なのになぜ、あんなにも不幸せそうなんだ?食事も満足に摂れてないようだし、今にも死んでしまいそうな、儚く脆い、あの少女を。
────守りたい。────
「お悩みですね。」
「!?」
突然、老婆に声をかけられた。身なり的に、占者だろうか。
「・・・金はないぞ。」
頼むから、貴族の身なりに騙されないでくれ。
「ほっほっほ。金はとりゃあせんです。あんたさんは、あの子の側にいて、役に立ちたい。そう思っているんじゃろうて。」
「!何か、策があるのか?」
「魔法の杖になればよろしい。」
「は・・・?」
なんだ、薬中毒者だったか。
エアリアルは早々に立ち去ろうとした、が。
「あの子は、力の抑制ができておらん。魔法の杖があればそれができおる。じゃが、あの子は一文も持っておらんようじゃの。」
「・・・なるほど。だったら杖をあげれば済む話ではないのかっ!?!?」
「いんや。あの子の力は巨大すぎて、市場に出回りおる杖ではどうにもならんようじゃの。」
「・・・・。」
いや、たとえ彼女が魔法の杖を必要としていたとしても、どうやって魔法の杖になるというのか。人間が魔法の杖になることなど可能なのだろうか。そんな事例があるのだろうか。
「ありますよ、その方法は。」
「何・・・!?」
「あの子と主従の契約を結ぶんじゃよ。もっとも、あの子の同意がなければ契約は成立せぬがな。」
契約。主従の関係を結ぶことで、解除しない限り、絶対服従をする関係。お互いの同意のもと、主が契約呪文を唱え、従僕もそれと同時に唱えることで、契約は成立するが。
「主従の関係を結んで魔法の杖になるだなんて、聞いたことがないぞ。」
「契約呪文を唱えるときに、こう唱えなされ。『我、従僕は魔法の杖となり、主を導くことをここに誓う』とな。ただし、主が同意した後に唱えるのじゃよ。そうでないと、あの子が解除してしまう恐れがあるからの。」
だんだんと信憑性が増してきた。完全に信じた訳ではないが、やってみる価値はありそうだ。
「ありがとう、見知らぬ占者よ。恩にきる。」
「ほっほっほ。同意を得られると良いの。さ、行きなはれ。あの子は今、市場の試食コーナーにおるよって。」
「試食コーナー・・・。」
まだ腹が減っていたのか。
例え、魔法の杖になれたとしても、果たしてあの少女を守ることができるのか、分からない。だが、どうしても放っておけない。エアリアルはまたリアラを見失わないよう、急いで市場に向かうことにした。
エアリアルが店を出た後、占者はつぶやいた。
「どうか、あの子を救ってやってくれ、エアリアル。」
「私では、成し遂げられなかったことを、どうか。」
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