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伯爵への贈り物
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伯爵家の書斎
「旦那様、バザール男爵より婚約祝いの品が届いております」
珍しくセバスが声を掛けてきた、普段なら目録と合わせて書簡箱に入れる程度で済む話だろうに…… バザール男爵?
「また…… やっかいな物なのか?」
セバスは黙って首を縦に振り肯定した。
「奥の部屋に用意しております」
わざわざ別の部屋に用意するほど警戒する品と言う事か。
「行くか」
セバスを連れて用意したと言う部屋へ向かう。
セバスがドアを開けて部屋へと入ると、他には誰も居ない。
部屋の中のテーブルには大小の箱が九つ並んでいた、以前シルクを贈られた時にも使われていた白木の見事な箱だ。
「宜しいですか?」
箱に見入っていると、セバスが開けて良いかと聞いてくる。
頷いて肯定する。
既に毒味含めて一度は見ているのだろうが、何故か手が震えているのがわかる…… あのセバスの手が。
小さい方の箱に手がかかり、スッとフタを開けるセバス。
「おおおお!!」
箱の中には、シルクと思われる布の台座に収まったガラスのグラス、我が屋敷にも王都で購入したワイングラスが僅かにあるが、そんな物とは比較にならない一品が入っていた。
小ぶりではあるが、底の方が広まった丸い形、ワイングラスと比べると短い足が付いているが、その足は見事な赤色……。
「何とも美しい」
時を忘れて魅入ってしまう。
「添えられていた書簡によりますと、セールの町のゴウ作でブランデーグラスとの事。足の部分の赤色には金が使われると書いてございました」
「金!? 金なのに赤なのか? ふむむ…… それにしても見事な造形に色、素晴らしい」
セバスが他の小箱を開けるが、全て同じ様な造形の見事なブランデーグラスが入っていた。
「これだけの物を贈られたら、何を褒美に返したらよいか迷うな」
「……」
「どうした?」
「まだ次がございます」
もしかすると、残りの箱にはもっと厄介なものが?
セバスが少し大き目の箱の方を開けると、そこにはまた見事な造形のボトルに薄い琥珀色の液体が入っていた。
「おおおっ! こちらも素晴らしいではないか」
セバスが三本あるボトルのうち、毒味が済まされているのだろう封の開いた一本を手に取り……。
キュポンッ、とコルクの抜ける音。
グラスの足の隙間に指を滑らせ、手のひらで包むように持ち、ボトルの琥珀色の液体を注ぐ。
「……」
セバスの毒味が終わり、ワシの目の前に差し出す。
グラスを、セバスの真似をして持ち、口元へ運ぶ。
「!」
途端、鼻腔に広がる香り。
スッと一口含むと。
口腔が強い酒精の力と芳醇な香りに包まれた。
喉に流し込む。
酒精の熱が下りながら喉と胃を刺激し喜ばせる。
「ふーっ」
息を吐くと、そこからも強い酒精の力を感じる。胃の底に感じる力の余韻を味わっていると…… いつの間にかグラスの酒は無くなっていた。
「素晴らしい……」
これぞ完成された酒。
「名は…… この酒の名は何と言うのか?」
目録には「ブランデー」と。
「ブランデー……」
「書簡には、樽につけて間もない酒に付きまだ若く、味も馴染んでいないとの事。本来であればあと三年から五年後にも贈らせて欲しいとあります」
「これでまだ若い酒だと!?」
「最後に……」
「最後に、何だ?」
「これらの作り方を教えたいので、若いやる気のある職人を送って欲しいと」
・
・
・
「セバスよ、職人に声を掛けたら何人集まると思う?」
「全員でしょうな」
「だよな……」
「旦那様、バザール男爵より婚約祝いの品が届いております」
珍しくセバスが声を掛けてきた、普段なら目録と合わせて書簡箱に入れる程度で済む話だろうに…… バザール男爵?
「また…… やっかいな物なのか?」
セバスは黙って首を縦に振り肯定した。
「奥の部屋に用意しております」
わざわざ別の部屋に用意するほど警戒する品と言う事か。
「行くか」
セバスを連れて用意したと言う部屋へ向かう。
セバスがドアを開けて部屋へと入ると、他には誰も居ない。
部屋の中のテーブルには大小の箱が九つ並んでいた、以前シルクを贈られた時にも使われていた白木の見事な箱だ。
「宜しいですか?」
箱に見入っていると、セバスが開けて良いかと聞いてくる。
頷いて肯定する。
既に毒味含めて一度は見ているのだろうが、何故か手が震えているのがわかる…… あのセバスの手が。
小さい方の箱に手がかかり、スッとフタを開けるセバス。
「おおおお!!」
箱の中には、シルクと思われる布の台座に収まったガラスのグラス、我が屋敷にも王都で購入したワイングラスが僅かにあるが、そんな物とは比較にならない一品が入っていた。
小ぶりではあるが、底の方が広まった丸い形、ワイングラスと比べると短い足が付いているが、その足は見事な赤色……。
「何とも美しい」
時を忘れて魅入ってしまう。
「添えられていた書簡によりますと、セールの町のゴウ作でブランデーグラスとの事。足の部分の赤色には金が使われると書いてございました」
「金!? 金なのに赤なのか? ふむむ…… それにしても見事な造形に色、素晴らしい」
セバスが他の小箱を開けるが、全て同じ様な造形の見事なブランデーグラスが入っていた。
「これだけの物を贈られたら、何を褒美に返したらよいか迷うな」
「……」
「どうした?」
「まだ次がございます」
もしかすると、残りの箱にはもっと厄介なものが?
セバスが少し大き目の箱の方を開けると、そこにはまた見事な造形のボトルに薄い琥珀色の液体が入っていた。
「おおおっ! こちらも素晴らしいではないか」
セバスが三本あるボトルのうち、毒味が済まされているのだろう封の開いた一本を手に取り……。
キュポンッ、とコルクの抜ける音。
グラスの足の隙間に指を滑らせ、手のひらで包むように持ち、ボトルの琥珀色の液体を注ぐ。
「……」
セバスの毒味が終わり、ワシの目の前に差し出す。
グラスを、セバスの真似をして持ち、口元へ運ぶ。
「!」
途端、鼻腔に広がる香り。
スッと一口含むと。
口腔が強い酒精の力と芳醇な香りに包まれた。
喉に流し込む。
酒精の熱が下りながら喉と胃を刺激し喜ばせる。
「ふーっ」
息を吐くと、そこからも強い酒精の力を感じる。胃の底に感じる力の余韻を味わっていると…… いつの間にかグラスの酒は無くなっていた。
「素晴らしい……」
これぞ完成された酒。
「名は…… この酒の名は何と言うのか?」
目録には「ブランデー」と。
「ブランデー……」
「書簡には、樽につけて間もない酒に付きまだ若く、味も馴染んでいないとの事。本来であればあと三年から五年後にも贈らせて欲しいとあります」
「これでまだ若い酒だと!?」
「最後に……」
「最後に、何だ?」
「これらの作り方を教えたいので、若いやる気のある職人を送って欲しいと」
・
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「セバスよ、職人に声を掛けたら何人集まると思う?」
「全員でしょうな」
「だよな……」
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