夏の幻想

雫喰 B

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4.

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 明智と足立が部屋をチェンジした日の深夜、遠くの方から足音がした様な気がした。
 しかもその音はだんだん近付いて来て遠離とおざかって行くと、廊下の先  ── 突き当たりで消えた。
 
 つまり、廊下の先には階段等無く、行き止まりである。

 部屋の照明を点け、隣のベッドを見ると環奈は頭から肌掛けを被って震えている。

「ちょっと見て来る。」

 言うと同時にパサリと何かが落ちた音がした。

「奏っ!?」

 振り返ると肌掛けをかなぐり捨てる様に起き上がった環奈が青い顔を此方に向けていた。

「大丈夫よ。ドアの隙間からそっと様子を窺うだけだから。」

 彼女を安心させたくて笑顔で言うと、ベッドから下りてドアに近付いてドアノブを掴んでそっと回してドアを少しだけ開けた。

 隙間から廊下を覗き見たが何もない。ならばともう少し開け首を出して周囲を見たが何もなく、ふと視線を感じて其方を見れば隣の部屋から顔を覗かせていた明智と目が合った。

 ドアを開けて部屋から明智が出て来たのを見て私も廊下に出てみた。

「そっちで足音が消えたみたいだ。」

 顎をしゃくって廊下の先 ── 突き当たりを指し示した。

 と、一番端の部屋のドアが開いてその部屋に泊まっていた佐々木と御厨みくりやが顔を出し、私達の姿を見つけると廊下に出て来た。

 すると後ろの方から何人か出て来たみたいだったが、明智は其方を振り返る事もなく突き当たりの壁を手で触っている。

「やっぱり何の仕掛けも無い様だ。」

 両手をはたくようにしながら私達の方へと戻って来た。

「何なんだろうな。」

 その様子を見ていた澤渡が呟いたのだが、彼の腰には半泣きの足立がぶら下がっていた。

 ギョッとして見ていた私達に澤渡が言うには「一人にしないでくれ。置いていかないで。と言うから仕方なく……な。」と気不味そうだった。

「それで引き摺ってきたんだ…。」

 私達とリーダー達の間の部屋に泊まっていた篠原さんと泉さんが呆れた様に見て言った。



 仕方なく、またリーダー達の部屋に集まり話し合ったが、取り敢えずこの洋館での撮影が終わるまでは我慢するという最初に決めた方針から変更される事はなかった。

「この洋館での撮影をとっとと終わらせよう。その上でイケおじのフロントマネージャーに言えばいいだろう。」

 そう言うリーダーの後ろで足立が泣きながら何やらブツブツと文句を言っていたが澤渡も明智も耳を貸さず、「足音以外何も無いんだから我慢しろ。」と佐々木や御厨に言われていた。
 
 新入生でサークルに入った生徒が居なかったので今回の撮影に掛ける意気込みが違うのだろうが、何だか気の毒ではある。

 が、説得されて残るあたり如何どうかとは思うが……。



 朝、目が覚めたものの皆寝不足の様で黙々と朝食を食べ終わり、部屋に戻ると撮影の用意をして玄関ホールに集合した。

 撮影の用意と言っても各自シナリオとスマホを持参しただけなのだが。

 所謂いわゆるモキュメンタリーでの撮影なので仕方ない。

 因みに、駅に降り立った所からこの洋館までの撮影は済ませていたので、この洋館に入る所からの撮影になる。

 イケおじ執事にもご協力願うと快く引き受けて下さった。(お願いした時に赤面して照れていたのが可愛かった。)

 最初に此処を訪れた時を再現して、建物の裏側等も撮影して、いよいよドアノッカーを叩いて館内に居るドアマンが大きな扉を左右に開く。

「当館へようこそ。」

 イケおじ執事が胸に手を当て礼をする。

「カット~!」

 リーダーの声でそのシーンの撮影が終わった。

 続けて部屋まで案内されるシーンも撮影する。

 後は食事風景も撮影させて貰えた。

 その日の洋館内の撮影はそこまでにして、明日は迎え盆という事で午後からは墓地付近の撮影をする事にした。

 とは言っても、墓地での撮影は地元の住民達が居ない時に撮影する予定ではある。

 祖父母の墓がある奏は墓参りのついでに確かめたい事があった。

 それは、祖父母が亡くなった年からずっと疑問に思い心に引っ掛かっていた事だった。

~~~~~~~

*いつもお付き合い(お読み)いただきありがとうございます!

*投票して下さった方々本当にありがとうございます!!
 
*お気に入り、しおり、エールやいいね等もありがとうございます!

 では、また次話でおあいしましょう!
 (*・ω・人・ω・)
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