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「奏のお祖父ちゃんとお祖母ちゃんのお墓があるって言ってたよね。」
昼食を食べていた時、隣に座っていた環奈が話し掛けてきた。
「うん。だけど今まで私だけ墓参りに来た事無かったんだ。何故だか分からないけど……。」
「じゃあ、今回此処に来たのはそれもあるんだ。」
「そう。両親も此処まで墓参りに来るのが(距離的に)大変らしくて……。だからサークル仲間と旅行に行くなら序でにお願いって言われちゃって。」
「ふ~ん。そうなんだ。距離的に遠いと大変だよね。」
「それもあるけど、お盆の風習(?)って言うのかな、それがちょっと大変と言うか……。まぁ、祖父母の家はもう誰も住んでないから簡略化されたやり方でいいらしいんだけど…。」
「ど、どんな風習?やり方は?」
各地に伝わる伝承や風習が好きな明智が食い気味に聞いてきた。
げっ、マジか!?
明智はこの手の話になると長くなる。如何しようかと思った所で救いの声が。
「そろそろ午後の撮影準備するぞ~。」
「ちっ、仕方ないな。奏、今の話後で聞くから。」
やっぱりそう来るかー。
撮影が終わった後の事を考えると気が重くなった。下手をすれば夕食後もその話をさせられそうだ。
やれやれ┓( ̄∇ ̄;)┏
スマホで周囲を撮影しながら墓地までの道をワイワイガヤガヤと進む。
撮影は、その方面に詳しい(らしい)明智と御厨が担当している。
因みに、シナリオと脚本は私と明智で、明智は演出も担当している。
(総)監督は言わずと知れた澤渡だ。
環奈を主演に動画撮影をしている、その撮影風景をドキュメンタリー的に撮り進めているといった感じのモキュメンタリー動画である。(ややこしいな)
そんな事より真夏の炎天下、流石に地元の人達も外を歩いてはいなかった。
都会に比べれば涼しいとは言っても夏は夏、暑いのは当たり前である。しかも午後2時~3時って一番気温が高い時間帯じゃなかったっけ。
側を流れる小川の水は澄んでいて川底が見えている。
川藻がゆらゆらする小川の中をメダカが泳ぎ、川縁をイトトンボが飛び、オハグロトンボ(正式名称は知らないがそういう名前のトンボだと教えられた。)が蝶の様にひらひらと飛んでいる。
そして小川の向こう側は田んぼが広がり、青々とした稲はまるで絨毯の様だった。
墓地へと続く道に入る手前にある家の前庭は家庭菜園というよりは野菜畑といった感じで、その中の一区画のスイカ畑に一人の女の子がしゃがみ込んでいた。
私達に気付いたのか立ち上がり、少し首を傾げて此方を見ていたが、身を翻して駆け出すと家の中に入って行った。
ほんの一瞬の出来事だったけど何故か既視感というか懐かしさを感じた。
「美味しそう……。」
隣にいた環奈がスイカに視線を固定したまま呟く。
確かに……。
炎天下の中歩き続けて喉が渇いていた所為か、丸々としたスイカはとても美味しそうで思わず唾を飲み込んだ。
見ると、他のメンバーも物欲しげにスイカを見ている。
「ぷふっ。」
何故かその様子が可笑しくて笑ってしまった。
「取り敢えず、先を急ぐぞ~。」
「「へぇ~い。」」
「「「「は~い。」」」」
「「「ふぉ~い。」」」
口々に返事をして再び歩き出したのだった。
墓地はこの集落の近くにある山 ─── (と言っても、標高五百メートルぐらいだと思われる) の中腹辺りから麓付近までの場所にある。
中腹辺りにある墓が(初期につくられた)一番古い墓で、麓に行くにしたがって新しい墓になる。
故に、古くからこの地に住んでいる人達は、中腹辺りから墓参りする事になるのだ。
そして、サークル活動の序でに(序でではないのだが)墓参りに来た私は墓掃除をする。
家の墓周辺を撮影するので皆して墓掃除を手伝ってくれた。
有難い事である。
そして、周辺に生えている柃や樒、野菊を束ねて供えると線香に火を付け、最期に持ってきていたペットボトルの水を墓石の上から少しずつ掛けた後、皆で手を合わせた。
(因みに、現在は花屋等で調達したりするが、周辺に生えている柃や樒等は墓参りやお参りでお供えできるように昔に植えられた物である。)
取り敢えず、墓掃除も終わり墓地周辺の撮影が終わるのを考え事をしながら待っていた。
今回、ここへ来た目的の一つである墓掃除&墓参りが終わったものの、墓地でのもう一つの目的は達成できていない。
いや、達成できていない訳ではない。墓掃除をした時に確認はしたのだ。
けれど、一番新しい墓石に目的のその名は無かった。
一番新しく刻まれた名は祖父母の名だけだった。
※モキュメンタリーとは
過去に一世風靡した『パラノーマルアクティビティー』という映画で使われたドキュメンタリーのように作られている(映像の)事です。
~~~~~~~
*いつもお付き合い(お読み)いただきありがとうございます!
*投票して下さった方々本当にありがとうございます!!
*お気に入り、しおり、エールやいいね等もありがとうございます!
では、また次話でおあいしましょう!
(*・ω・人・ω・)
昼食を食べていた時、隣に座っていた環奈が話し掛けてきた。
「うん。だけど今まで私だけ墓参りに来た事無かったんだ。何故だか分からないけど……。」
「じゃあ、今回此処に来たのはそれもあるんだ。」
「そう。両親も此処まで墓参りに来るのが(距離的に)大変らしくて……。だからサークル仲間と旅行に行くなら序でにお願いって言われちゃって。」
「ふ~ん。そうなんだ。距離的に遠いと大変だよね。」
「それもあるけど、お盆の風習(?)って言うのかな、それがちょっと大変と言うか……。まぁ、祖父母の家はもう誰も住んでないから簡略化されたやり方でいいらしいんだけど…。」
「ど、どんな風習?やり方は?」
各地に伝わる伝承や風習が好きな明智が食い気味に聞いてきた。
げっ、マジか!?
明智はこの手の話になると長くなる。如何しようかと思った所で救いの声が。
「そろそろ午後の撮影準備するぞ~。」
「ちっ、仕方ないな。奏、今の話後で聞くから。」
やっぱりそう来るかー。
撮影が終わった後の事を考えると気が重くなった。下手をすれば夕食後もその話をさせられそうだ。
やれやれ┓( ̄∇ ̄;)┏
スマホで周囲を撮影しながら墓地までの道をワイワイガヤガヤと進む。
撮影は、その方面に詳しい(らしい)明智と御厨が担当している。
因みに、シナリオと脚本は私と明智で、明智は演出も担当している。
(総)監督は言わずと知れた澤渡だ。
環奈を主演に動画撮影をしている、その撮影風景をドキュメンタリー的に撮り進めているといった感じのモキュメンタリー動画である。(ややこしいな)
そんな事より真夏の炎天下、流石に地元の人達も外を歩いてはいなかった。
都会に比べれば涼しいとは言っても夏は夏、暑いのは当たり前である。しかも午後2時~3時って一番気温が高い時間帯じゃなかったっけ。
側を流れる小川の水は澄んでいて川底が見えている。
川藻がゆらゆらする小川の中をメダカが泳ぎ、川縁をイトトンボが飛び、オハグロトンボ(正式名称は知らないがそういう名前のトンボだと教えられた。)が蝶の様にひらひらと飛んでいる。
そして小川の向こう側は田んぼが広がり、青々とした稲はまるで絨毯の様だった。
墓地へと続く道に入る手前にある家の前庭は家庭菜園というよりは野菜畑といった感じで、その中の一区画のスイカ畑に一人の女の子がしゃがみ込んでいた。
私達に気付いたのか立ち上がり、少し首を傾げて此方を見ていたが、身を翻して駆け出すと家の中に入って行った。
ほんの一瞬の出来事だったけど何故か既視感というか懐かしさを感じた。
「美味しそう……。」
隣にいた環奈がスイカに視線を固定したまま呟く。
確かに……。
炎天下の中歩き続けて喉が渇いていた所為か、丸々としたスイカはとても美味しそうで思わず唾を飲み込んだ。
見ると、他のメンバーも物欲しげにスイカを見ている。
「ぷふっ。」
何故かその様子が可笑しくて笑ってしまった。
「取り敢えず、先を急ぐぞ~。」
「「へぇ~い。」」
「「「「は~い。」」」」
「「「ふぉ~い。」」」
口々に返事をして再び歩き出したのだった。
墓地はこの集落の近くにある山 ─── (と言っても、標高五百メートルぐらいだと思われる) の中腹辺りから麓付近までの場所にある。
中腹辺りにある墓が(初期につくられた)一番古い墓で、麓に行くにしたがって新しい墓になる。
故に、古くからこの地に住んでいる人達は、中腹辺りから墓参りする事になるのだ。
そして、サークル活動の序でに(序でではないのだが)墓参りに来た私は墓掃除をする。
家の墓周辺を撮影するので皆して墓掃除を手伝ってくれた。
有難い事である。
そして、周辺に生えている柃や樒、野菊を束ねて供えると線香に火を付け、最期に持ってきていたペットボトルの水を墓石の上から少しずつ掛けた後、皆で手を合わせた。
(因みに、現在は花屋等で調達したりするが、周辺に生えている柃や樒等は墓参りやお参りでお供えできるように昔に植えられた物である。)
取り敢えず、墓掃除も終わり墓地周辺の撮影が終わるのを考え事をしながら待っていた。
今回、ここへ来た目的の一つである墓掃除&墓参りが終わったものの、墓地でのもう一つの目的は達成できていない。
いや、達成できていない訳ではない。墓掃除をした時に確認はしたのだ。
けれど、一番新しい墓石に目的のその名は無かった。
一番新しく刻まれた名は祖父母の名だけだった。
※モキュメンタリーとは
過去に一世風靡した『パラノーマルアクティビティー』という映画で使われたドキュメンタリーのように作られている(映像の)事です。
~~~~~~~
*いつもお付き合い(お読み)いただきありがとうございます!
*投票して下さった方々本当にありがとうございます!!
*お気に入り、しおり、エールやいいね等もありがとうございます!
では、また次話でおあいしましょう!
(*・ω・人・ω・)
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