27 / 29
26.
しおりを挟む
*ここからは駆け足になる(誤字・脱字も増えるかもしれない)と思いますがよろしくお願いします。
~~~~~~~
円珠君とお父さんに会って話すのは明日なので、洋館に着いた日はゆっくりする事にした。
皆、色々と思う所はあるようだが、特に私の場合は夢の事もあり複雑な気持ちだった。(勿論、まだ誰にも話していない。)
花絵ちゃんとその家族の場合、この世に居ない可能性が高い為、円珠君達の方を先に確認する事にしたのだ。
そして当日 ───
私達はとても緊張していた。
何故ならば、全くの別人が現れたらどうしようと思っていたから。
だが、そんな私達の不安など杞憂だった。
目の前に現れた二人は、あの夏の日に見た姿そのままだったからだ。
いや、円珠君は少し背が伸びたように思えた。
照れたようにはにかみながら「あの時はごめんなさい。」と言うその姿は子供らしくて可愛いかった。
円珠君のお父さんも「本当にあの時は申し訳なく…。」と言ったが、私や環奈は口々に「いや、もう済んだ事ですし…。」「気にしないで…。」と答えた。
澤渡*「円珠君のお父さんも、もういいですよ。あの悪戯っ子が会うなり殊勝にごめんなさいと言えるのだから本当に反省したんでしょう。そうだろう円珠君。」
澤渡に言われて頷く円珠君。
その後は少し他愛の無い話をした。
暫くして、円珠君をイケおじにお願いして、彼にはティーラウンジで待っているお母さんと妹の所で一緒に待っていて貰う事にした。
そして、いよいよ本題である。
澤渡が真剣な表情になったのを見て円珠君のお父さんが緊張したのがわかった。
明智*「これを見ていただきたいのですが……。」
明智が見せたのは上映会で流した動画の問題の部分。勿論円珠君の顔がわからないようにモザイクが掛けられている。
円珠君のお父さん*「………。」
その画像を見て円珠君のお父さんの顔色が悪くなり、手で口を押さえている。
誰だって映像の中だけとはいえ、自分の子供の陰が無いなんて嫌な気分にしかならないだろう。
申し訳ないが、他から耳に入る前にこちらから話をしたかったのだ。
あと、この映像の流出だけは無いという事も伝えたかった。
でないと、学祭の上映会の為の動画だからと、『誰かわからないように円珠君の顔にモザイクを掛ける事』を条件に映像を使わせて貰った事に対する責任を果たしたとは言えない。
現にあの後、Web上の何処にもあの映像は出回っていない。
(澤渡を筆頭にサークルの男メンバーがこれまでサーチしてくれていたらしい。)
つくづく澤渡がその辺りの危機管理に優れた奴で良かったと思う。
それを聞いて円珠君のお父さんは少し安心したようだった。
円珠君やその家族の周りで、今のところガチ勢や野次馬らしき人間が彷徨くとか、おかしな現象が起こる等、何も無いという。
この先も用心するに越したことは無いと、何かあれば連絡して欲しいと伝えて円珠君達とは別れた。
「さようなら。」と言った後、名残惜しそうに何度も振り返る彼の姿に涙を誘われた。
奏&環奈*「「あ~あ、あんな弟が欲しかったな~。」」
二人して顔を見合わせて笑い合った。
また会う事があるのだろうか?
先の事はわからない。でも生きてさえいればいつか会う事があるのかもしれない。
円珠君はどんな大人になるんだろう。
お父さんもイケメンだから円珠君もイケメンになるんだろうな。
それでモテモテになったりとか…?
そう考えたら何だか楽しく思えた。
次の日、気が重かったが花絵ちゃんの家だと思われる家まで行く事に…。
いつもお喋りな環奈の口数が極端に少ない。
おまけにお調子者というか、チタンより軽いノリの明智が気味の悪いくらい静かだ。
そうして辿り着いたのは、墓地へと向かう道の入り口にある家だ。
夏の時と変わらず、家庭菜園というよりも野菜畑といった感じの前庭を横目に玄関まで4人で歩いた。
玄関前で4人が顔を見合わせる。
『誰が呼び鈴を押すんだ?』
恐らく他の3人も同じ事を思っていると思う。
3人で澤渡を見た。
「へっ?」
俺?といった感じで自分を指差す澤渡に3人で首を縦にコクコクと振る。
彼は、肩を落とし大きく息を吐き出した後に呼び鈴を鳴らした。
「は~い。どなた?」
暫くしてインターホン越しに聞こえた声は思ったよりも若い声だった。
澤渡*「すみません。ちょっとお伺いしたい事がありまして…。」
彼がそこまで言うと
「少しお待ち下さいね。」
と応答があった。
ガチャッ
開けられた扉から出てきた人は、矢張りというか花絵ちゃんの母親とは違う顔をした人だった。
明智がコートのポケットから写真を取り出してその人に見せて尋ねた。
明智*「実は、お盆に墓参りに来た時にお世話になったご家族を探してまして…。この近所にお住まいではありませんか?」
写真を手に取って見た後、
「いや、見た事も無いし、ご近所でも見掛けた事は無いですよ。お墓参りでここに来られただけじゃ…。」
明智*「そう…ですか。お騒がせして申し訳ありません。ありがとうございました。」
明智がそう言って、4人で頭を下げて洋館へと帰って行った。
環奈*「結局…誰だったんだろうね。
」
「「「………。」」」
その問いに答えられる者は居なかった。勿論私もそうだった。
花絵ちゃんが誰だったのか、生きているのか死んでいるのか、それすらわからないまま重い足取りで、皆黙って洋館までの道のりを歩いた。
黙りこくって何も言わない私を明智が心配そうに見ていたなんてその時の私は知らなかった。
~~~~~~
*いつもお付き合い(お読み)いただきありがとうございます!
(ラストに向かって猛ダッシュ!!)
*投票して下さった方々本当にありがとうございます!!
*お気に入り、しおり、エールやいいね等もありがとうございます!
~~~~~~~
円珠君とお父さんに会って話すのは明日なので、洋館に着いた日はゆっくりする事にした。
皆、色々と思う所はあるようだが、特に私の場合は夢の事もあり複雑な気持ちだった。(勿論、まだ誰にも話していない。)
花絵ちゃんとその家族の場合、この世に居ない可能性が高い為、円珠君達の方を先に確認する事にしたのだ。
そして当日 ───
私達はとても緊張していた。
何故ならば、全くの別人が現れたらどうしようと思っていたから。
だが、そんな私達の不安など杞憂だった。
目の前に現れた二人は、あの夏の日に見た姿そのままだったからだ。
いや、円珠君は少し背が伸びたように思えた。
照れたようにはにかみながら「あの時はごめんなさい。」と言うその姿は子供らしくて可愛いかった。
円珠君のお父さんも「本当にあの時は申し訳なく…。」と言ったが、私や環奈は口々に「いや、もう済んだ事ですし…。」「気にしないで…。」と答えた。
澤渡*「円珠君のお父さんも、もういいですよ。あの悪戯っ子が会うなり殊勝にごめんなさいと言えるのだから本当に反省したんでしょう。そうだろう円珠君。」
澤渡に言われて頷く円珠君。
その後は少し他愛の無い話をした。
暫くして、円珠君をイケおじにお願いして、彼にはティーラウンジで待っているお母さんと妹の所で一緒に待っていて貰う事にした。
そして、いよいよ本題である。
澤渡が真剣な表情になったのを見て円珠君のお父さんが緊張したのがわかった。
明智*「これを見ていただきたいのですが……。」
明智が見せたのは上映会で流した動画の問題の部分。勿論円珠君の顔がわからないようにモザイクが掛けられている。
円珠君のお父さん*「………。」
その画像を見て円珠君のお父さんの顔色が悪くなり、手で口を押さえている。
誰だって映像の中だけとはいえ、自分の子供の陰が無いなんて嫌な気分にしかならないだろう。
申し訳ないが、他から耳に入る前にこちらから話をしたかったのだ。
あと、この映像の流出だけは無いという事も伝えたかった。
でないと、学祭の上映会の為の動画だからと、『誰かわからないように円珠君の顔にモザイクを掛ける事』を条件に映像を使わせて貰った事に対する責任を果たしたとは言えない。
現にあの後、Web上の何処にもあの映像は出回っていない。
(澤渡を筆頭にサークルの男メンバーがこれまでサーチしてくれていたらしい。)
つくづく澤渡がその辺りの危機管理に優れた奴で良かったと思う。
それを聞いて円珠君のお父さんは少し安心したようだった。
円珠君やその家族の周りで、今のところガチ勢や野次馬らしき人間が彷徨くとか、おかしな現象が起こる等、何も無いという。
この先も用心するに越したことは無いと、何かあれば連絡して欲しいと伝えて円珠君達とは別れた。
「さようなら。」と言った後、名残惜しそうに何度も振り返る彼の姿に涙を誘われた。
奏&環奈*「「あ~あ、あんな弟が欲しかったな~。」」
二人して顔を見合わせて笑い合った。
また会う事があるのだろうか?
先の事はわからない。でも生きてさえいればいつか会う事があるのかもしれない。
円珠君はどんな大人になるんだろう。
お父さんもイケメンだから円珠君もイケメンになるんだろうな。
それでモテモテになったりとか…?
そう考えたら何だか楽しく思えた。
次の日、気が重かったが花絵ちゃんの家だと思われる家まで行く事に…。
いつもお喋りな環奈の口数が極端に少ない。
おまけにお調子者というか、チタンより軽いノリの明智が気味の悪いくらい静かだ。
そうして辿り着いたのは、墓地へと向かう道の入り口にある家だ。
夏の時と変わらず、家庭菜園というよりも野菜畑といった感じの前庭を横目に玄関まで4人で歩いた。
玄関前で4人が顔を見合わせる。
『誰が呼び鈴を押すんだ?』
恐らく他の3人も同じ事を思っていると思う。
3人で澤渡を見た。
「へっ?」
俺?といった感じで自分を指差す澤渡に3人で首を縦にコクコクと振る。
彼は、肩を落とし大きく息を吐き出した後に呼び鈴を鳴らした。
「は~い。どなた?」
暫くしてインターホン越しに聞こえた声は思ったよりも若い声だった。
澤渡*「すみません。ちょっとお伺いしたい事がありまして…。」
彼がそこまで言うと
「少しお待ち下さいね。」
と応答があった。
ガチャッ
開けられた扉から出てきた人は、矢張りというか花絵ちゃんの母親とは違う顔をした人だった。
明智がコートのポケットから写真を取り出してその人に見せて尋ねた。
明智*「実は、お盆に墓参りに来た時にお世話になったご家族を探してまして…。この近所にお住まいではありませんか?」
写真を手に取って見た後、
「いや、見た事も無いし、ご近所でも見掛けた事は無いですよ。お墓参りでここに来られただけじゃ…。」
明智*「そう…ですか。お騒がせして申し訳ありません。ありがとうございました。」
明智がそう言って、4人で頭を下げて洋館へと帰って行った。
環奈*「結局…誰だったんだろうね。
」
「「「………。」」」
その問いに答えられる者は居なかった。勿論私もそうだった。
花絵ちゃんが誰だったのか、生きているのか死んでいるのか、それすらわからないまま重い足取りで、皆黙って洋館までの道のりを歩いた。
黙りこくって何も言わない私を明智が心配そうに見ていたなんてその時の私は知らなかった。
~~~~~~
*いつもお付き合い(お読み)いただきありがとうございます!
(ラストに向かって猛ダッシュ!!)
*投票して下さった方々本当にありがとうございます!!
*お気に入り、しおり、エールやいいね等もありがとうございます!
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる