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18.ラフレシア・カーバイト②
*今話もセンシティブな内容となっております。
(ダーク&シリアスな鬱展開の話です。)
*精神面に不安を抱えた方、不安定な方は読まない方がいいかもしれません。
あと、苦手な方も。
上記に思い当たる方は全力で回避して下さい。
読まれる方は自己責任でお願いします。
~~~~~~~~~~~~~
ライアン様に絡んでも、婚約者のウェルナー様から何のリアクションも返ってこなくなったばかりか彼との婚約を解消されてしまった。
何度も手紙を書き、何度も会いに行ったりもしたけど返事も来ないし、二度と会いたくないと言っているからもう来ないでくれ。迷惑だ。と伝えるように命じられていると執事から告げられた。
何で?何でなの?
私はただ普通の恋人同士みたいに、手を繫いだり、甘い言葉を囁いてキスして欲しかっただけなのに。
婚約者にそれを求めるのはそんなにいけない事なの?
全然手も握ってくれないし、好きとも愛してるとも言ってくれないから、私なりに考えて行動しただけじゃないの。
なのに婚約解消されるなんて…二度と会いたくないなんて…。
どうしたらいいの?
こんなに好きなのに。会いたくて仕方ないのに…。
どうやって家に帰ったか分からなかった。
気づいたら自分の部屋だった。
ベッドに倒れ込み、頭からシーツを被った。
両親や妹が心配してドアをノックするけど
「もう放っといて!一人にしてよ!」
そう言って部屋に引き籠もって誰とも会わずにいた。
けど、どれだけ悲しくてもお腹は空く。
部屋の前に置かれた食事をこっそり室内に運び食べた。
でも、食べているうちに情け無くなってくる。
悲しいのにまだ食べられる自分に自分で情け無くなりがっかりする。
本当は、ウェルナー様に婚約解消されて悲しくなんてないんだろうか?
会いたいのに会えなくて胸が痛んでいないんだろうか?
だからお腹も空くし、食事も食べる事ができるんじゃないんだろうか?
私は傷ついたフリをしているだけなの?
本当は胸が痛くなんてないの?
そう思い、自分で自分を責めてしまう。
その繰り返しばかりだった。
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△
あれから何日経ったのか分からない。
その日は学園を休んだのか休みなのか分からないけど、妹がしつこくドアをノックしてくる。
いつものように
「放っておいて!一人にして!」
と言った。
何度目だろうか、業を煮やした妹が使用人に扉を開けさせて入って来た。
「お姉様、このままでいいの!今日はウェルナー様の結婚式なのよ!結婚しちゃったら、もうお姉様のウェルナー様じゃなくなっちゃうのよ!あんな女に取られたままでいいの!」
泣きながら叫ぶように言うアマリリス。
いつも私を心配して、悩んでいる時も一緒に悩んで、どうしたらいいか一緒に考えてくれる。
そうね。そうよね。
取られたままでなんていられないわよね。
飛び起きて湯浴みを済ませ、大急ぎで支度すると、妹に教えてもらった教会まで馬車を急がせた。
教会に着くなり新郎の控え室に向かった。
彼の従僕や結婚式の参加者らしき人達に入り口で止められたけど、私はウェルナー様の名を呼び続けた。
扉を開けて出て来た彼は、もう私の知っている彼じゃなかった。
冷たい、いえ、凍えてしまいそうな目で私を見ると言った。
「僕達の婚約はとっくに解消されてるんだよ。二度と会いたくないって言った筈だよね。帰ってくれないか。」
「…ぇ…、ウ、ウェル…。」
彼の口から出た言葉が信じられなくて、彼に何か言おうとした私に対して
「迷惑だから、とっとと放り出してくれ。」
蔑むように見た後、周囲にいた人達に彼が言った。
「ち、ちょっ…まっ…?!」
彼に何か言う事すら許されず、両脇を抱えられ引き摺られて行き、裏口から放り出された。
地面に倒れ込む私の後ろで扉が閉められ、鍵を掛ける音がした。
ショックだった。
ノロノロと起き上がり、馬車のある所までトボトボ歩く。
周りで見ていた人達がヒソヒソ話をしてり、クスクス笑っていた。
惨めだった。
馭者が私に気づいて駆け寄って来ると、
「お嬢様、もう諦めて帰りましょう。」
そう言って私を馬車に乗せた。
帰りの馬車の中でずっと泣いていた。
あんなに優しかったのに、まるで知らない人のようだった。
あんな冷たい目で見られるなんて思わなかった。
心が痛くて悲しくて泣いた。
家に着いて馬車から降りようとした時に、膝や肘が痛い事に気づいた。
見ると擦り傷だらけで、放り出された時にできた傷だった。
それを見て、余計惨めになり、もう彼とは結婚できないのだと身に染みて分かって更に悲しくなり涙が後から後から溢れてくる。
心配して迎えに出てきていた両親と妹が体を支えてくれて家の中に入った。
慰めてくれた両親や妹に心配しないでと笑って言ったけど、部屋に入った後悲しくて辛くてこの先もずっとその状態が続くなら生きているのが嫌になった私は、以前眠れなかった時に医者から処方されていた睡眠薬を全部口に入れると部屋に隠していたブランデーで流し込んだ。
『もう、このまま眠りたい。目覚めなくたっていい。』
眠気に誘われるままそう思った私の意識は深く深く沈んでいき、その後の事は何も覚えていない。
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△
目覚めなくたっていい。
そう思っていたのに目覚めてしまった私は絶望した。
何で目覚めてしまったの?
喉から胃にかけて何とも言えない気持ち悪さと、喉にある異物感というか違和感。
そして頭痛が酷い。
扉をノックした後、部屋に入って来た侍女が
「お、お嬢様!良かった、目が覚めたのですね。旦那様と奥様をお呼びしてきます。」
そう言って部屋から出て行った。
暫くして、バタバタと人が慌ただしく動いているような音がしたかと思うと部屋の扉が開き、両親と白衣を着た医者が傍まで来た。
良かった良かったと涙し抱き合う両親と妹。
医者の診察と問診を受け、
「もう大丈夫でしょう。ですが、暫くは目を離さないように。」
両親にそう言って医者は帰って行った。
「…ごめんなさい。」
心配をかけてしまった両親や妹、皆に謝った。
「もう、死ぬなんて考えるんじゃないよ。」
「そうよ、あなたが死んだら悲しすぎるわ。」
そう言って涙を流す両親に申し訳ない思いでいっぱいだった。
「けど…婚約解消されてしまって…もうこんな私に結婚を申し込む人なんて…。
このまま生きていても結婚なんてできない。
できたとしても、とんでもなく年の離れたおじいさんとか、変な性癖の人かもしれないと思うと生きていてもしょうがないんじゃないかと悲しくなる。」
そう言ったら、
「そんな事はない。……そうだ、南の辺境伯、あそこの嫡男がお前に一目惚れして婚約を申し込んできた事もあったし…。」
とお父様が言った。
南の辺境伯……?嫡男?
それってもしかして……。
「ライアン様の事?でも彼には婚約者が……。」
「ああ。だが、一足違いでウェルナー様と婚約したと伝えた時のあのがっかりした顔は、本気でお前に一目惚れしてたと思うぞ。だから婚約者よりラフレシアの方が好きなんだと思うぞ。」
「本当に?」
それが本当なら嬉しいのに。
一度、彼が婚約者の事を友人達と話しているのを見た事があった。
その時の友人達から揶揄われて、照れたように口元を緩めたライアン様を思い出して羨ましく思った。
私もあんな風に愛されたいと。
そして、狡いと思った。優秀な一族として生まれた彼女がライアン様から大切にされている事が。
ウェルナー様から一目惚れで婚約を申し込まれたにも拘わらず婚約解消され、疎まれた私。
ウェルナー様と同じ理由、一目惚れで婚約を申し込んできていたライアン様は、婚約者を大切にしている。
ライアン様の婚約者が羨ましくて、妬ましくて憎らしい。
どちらも私に婚約を申し込んできていたのに……。
選び間違えたのね。
あの時、間違った方を選んだからこんな事になったのよ。
私が選ぶべきはライアン様だったのよ。
きっとそうだわ。絶対そうに違い無い。
私とライアン様が結ばれる事こそ正しいのよ!
~~~~~~~~~~~~~~
*いつもお読みいただきありがとうございます。
*お気に入り、しおり、エール等、本当にありがとうございます。
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