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26.被害状況
しおりを挟む*いつもお読みいただきありがとうございます。
いきなり冒頭から暴力シーンがあります。
苦手な方は全力で回避願います。
読まれる方は自己責任でお願いします。
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「こ…の…痴れ者が!!」
「ヒッ!!」
怒鳴り声と共に俺の体は吹っ飛んだ。
「…。」
口の中で鉄錆のような味がする。
口の中が切れたのだろう。
起き上がり口元を手の甲で拭うと血が付いていた。
「貴様は、あの娼婦の如き女子を戦場に連れて行ったのか!!」
「……。」
「…。」
ラフレシアは青い顔をしてガタガタ震え、それ以上進む事もできず、固唾を飲んで事の成り行きを見ていた。
「何か申し開きする事でもあるのか?」
「…いえ、御座いません。全ては私の至らなさから起こった事です。」
憤怒の表情で睨んでいるのは、セドリック・ガーネット南部辺境伯、俺の父である。
王都で開かれた【魔獣騒動緊急対策会議】に出席していた父が、今回の合同訓練に参加する為に領地に戻るのは、本来の予定では明日の筈であった。
恐らく、領邸に寄らずに王都から直接ここまで来たのだろう。
そして、それは父の後ろにいるオルカリオン・カーネリアン北部辺境伯であるニアの父も王都で開かれた会議に出席していた事から同じ理由でこの場にいると思われる。
そう、“魔獣に遭遇し、戦闘に突入した”という第一報を受け、会議の終了と共に駆け付けたのだ。
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△
── 時は少し遡る ──
あの後、撤退した部隊は、魔獣達が森から出て来た場合、斃す又は追い返す為に森の入り口前で待機していた。
近隣の砦から駆け付けた小隊を纏めた部隊が現在その任務に就いている。
怪我人は後方へ移送され、それぞれ町の病院や村の診療所へと搬送されている。
全部隊が撤退した今、森の中の様子は不明である。
そして、未だ生死の確認が取れていない行方不明者も多数いる。
既に日は落ち、魔獣がいる森の中へ捜索隊を送る事もできず、明日の日の出と共に捜索隊が森の中に入る予定である。
そして今、最後に森から出て来たモーリス卿に詳細を聞いている所へ、リカルド・フローライト(東部)辺境伯とアレクサンデル・カーネリアン(北部)辺境伯令息が部隊を率いて駆け付け、それに同席していた。
士官・下士官達の中で生死及び行方不明の者は、北部辺境騎士団所属のハロルド・カーネリアン伯爵令息、カレドニア・カーネリアン辺境伯令嬢、東部辺境騎士団所属のシトリン・カーライル男爵の三人、騎士達の中で生死及び行方不明の者は七名、死亡が確認されている者は十九名、負傷者は二十六名という実に半数近い犠牲が出たのだった。
その内訳は、やはりというか殿を務めた北部辺境騎士団の割合が多い。
今回の合同訓練に参加した騎士の数は、各辺境騎士団から一個中隊・四十五名、合わせて一個大隊・百三十五名であった。
報告が終わった後た天幕の中は重苦しい空気に包まれ、皆が沈黙した。
そして、夜に魔獣がいる森に入るのは危険との判断から明日の日の出と共に捜索隊を出す事が決定され、その為の打ち合わせをしている時に王都で開かれた会議に出席していた父達がここに到着したのだ。
△▽△▽△▽△▽▽△▽△
彼等の到着を知らされ、天幕から出て来た我々の姿を見て、オルカリオン・カーネリアン辺境伯の顔色がサッと変わった。
「む、娘…ニアは?ハロルドは…?」
力無く目の前まで来ると、俺の騎士服の胸の辺りを両手で掴んで聞いてきた。
「怪我でも…?二人共、怪我をしたのか?……ならば、今は何処に?」
先に東部辺境伯と駆け付け、我々と共にモーリス卿の報告を聞いていたアレクサンデルが父親を引き離した。
「父上…ニアもハロルドも…生死も行方も不明なのです。」
「なっ…んだと…?!」
ニアの父オルカリオンは、即座に鋭い視線を俺に寄越した。
目が合った俺は居たたまれない思いで一杯になる。
「も…申し訳…。」
「何故その様な事になったのだ?」
俺の言葉を遮り、父が問い質してきた。
「そ、それは…。」
どう説明したものかと頭を悩ませていたら、
「ライアン様ぁ~まだ終わりませんのぉ?」
空気を読まずラフレシアが姿を見せた。
鋭い殺気を感じ、そちらを見ようとしたら父の鉄拳が飛んできた。
「こ…の…痴れ者が!!」
怒鳴り声と共に頬に痛みを感じ、俺の体が吹っ飛んだ。
口の中で鉄錆のような味がする。
恐らく、切れたのだろう。
起き上がり、口元を手の甲で拭うと血が付いていた。
「貴様は、あの娼婦の如き女子を戦場にまで連れて行ったのか!!」
「……。」
「…。」
ラフレシアは青い顔をしてガタガタ震え、それ以上進む事もできず、固唾を飲んで事の成り行きを見ていた。
「何か申し開きする事でもあるのか?」
「…いえ、御座いません。全ては至らない私の所為です。」
憤怒の表情で睨んでいるのは、セドリック・ガーネット南部辺境伯、俺の父である。
「そもそも訓練の参加を認められておらぬ者が何故ここにおるのだ!」
「……。」
何も言わぬ俺に業を煮やしたのか
「不愉快だ。その者を儂の目に触れさせるな!」
とラフレシアの方を見もせずに叫ぶ。
命じられた騎士が、ガタガタと震えているラフレシアを彼女の天幕まで連れて戻った。
「アレはまだここにいたんですか?」
騎士に連れられて行く彼女の姿を見たモーリス卿は、驚きを隠せないといった感じだった。
「取り敢えず天幕の中へ。」
アレクサンデルがセドリックとオルカリオンを促して天幕の中へと入り、
それに続いてディーンとリカルド、モーリス達士官や下士官達も入って行った。
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*お気に入り、しおり、エール等本当にありがとうございます。
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