R18・優しすぎる貴方【完結】

雫喰 B

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19. コンラートの追想 ③

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    俺の大好きな人。俺の愛する唯一。

    彼女との出会いは、 七歳になって初めてのお茶会だった。

    その時の俺は今ほど無口でもなくて、爵位と見た目の所為で、女の子に囲まれ辟易していた。

    テーブルの上に並べられたスイーツを、どれにしようか悩んでいると、周りに張り付いた令嬢達が、アレもコレもとオススメのスイーツを皿に乗せ、勧めてくるから俺の前だけ、スイーツだらけになった。

    いい加減にしてくれ!

と言いたかったが、言えば泣き出す令嬢が出てくるのが分かっていたので言えなかった。

    うんざりしていた俺は、お手洗いに行くフリをして、あまり人のいない会場の隅と言うよりは、外れとも言える所で心身を休めていた。

    すると、

『退いてーッ!』

と言う叫び声と共に、何かが上から落ちてきた。

    ガサガサガサッ  という音をさせて、落ちてきたのは、一人の令嬢と思われる女の子だった。

    令嬢と思われると表現したのは、令嬢は木に登らないし、落ちてきたりしないだろう。

    だが、落ちてきたのは紛れもなく令嬢だった。

    しかも、『ごめんなさい!大丈夫でしたか?』と、俺の顔を見上げながら言った彼女に一目惚れをした。

    ミィミィと小さな泣き声が聞こえた気がして、ふと見ると子猫を大事そうに抱えている。

『君の猫?』と聞くと、首を横に振り、『木から降りれなくなっていたから、降ろしてあげたの。』と、にこやかに微笑む。

    その笑顔に釘付けになり、何故か胸がドキドキした。

    かわいい。何なんだこの生き物は。可愛すぎるだろう。

    ボーッと見とれている間に、彼女は子猫を地面に降ろして、『それでは、失礼しますね。』とだけ言うと、名前も告げずに走り去ってしまった。

    彼女の名前を聞きそびれた俺は、急いで会場に戻って探したが、既に彼女の姿は無かった。
    
    お茶会が終わり、一緒に来ていた母に帰りの馬車に乗っている時に、途中で帰った令嬢がいたか聞いたが、友人達とのお喋りに夢中で気付かなかったらしい。

    それ以降、俺はたまに、お茶会で彼女を見掛けるのだが、名前も正体も分からない日々が続く事になるとは思ってもみなかった。

    そして、彼女は、お茶会以外では、王家主催の夜会にしか出ていない事もあって、騎士養成所に通うまでの間ぐらいしか、彼女の正体を知る機会が無いと言う事実に焦りを感じていた。

    養成所を出て、騎士になったら忙しくて、出会う機会など無くなってしまう可能性が高い。

    それに、そのくらいの年齢になったら、婚約者がいてもおかしくない。

    俺は、何が何でも彼女と婚約したかった。政略結婚の多い(ばかりと言える)貴族社会の中で、意中の相手に出会える確率など、無いに等しい。

    けれど、俺は出会ってしまった。彼女に…。
だから、彼女に……。

    祈る様な思いで探し続けた俺の願いも虚しく、彼女が何処の令嬢か分からないまま、俺は騎士養成所に入所する事になったのだった。

    その頃には、彼女はお茶会にすら出席していなかった。そして、最後の機会だった年末の王家主催の舞踏会にもその姿は無かった。

    俺は、彼女を諦める事が出来なくて、それまでに来ていた縁談も、それ以降の縁談も断り続けた。どれだけ両親や周囲の人達に、いい加減に諦める様に言われても。

    騎士になった後も、彼女が誰とも婚約していないと信じて探し続けるつもりだったし、実際探し続けた。

    そして、彼女に相応しい男になる事を誓って養成所でも、騎士になってからも、ただひたすらその為だけに、どれほど辛くて苦しくても頑張り続けたのだ。

    彼女に再び出会える事だけを信じて……。
    

    
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