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26. 恋とも呼べない様な……
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コンラート様の話は、報告書と共に終わったのでした。
そして、ライテンバッハ騎士団長から、子爵家の従者が、私の呼び出しに使われた手紙を持って来た事を告げられました。
その手紙がコンラート様に手渡され、彼は穴が空くほど裏返したり、光に透かしたりして手紙を見ていました。
そして、眉間に皺を寄せ、苦悶に満ちた表情で、間違いなくリンドブルム侯爵家で使用されている、便箋と封筒、封蝋である事を認めました。
けれど、『自分はこのような手紙を書いた覚えは無い。』と、言い張ります。
おかしな話です。では、誰が書いたと言うのでしょう?
この場にいた皆が、同じ様に思ったのか、場がざわつき出しました。
騎士団長が咳払いをすると、シンと静まります。
「今、手紙と一緒に、新たな情報がもたらされた。」
その言葉に皆が驚き、近くにいる者と顔を見合わせたりしていました。
騎士団長が続けて話した内容に、皆の顔が青ざめていきます。
手紙は、ツォルニヒ伯爵令嬢が、コンラート様の机から盗み出して書いた物である事、その際、侯爵家のメイドが手伝った事、使用人はお金を貰って子爵家に届けた事を告げます。
そして、リンドブルム侯爵家の執事は、伯爵令嬢から、『私を含めた三人で話し合う事になったから、私が来たらそのままコンラート様の部屋へ通す様に、彼が言っていた。』と、騙されていた事が判明したのです。
何より、皆を青ざめさせたのは、伯爵夫人の情夫、が作った犯罪組織の内通者が、侯爵家に入り込んでいた事でした。
知らないうちに犯罪組織が、色々な所まで手を伸ばしていた事実が明るみになり、事態を重く見た国王が、全貴族に内通者の炙り出しを命じるといった、大事にまで発展しまいます。
************
全ての話が終わった後で、国王陛下が私達の婚約破棄の件に話を戻しました。
陛下は、婚約破棄の申請書類は自分の所で留めているから、撤回できると言って下さったのですが、父は誘拐事件等の恐ろしい目に合った私を心配して、撤回しないと決め、私はどうしてもあの日の二人の姿や、それまでの二人の様子が目に焼き付いて……。
国を護る為の任務だったとはいえ、他の女性とそんな事までしないといけない。
その事に怖じ気づいて、撤回できませんでした。
彼は、眉間に皺を寄せ、苦悶の表情をしていましたが、何も言わずこちらの意思を尊重してくれたのか、撤回せずに婚約破棄を受け入れて下さいました。
そして、私達は婚約を破棄したのです。
************
私は椅子から立って、騎士団長とリンドブルム侯爵令息の方に向かって、お礼を述べました。
「リンドブルム侯爵令息、その節は救い出して頂き、ありがとうございました。こうして生きていられるのも、侯爵令息や、騎士団長や騎士団の皆様のお陰でございます。本当にありがとうございました。後日、改めて皆様にお礼に伺わせて頂きます。」
そして軽く腰を折った後、再び椅子に座りました。
椅子に座った後、顔を上げると、複雑な表情をしたコンラート様と眼が合ってしまい、少し困ってしまい、取り敢えず、微笑んでみます。
彼も困ったのでしょう。眼を逸らす事も出来ず、俯かれてしまいました。
知らなかった事とはいえ、コンラート様が諜報員として駆り出され、諜報活動をしていた事に驚きを隠せません。
けれど、彼との婚約を破棄した私には、もう関係の無い話なのです。
彼も、妹と思って可愛がっていた幼馴染みの方に、騙され、薬物まで使用されて、裏切られたのですから、酷く傷付いている事でしょう。
今は、一日も早くその傷が癒える事を願うばかりです。
私は、あと何日か、暫く王都で過ごしてから、領地で静かに暮らしたいと思っています。
婚約を破棄した上に、誘拐されたなんて……。
もう、結婚する事は出来ないでしょう。縁談が来たとしても、まともな縁談では無いと思います。
五歳下の弟が、伯爵家を継ぐまでは、修道院に入るのも無理でしょう……。
だから、しばらくは領地で父の仕事を手伝いながら、のんびりと過ごして生きていこうと思っております。
私は、少しの間だけでしたが、コンラート様の婚約者として、過ごせて良かったと。人を好きになり、愛する事を知ることが出来て良かったと。
あの幸せだった時間を思い出に生きていこうと思っています。
それこそが、私を救い出して下さった方々への本当の意味での感謝と恩返しになると思っているのです。
じっと見詰める訳にはいきませんが、時々、偶然視界入るコンラート様の姿を、眼に焼き付けて行くぐらいは許して頂きたいな。
……なんて……。いいですよね。恋とも呼べない淡い想いかもしれなかったですが、その想い出に……。
…この先、もう…恋すら出来ない……かもしれないような……そんな状況になってしまった……私ですもの……。
この後、部屋を出た後も、コンラート様と眼が合う事はありませんでした。
出来れば彼の綺麗な、サファイアの様な瞳も眼に焼き付けておきたかった……。
うふふ。私ってば、何て欲張りなんでしょう。
コンラート様
お幸せに。
遠く離れた場所からではありますが、
優しい貴女の幸せを
心から願っております。
~~~~~~~~~~
17日(火)まで、一日二話投稿です。
*お知らせ*
17日(火)の21時に投稿した話をもって、完結となります。
その後、エピローグ投稿する予定です。
そして、ライテンバッハ騎士団長から、子爵家の従者が、私の呼び出しに使われた手紙を持って来た事を告げられました。
その手紙がコンラート様に手渡され、彼は穴が空くほど裏返したり、光に透かしたりして手紙を見ていました。
そして、眉間に皺を寄せ、苦悶に満ちた表情で、間違いなくリンドブルム侯爵家で使用されている、便箋と封筒、封蝋である事を認めました。
けれど、『自分はこのような手紙を書いた覚えは無い。』と、言い張ります。
おかしな話です。では、誰が書いたと言うのでしょう?
この場にいた皆が、同じ様に思ったのか、場がざわつき出しました。
騎士団長が咳払いをすると、シンと静まります。
「今、手紙と一緒に、新たな情報がもたらされた。」
その言葉に皆が驚き、近くにいる者と顔を見合わせたりしていました。
騎士団長が続けて話した内容に、皆の顔が青ざめていきます。
手紙は、ツォルニヒ伯爵令嬢が、コンラート様の机から盗み出して書いた物である事、その際、侯爵家のメイドが手伝った事、使用人はお金を貰って子爵家に届けた事を告げます。
そして、リンドブルム侯爵家の執事は、伯爵令嬢から、『私を含めた三人で話し合う事になったから、私が来たらそのままコンラート様の部屋へ通す様に、彼が言っていた。』と、騙されていた事が判明したのです。
何より、皆を青ざめさせたのは、伯爵夫人の情夫、が作った犯罪組織の内通者が、侯爵家に入り込んでいた事でした。
知らないうちに犯罪組織が、色々な所まで手を伸ばしていた事実が明るみになり、事態を重く見た国王が、全貴族に内通者の炙り出しを命じるといった、大事にまで発展しまいます。
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全ての話が終わった後で、国王陛下が私達の婚約破棄の件に話を戻しました。
陛下は、婚約破棄の申請書類は自分の所で留めているから、撤回できると言って下さったのですが、父は誘拐事件等の恐ろしい目に合った私を心配して、撤回しないと決め、私はどうしてもあの日の二人の姿や、それまでの二人の様子が目に焼き付いて……。
国を護る為の任務だったとはいえ、他の女性とそんな事までしないといけない。
その事に怖じ気づいて、撤回できませんでした。
彼は、眉間に皺を寄せ、苦悶の表情をしていましたが、何も言わずこちらの意思を尊重してくれたのか、撤回せずに婚約破棄を受け入れて下さいました。
そして、私達は婚約を破棄したのです。
************
私は椅子から立って、騎士団長とリンドブルム侯爵令息の方に向かって、お礼を述べました。
「リンドブルム侯爵令息、その節は救い出して頂き、ありがとうございました。こうして生きていられるのも、侯爵令息や、騎士団長や騎士団の皆様のお陰でございます。本当にありがとうございました。後日、改めて皆様にお礼に伺わせて頂きます。」
そして軽く腰を折った後、再び椅子に座りました。
椅子に座った後、顔を上げると、複雑な表情をしたコンラート様と眼が合ってしまい、少し困ってしまい、取り敢えず、微笑んでみます。
彼も困ったのでしょう。眼を逸らす事も出来ず、俯かれてしまいました。
知らなかった事とはいえ、コンラート様が諜報員として駆り出され、諜報活動をしていた事に驚きを隠せません。
けれど、彼との婚約を破棄した私には、もう関係の無い話なのです。
彼も、妹と思って可愛がっていた幼馴染みの方に、騙され、薬物まで使用されて、裏切られたのですから、酷く傷付いている事でしょう。
今は、一日も早くその傷が癒える事を願うばかりです。
私は、あと何日か、暫く王都で過ごしてから、領地で静かに暮らしたいと思っています。
婚約を破棄した上に、誘拐されたなんて……。
もう、結婚する事は出来ないでしょう。縁談が来たとしても、まともな縁談では無いと思います。
五歳下の弟が、伯爵家を継ぐまでは、修道院に入るのも無理でしょう……。
だから、しばらくは領地で父の仕事を手伝いながら、のんびりと過ごして生きていこうと思っております。
私は、少しの間だけでしたが、コンラート様の婚約者として、過ごせて良かったと。人を好きになり、愛する事を知ることが出来て良かったと。
あの幸せだった時間を思い出に生きていこうと思っています。
それこそが、私を救い出して下さった方々への本当の意味での感謝と恩返しになると思っているのです。
じっと見詰める訳にはいきませんが、時々、偶然視界入るコンラート様の姿を、眼に焼き付けて行くぐらいは許して頂きたいな。
……なんて……。いいですよね。恋とも呼べない淡い想いかもしれなかったですが、その想い出に……。
…この先、もう…恋すら出来ない……かもしれないような……そんな状況になってしまった……私ですもの……。
この後、部屋を出た後も、コンラート様と眼が合う事はありませんでした。
出来れば彼の綺麗な、サファイアの様な瞳も眼に焼き付けておきたかった……。
うふふ。私ってば、何て欲張りなんでしょう。
コンラート様
お幸せに。
遠く離れた場所からではありますが、
優しい貴女の幸せを
心から願っております。
~~~~~~~~~~
17日(火)まで、一日二話投稿です。
*お知らせ*
17日(火)の21時に投稿した話をもって、完結となります。
その後、エピローグ投稿する予定です。
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