25 / 40
25. 彼の想いとツォルニヒ(ルーニー)の後悔 ②
しおりを挟む
ここまで自分の計画の邪魔(レーナは邪魔をした覚えはない)をし、コンラートを自分から取り上げ、しかも、薬を盛られてもレーナへの確とした想いを貫くコンラート。真実、彼に愛されているレーナ。
そんな彼女を、計画の成功、失敗、以前に、ルーニーの心が、プライドが、感情が許す訳が無かった。
なのにコンラートは、幼かった時の彼女を覚えているが故に、判断を誤っているとは思っていない。
そして、ルーニーがレーナに対してどんな行動を取るかも、正確に予測出来ていなかった。
諜報部隊統括長であるヨーゼフ・ブルームハルト大佐は、コンラートの安全と任務完遂の為に、自分が信用を置いている諜報員を張り付かせていた。
コンラートがいくら騎士として優秀でも、諜報員と同じ動きが出来るとは限らない。
何より、彼がこの任務に適していると言っても、安全面に於いて最大限に配慮しなければならなかったからである。
そして、部下から報告を受けていた彼は、コンラートを呼んで一つの可能性を示唆した上で、一通の手紙を渡して指示を出した。
『同様の文面の手紙を、ウンツフリーデン伯爵令嬢に毎日送り付ける様に。』
『何ですかコレは!?』
手紙の内容を見たコンラートは、ヨーゼフに詰め寄った。
『それは、飽くまで例文だ。』
『例文…って、これじゃあ、まるでストーカーじゃないですか!!』
『だが、抑止力と言うか、牽制にはなるぞ。』
『抑止力…?牽制…?一体何のことです?』
訳が分からないと言った感じで、尚も詰め寄るコンラートに、半ば呆れた様に
『まさか本当に分かってないのか?』『仕方が無いな。』
などと呟きながら、説明した。
コンラートが、薬を盛っても陥落しなかった事で、ルーニーのプライドが傷付けられた事、そして、恨みや憎しみと言った思いを更に募らせた事。その憎悪の矛先がレーナに向けられる事を。
そこから導き出される、ルーニーが取るであろう行動。つまり、レーナに危害を加える。という事を。
そして、どの様な危害を加えるか?
予想されるのは、“誘拐”、“凌辱”、“通り魔的犯行” の三つが最も確率が高いだろう事。
その話を聞き終わったコンラートは、顔色を失っていた。
だが、と、ヨーゼフは話を手紙に戻した。
一見、ストーカーな手紙だが、事細かにレーナの行動を把握しているという事は、始終、見張っているという事になる。その事実が、危害を加える側に対しての牽制になるだろう。と。
話を聞いていたコンラートだったが、次の言葉を聞いて激怒した。
『敵の尻尾を掴む為に、挑発目的の後半の文章を必ず書く様に。』
『…ッ!? レーナを、餌にするつもりですか!?』
コンラートのその言葉に対して、ヨーゼフは冷徹な言葉を彼に向けた。
『その大切な彼女を危険に晒したのは卿であろう。』
『…ぐッ…。』
コンラートは、『彼女を危険に晒したくなければ、絶対に接触するな。』と厳命されていたにも拘わらず、会えない日々に耐えられず、会いたい。と、連絡を取ってしまった。その時の彼の愚行が今の状況だと言われた。
単なる政略結婚ならば、婚約者の女に恋愛感情がないだろうから、ルーニーの方は優越感に浸っていられる上に、思う通りに出来る。なら、態々婚約者の女に危害を加える必要はない。精々、マウントをとるぐらいである。
だが、婚約者の女に恋愛感情がある場合はルーニーの思う様にならない可能性が高くなる。
そうなると、婚約者の女が邪魔になってくる。
危害を加える可能性が高くなるのだ。
その事を肝に銘じた彼は、彼女の命を守る事を優先させた上で、任務を遂行する事を誓ったのだった。
*****************
ツォルニヒ(ルーニー)の後悔 ②
薬を盛ったのに、この手に堕ちて来なかったコンラート。
それほどまでに、見た目で私に劣る女の事が大事なのか。
あんな女の方が良いのか。この私よりも…。
何処までも邪魔な女に制裁を加えなければ。その上で、この世から消さねば。そうしなければ気が済まない。
妬み、嫉み、恨み、憎しみで、ギリギリギリと歯噛みする毎日だった。
その機会を窺っていた彼女に、コンラートから手紙が来た。
婚約破棄をして以降、無しの礫だった彼からの手紙に天にも昇る気持ちだったのに、ウキウキと広げた手紙の内容に、怒りで、見る見る顔が真っ赤に染まっていく。
『何よ!コレ!!』
まるでストーカーの様に、びっしりとレーナの一日の行動が書き込まれ、後半は彼女に対する想いを書き連ねてあった。
『彼女の事なら何でも知りたいし、知っている。レーナの事がこの世で一番、かわいい。好きだ。愛している。会いたいのに会えなくなった。でも、陰からでも見ることが出来て幸せだ。けれど触る事が出来ない。おまけに婚約が破棄された。
婚約が破棄されたのも、触れる事が出来なくなったのもお前の所為だ。』
なんて書かれた手紙を何通も送って来られて。(しかも、半年間ほぼ毎日。)
始めは、彼以外の人と結婚したから、焼きもちを妬いて、怒っているんだと思ったりしたわ。
でも、そのうちに、本当にあの女の事を愛している。って分かって来て……。
益々あの女が許せなかったの。
こんな事なら、コンラート以外の人と結婚なんてするんじゃなかった。
彼以外の人と結婚したから、捕まっちゃったんだわ。
と、ルーニーは後悔の溜息を吐いた。
えぇぇぇっ!? (後悔って) そこ?
そんな彼女を、計画の成功、失敗、以前に、ルーニーの心が、プライドが、感情が許す訳が無かった。
なのにコンラートは、幼かった時の彼女を覚えているが故に、判断を誤っているとは思っていない。
そして、ルーニーがレーナに対してどんな行動を取るかも、正確に予測出来ていなかった。
諜報部隊統括長であるヨーゼフ・ブルームハルト大佐は、コンラートの安全と任務完遂の為に、自分が信用を置いている諜報員を張り付かせていた。
コンラートがいくら騎士として優秀でも、諜報員と同じ動きが出来るとは限らない。
何より、彼がこの任務に適していると言っても、安全面に於いて最大限に配慮しなければならなかったからである。
そして、部下から報告を受けていた彼は、コンラートを呼んで一つの可能性を示唆した上で、一通の手紙を渡して指示を出した。
『同様の文面の手紙を、ウンツフリーデン伯爵令嬢に毎日送り付ける様に。』
『何ですかコレは!?』
手紙の内容を見たコンラートは、ヨーゼフに詰め寄った。
『それは、飽くまで例文だ。』
『例文…って、これじゃあ、まるでストーカーじゃないですか!!』
『だが、抑止力と言うか、牽制にはなるぞ。』
『抑止力…?牽制…?一体何のことです?』
訳が分からないと言った感じで、尚も詰め寄るコンラートに、半ば呆れた様に
『まさか本当に分かってないのか?』『仕方が無いな。』
などと呟きながら、説明した。
コンラートが、薬を盛っても陥落しなかった事で、ルーニーのプライドが傷付けられた事、そして、恨みや憎しみと言った思いを更に募らせた事。その憎悪の矛先がレーナに向けられる事を。
そこから導き出される、ルーニーが取るであろう行動。つまり、レーナに危害を加える。という事を。
そして、どの様な危害を加えるか?
予想されるのは、“誘拐”、“凌辱”、“通り魔的犯行” の三つが最も確率が高いだろう事。
その話を聞き終わったコンラートは、顔色を失っていた。
だが、と、ヨーゼフは話を手紙に戻した。
一見、ストーカーな手紙だが、事細かにレーナの行動を把握しているという事は、始終、見張っているという事になる。その事実が、危害を加える側に対しての牽制になるだろう。と。
話を聞いていたコンラートだったが、次の言葉を聞いて激怒した。
『敵の尻尾を掴む為に、挑発目的の後半の文章を必ず書く様に。』
『…ッ!? レーナを、餌にするつもりですか!?』
コンラートのその言葉に対して、ヨーゼフは冷徹な言葉を彼に向けた。
『その大切な彼女を危険に晒したのは卿であろう。』
『…ぐッ…。』
コンラートは、『彼女を危険に晒したくなければ、絶対に接触するな。』と厳命されていたにも拘わらず、会えない日々に耐えられず、会いたい。と、連絡を取ってしまった。その時の彼の愚行が今の状況だと言われた。
単なる政略結婚ならば、婚約者の女に恋愛感情がないだろうから、ルーニーの方は優越感に浸っていられる上に、思う通りに出来る。なら、態々婚約者の女に危害を加える必要はない。精々、マウントをとるぐらいである。
だが、婚約者の女に恋愛感情がある場合はルーニーの思う様にならない可能性が高くなる。
そうなると、婚約者の女が邪魔になってくる。
危害を加える可能性が高くなるのだ。
その事を肝に銘じた彼は、彼女の命を守る事を優先させた上で、任務を遂行する事を誓ったのだった。
*****************
ツォルニヒ(ルーニー)の後悔 ②
薬を盛ったのに、この手に堕ちて来なかったコンラート。
それほどまでに、見た目で私に劣る女の事が大事なのか。
あんな女の方が良いのか。この私よりも…。
何処までも邪魔な女に制裁を加えなければ。その上で、この世から消さねば。そうしなければ気が済まない。
妬み、嫉み、恨み、憎しみで、ギリギリギリと歯噛みする毎日だった。
その機会を窺っていた彼女に、コンラートから手紙が来た。
婚約破棄をして以降、無しの礫だった彼からの手紙に天にも昇る気持ちだったのに、ウキウキと広げた手紙の内容に、怒りで、見る見る顔が真っ赤に染まっていく。
『何よ!コレ!!』
まるでストーカーの様に、びっしりとレーナの一日の行動が書き込まれ、後半は彼女に対する想いを書き連ねてあった。
『彼女の事なら何でも知りたいし、知っている。レーナの事がこの世で一番、かわいい。好きだ。愛している。会いたいのに会えなくなった。でも、陰からでも見ることが出来て幸せだ。けれど触る事が出来ない。おまけに婚約が破棄された。
婚約が破棄されたのも、触れる事が出来なくなったのもお前の所為だ。』
なんて書かれた手紙を何通も送って来られて。(しかも、半年間ほぼ毎日。)
始めは、彼以外の人と結婚したから、焼きもちを妬いて、怒っているんだと思ったりしたわ。
でも、そのうちに、本当にあの女の事を愛している。って分かって来て……。
益々あの女が許せなかったの。
こんな事なら、コンラート以外の人と結婚なんてするんじゃなかった。
彼以外の人と結婚したから、捕まっちゃったんだわ。
と、ルーニーは後悔の溜息を吐いた。
えぇぇぇっ!? (後悔って) そこ?
2
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
貴方なんて大嫌い
ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と
いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている
それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる