R18・優しすぎる貴方【完結】

雫喰 B

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29. 格好悪くても……。

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    メイドの先導で、庭まで出ると、綴れ織りになった遊歩道があり、奥へと続いている。
    立ち止まったメイドは、手で奥の方を指し示すと、

    「お嬢様は、彼方にいらっしゃいます。」

とだけ告げると、軽く頭を下げた。

    「ありがとう。」

    メイドに礼を言うと、彼女は下がって行った。

    この遊歩道を進んだ先に、マグダレーナがいる。そう思っただけで胸が高鳴る。
    最後に顔を会わせたあの日、何故もっと粘らなかったのか…。と、どれほど後悔しただろう。

    けれど、何日離れても彼女を求めて止まない。彼女への想いは変わらない。だからこそ、本気なのだと断言できる。

    口先だけでなく、償いでも、計算でも、ましてや、妥協でもない。
    心の底から、彼女を愛し、求めて止まない。
    そして、それを彼女に告げ、その上で、彼女に決めて欲しい。そう思ったのだ。

    緊張しながら歩いて行くと、小さな噴水があり、彼女はその縁に座って、水の中に指先を浸けていた。

    そっと彼女に近付いて行く。
そして、傍に立ち彼女に声を掛けた。

    「マグダレーナ。…レーナ。」

    弾けれた様に、彼女が勢い良く顔を上げた。

    「…コンラート様。」
    「君の事を、まだレーナと呼んでいいだろうか?」
    「……今だけなら…。私の方こそ、まだコンラート様とお呼びしても…? 勿論、今だけですけれど……。」
    「ずっとでもいいよ。」
言った。
    笑いながら言うと、彼女は困った様に微笑むと

    「そんな訳にまいりませんわ。」

    軽く首を横に振るとそう言った。

    ポケットから小さな箱を取り出し、噴水の縁に座る彼女の前に跪いた。
    驚く彼女の眼を見詰めながら言った。

    「何日経っても、レーナ、君を愛している。いや、益々君への想いが強くなって……君を諦められそうに無い。…君を諦めたく無い。」

    そこまで言って、胸が一杯になり、緊張して、喉がカラカラになる。
    息を吸い込み、意を決して告げた。

    「今更と、君は思っているかもしれないが、本気なんだ。お、俺と、結婚してくれ!」

    彼女は、首を少し傾け、顎に軽く手を置くと、泣きたい様な、少し困った様な表情をした。

    コンラートは、その様子をじっと見守った。

    彼女は、溜め息を一つ吐くと、何故か少し怒っている様だった。

    「コンラート様の任務の所為で、婚約が破棄された上、誘拐されたからと言って、責任を感じてプロポーズしなくてもいいんですよ。仕方なかったんですから。まぁ、外聞が悪いから、もう普通の結婚は望めないかも知れませんが、結婚する事だけが幸せの全てではないでしょう?」

    やはり、もう彼女を取り戻せないのだろうか?と弱気になりかけるが、諦めたく無い!

    「レーナ。責任感で言っているんじゃない。本心から、君を求めて止まないんだ。君が欲しい!君を愛している!信じられないかもしれないが、信じてくれ!」

    彼女に箱を両手で握らせ、その外側を、自分の両手で包み込み、彼女の眼を見て告げた。
    彼女を逃したくない。
    コンラートは必死だった。

    そんな彼を探る様に見る、マグダレーナ。
    彼は嘘を言っている様には見えない。
   
    信じたい。
    信じてもいいの?
    
    けれど、自分達の婚約は政略結婚の為のものだったと思っていた。

    違ったのだろうか?

    彼女は、そこまで考えた時に、ふと疑問に思った。

    彼は 私の事を『愛しているから結婚したいと思っている。』と、言っていた。

    え? 最初から?

    でも、私達が顔を会わせたのは、婚約の申し込みがされた後だった筈……?

    どう言うこと?

    彼女が何か難しい顔をして、考え事をしている様に感じて、コンラートは聞いた。

    「何か、気になる事でも…?」

    マグダレーナは、その疑問を、コンラートに聞く事にした。

    「コンラート様、私達の婚約は、政略結婚が前提のものでしたよね?」

    今度は、彼が思い悩む番だった。
    ? 『愛しているから結婚したいと思っている。』と、言っていた筈なのに、何故、政略結婚が前提だと思っているんだ?

    「俺は、『愛しているから結婚したいと思っている。』と、君には、言っていたと思うんだが?」

    「そう言ってました。けれど、コンラート様と、お会いしたのは、婚約を申し込まれた後だったと思うのですが?」

    一瞬、眼を瞠った後、少し首を傾げていた彼は、ポツリと呟いた。

    「七歳……。」

    え?七歳…って何?


    
    
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