【改稿版】それでも…

雫喰 B

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36. 恥ずか死ぬ…

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    ローランドとリンジーがテラスに戻って、お茶の続きを楽しんでいたら、外が急に騒がしくなった。

    何事かと、様子を見に行こうとローランドが立ち上がった時、誰かが庭からテラスに駆け込んで来た。

「「 キース!? 」」
「「 え? 」」

    同時に、テラスに駆け込んで来た男の名前を叫んだローランドとスージーは、驚いてお互いの顔を見た。

「「 何で…? 」」
「 スージー !」

    疑問をぶつけ合う二人を余所に、キースが彼女の名前を呼んだ。
    キースを追いかけてきた門番や護衛を、ローランドが手で制している。

「どなたか存じ上げませんが、何かご用でしょうか?」

    冷たい表情でスージーが問う。
    ぐっと、胸の痛みを堪え、彼女の前に跪き、上着の内ポケットから取り出した指輪を捧げ持つ。

「スージーを諦めるなんて俺には無理だ。お願いだ…結婚して欲しい!」

    指輪を捧げ持ったまま頭を垂れて、彼女の返事を待った。

「馬鹿じゃないの?あなたの事なんて何とも…。」
「お願いだ!」
「だから…」
「頼む!!」
「 … 」

    口を挟む隙を与えない男に、呆れた溜め息が漏れる。
    それでも、指輪を捧げ持ち、下から懇願の眼で見上げてくる彼の顔を、直視出来ずに眼を逸らすと、悲し気な顔で跪いた姿勢のまま、躙り寄ってくる。

    ひぃーッ!!

    そのあまりの不気味さにスージーはドン引きである。はっきり言って恐すぎる。

    キースを追いかけて来た門番や護衛達は、その光景に固まったしまう。

    クスクスと笑う声に、ハッとして周囲を見ると、いつの間にか人だかりが出来ていた。
    それに気づいた二人は、一瞬で顔が真っ赤に染まる。は、恥ずか死ぬ!

「…スージーもそこのあなたも、座ってお茶でも飲んで落ち着けば?」
「「 … 」」

    項垂れる二人をそのままに、集まった侍女や使用人達を下がらせ、ローランドにも座るように言った。

「いつまでそうしているつもりかしら?さ、スージーもお茶を淹れて頂戴。そして一緒にお茶を飲みましょう。」
「 …はい。」

    諦めたように返事をすると、お茶を淹れてから座った。

「 あなたも…座って。」

    跪いたまま、指輪を手に握り込んでいるキースに声をかけ、座るように促す。

    そして、二人が席に着き、黙って項垂れているのを見て、お茶を一口飲んでから楽しそうに言った。

「何だか面白い事になってるみたいだけど、説明してもらえるかしら?」

    再度顔を赤くした二人が、どちらが説明するかいるのを、ローランドがニヤニヤしながらキースに言う。

「キース、俺にも解るように説明してくれないか?」
「 っ!? 」

    改めて、ローランドの前で醜態を晒してしまった事に恥ずかしくなる。
    が、覚悟を決めて説明した。

    スージーとは恋人同士だった事、彼女を裏切った事で、先程見捨てられた事、それでも彼女を諦められなくて結婚を申し込んだ事を…。

    ローランドはスージーに恋人がいた事に驚いたが、それ以上に、キースが辺境伯家の私設騎士団に所属していた事に驚かされた。
    初対面の時に、彼が“傭兵上がりだ”と言っていたからだ。
    だが、ある事を思い出してそれについては何も言わずにおいた。

「まぁ、キースの日頃の行いだったら、スージーに捨てられても仕方ないよな。」
「っ…な、お、お前言うに事欠いて、なんて事言うんだよ。」
「別に。」

    しれっと言うローランドを、キースが恨めしそうな眼で見ていたが、何やら殺気を感じて振り返ると、スージーがで二人を見ている。
    そう。笑顔なのだが、眼が怒っているのだ。

「あら、何でローランドがその事に詳しいのかしら?是非、教えて欲しいものだわ。」
「え?…いや、ほら…砦で一緒だった…から…。」
「ふーん。砦で一緒だっただけだと、分からないような事だと思うんだけど?」

    追及の手を緩める気が無さそうなスージーの言葉に、二人は蛇に睨まれた蛙のような気持ちだった。

「スージー、あまり苛めるのは可哀想よ。その辺りの事は、私も気にならないでもないけれど…?」

    そう言ってローランドの方をチラりと見てから、青い顔をしている彼に、ニッコリと微笑む。

「そうだわ。二人で庭でも散策して来れば?積もる話もあるでしょうし。大切な事だから、ゆっくり話し合って頂戴。」

    その言葉に二人は頷き合った。

「「ありがとうございます。」」
「お言葉に甘えて、二人で話し合ってみます。」

    礼を言うと、そう言って席を立ち、退出の礼を取ってテラスから庭へ出て行った。

    リンジーは、そんな二人の後ろ姿を、眩しい物を見るように眼を細めて見ていた。

    いくらリハビリをしていたお陰で、立って歩ける様になっても、ローランドの心の中から、罪悪感や償いといった気持ちは、どうやっても失くならないと思う。それに、そんな事で彼を自分に縛り付けたくない。

    それがある以上、彼と自分には目の前の二人のような関係にはなれない。
    だから、余計に二人が眩しかった。眩し過ぎた。

    

   
    

    

    
    







    
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