【改稿版】それでも…

雫喰 B

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47. 毒を以て毒を制す

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    早朝、人の気配で目が覚めた。

    ベッドから出て、人の眠りを妨げた無粋な奴に声を掛けた。

「何用だ?」

    何処からともなく現れた男は、フードを目深に被り、丈の長い外套を羽織ったまま、ジャスティンの前に跪いて頭を垂れると、懐から折り畳まれた紙を取り出し、差し出した。

    開いた紙には以下の事が書かれていた。

~~~~~

    貴石の安全の為に
毒を以て毒を制すのが
最善である。
    
    ナイトとビショップは、
事態を拗らせる
    故に後退させる事が
望ましい。
    念の為、
    草や雑草に成行を
見護らせたし。
                     間貸

~~~~~

「 … 」

  『 相変わらず、巫山戯た文を寄越しやがって。』

    そう思うも、書いてある通りにするのはいいが、ローランドとキースを本当にリンジーの護衛から外して大丈夫なのか?

    姉妹の事を知っているキースを呼ぶと、その文を見せて彼の意見を聞いた。

「…あいつの考えている事の全部までは分かりませんが、姉妹に決着ケリをつけさせる気なんでしょう。その為には、俺とローランドがお嬢様の傍に居ない方が、事が上手く運ぶ。そう判断したんだと思います。」
「…そうか。分かった。その様に手配を頼む。」

    てっきり妹になら、姉を止められると判断したのだと思っていたのに、結果を知って何とも遣りきれなくて、苦い思いをする事になった。

    朝食後、護衛から外されたローランドが、俺に文句を言いに来た。

    机で書類仕事をしていた俺は、手を止め彼の顔を見た後、いい加減弁えろと思いながら言った。

「言っておくが、実の兄とはいえ俺は家令補佐なのだが…。」
「そんな事は分かってる。だけど、こんな理不尽な命令なんて承知できる訳無いだろ!」
「何も、ずっととは言っていないだろう。暫くの間だけだ。」
「納得できない!」
「弁えろ!」

    本当にこいつは何も分かっていない。
    青い顔を俺に向け、怒りに染まり殺気だった眼で睨んでくる弟を感情を込めず、スッと眼を細めて見る。

「さっきも言ったが、俺はお前の兄である前に、家令補佐だ。今、(家令のいない)ここでは家令代行として、家令と同じ権限を持っている。その意味が分かるよな。」

    ハッとなって項垂れると、胸に手を当て

「申し訳ありませんでした。指示に従います。」

    そう言って踵を返すと部屋から出ていった。

    扉が閉まった後、溜め息を吐いた。本心から納得した訳じゃないのは分かっている。
    しかし、俺も弟ももう子供ではないのだ。何時までも身内だから許されるという考えは通らない。
    大人になれば各々の立場がある。なぁなぁではすまない。

    納得いかずとも、上からの命令には従わなければならない。
    その事に気付いてくれればと思っていたのだが…。

    悪い言い方をすれば、お嬢様が絡むと我を通そうとする。
    途端に、その線引きが出来なくなるのは、彼だけでなく、彼女にとっても良くない。
    幸いにもお嬢様の方は弁えている。それだけに、弟が弁える事が出来ない限り、中途半端に任務に就く事になり、致命傷になりかねない。

    本当の意味で理解してくれる事を願うばかりだ。

    扉をノックした後、キースが入って来た。

「すまないが、あれが暴走しないように見張っていてくれ。」
「承知しました。」

    恐らく、その言葉だけで理解出来たのだろう。苦笑すると「気苦労が絶えませんな。」と言って出ていった。

    優秀な奴なのに、何故“雑草”なんてやっているのか、ずっと不思議だった。
    過去に、「俺の右腕になって欲しい。」と言ったら、「そんな堅苦しい位置に立つのはごめんだ。」と言われた。

    命令すればその位置に立ってくれるのは分かっているが、それでは彼の長所を活かせなくなる事が分かっているだけに、命令する事もなく今に至る。

    不思議な奴だ。

    そして再び書類に眼を落とし、ペンを走らせた。

~~~~~

    暫くすると、先触れも無くお館様が別荘に来られた。皆、驚きを隠せないまま、バタバタと迎えの準備を整えていった。

    執務室を兼ねている書斎に入る時に俺も呼ばれ、一緒に部屋に入って行ったのだった。

    姉妹の件について、報告と説明をしている時に外が騒がしくなり、何事かと思っていると、扉をノックして護衛のリチャードが入って来た。

「何事だ。」

    珍しく眉間に皺を寄せて、問い質されると、姿勢を正し報告する。

    報告された内容に、お館様も俺も驚愕した。
    まさか姉妹で殺し合うなど、誰が想像出来ただろう?

    と、そこまで考えたところで、お館様と眼が合った。
    同じ人物を思い浮かべたのだと分かった時に、能天気そうな声で登場したそいつに、お館様も俺も露骨に嫌そうな顔をしていたのだろう。
 
「やだなぁ、そんなに嫌悪感丸出しにしないでよ。傷つくじゃん。」

    場にそぐわない、にこやかな顔と声でマーカスが現れた。
    そして、その隣にはいつもの様に、げんなりとしたタークスと、青い顔をした少年が立っていた。



~~~~~

    今年も残すところあと僅か。
お読み頂いた皆様には、感謝!、感謝!!な一年でした。
    勿論、感想やしおりを挟んで下さった方々、お気に入り登録して下さった方々にも、感謝!、感謝!!です。

本当にありがとうございました‼️

来年もよろしくお願いいたします。

    来年も、皆様にとって最高の年でありますように。
    
    皆様、良いお年を‼️
    
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