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51. 中途半端 ②
しおりを挟む*今話、少しだけ話が長いです。しかも、重い!重たい!!
なので、苦手な方は反転(ブラウザーバック)でお願いします。
地面に膝をつき、リゼとシャロの顔を見た。
リゼの頬には血が付いていた。そして、シャロの手にも…。
俺は何か間違えたのだろうか?
間違えたのだとしたら、何処で…?
わからない。
何故、この姉妹が死ななければならなかったのか…。
使用人達が、姉妹の亡骸を荷車に積み込んだ。
後は警備隊の仕事だった。
彼等がこの事件を調べる事になる。
そして、二度と会えなくなってしまった姉妹の亡骸を乗せた荷車を見送った。
~~~~~
自分を呼び出した兄のいる客室に向かうと、あの現場にいた三人がそこにいた。
そして、リゼが家出した頃にヤコブ村で起こった事件の事を知る。
当然、村長夫妻が亡くなった事も…。
その事件の詳細に愕然となった。
三人の内、二人は“雑草”と言われる暗部の人間だと思われた。
何処と無く見覚えがあったからだ。
そして、青白い顔をした少年は、ヤコブ村でシャロと一緒にいるところを何度も見ている。
その少年が語った内容が問題だった。
シャロが村の青年二人と村長夫妻に山鳥兜を摂取させたと語ったのだ。
けれど、さっき聞いた話では、村ではもう一人死んでいる筈…。
そこまで考えたところで、心臓がばくばくと嫌な音をたて始めた。
少年の口から決定的な言葉が吐き出された。
残る一人…。ヤコブ村で最初の犠牲者である青年を殺したのがリゼなのだと。
ローランドの身体が傾く。
何とか踏ん張り、辛うじて転倒を免れたものの、膝が震えていた。
「…どうして…?」
手で覆った筈の口から声が漏れる。
「分かっている筈だ。」
ジャスティンが冷たい眼差しで、弟を睨み付けながら言う。
ゆっくりと兄の方へ顔を向けるローランド。
「どうしてだと?そんな事はお前が一番分かっている筈だ。」
「…え?」
チッ!と舌打ちが聞こえた。
「まさか、本当に分かっていないのか…?」
信じられないとばかりに、ローランドの方に身体全体を向け、そう吐き捨てた。
弟の顔を見て、失望を隠さないまま続けた。
「…本当に分かっていないようだな…。別れの挨拶などしなければ良かったんだ。そうすれば、あの娘も未練など感じなかっただろう。
何より、追いかけて来ても、お前が専属護衛としての責任を果たしていれば、リンジーとの間に付け入る隙など無いと諦めたかもしれない。
そして、どんなにお前を求めても無駄だと分かれば、村に帰っただろう。」
「…そん…な…。」
ローランドは床に両膝をついた。
ジャスティンは、うちひしがれている弟に背を向けて言い放つ。
「全てはお前が中途半端に、あの娘の傍にいた事で起こった事だ。あれ程、忠告したと言うのに…。」
床に両手をつき、肩を震わせている彼を、皆が冷ややかな眼で見ていた。
たった一人を除いて…。
イアンだけは、他人事だと思えなかった。
彼もまた、シャロの傍にいた事で中途半端だった為に、彼女を失ってしまったからだ。
ローランドは、肩を震わせ、項垂れたまま、ヨロヨロと立ち上がり、ふらふらと部屋から出ていった。
イアンが追いかけ、マーカスもそれに続いた。
三人が出ていった後の扉を見つめ、ジャスティンが深い溜め息を吐いた。
「…いいんですか?」
躊躇いがちにタークスが聞いた。
「いい加減、弁えてもらわないと周囲が迷惑する。」
「そういうもんですかね…。」
血の繋がった兄弟なのに冷たいんだな。と、タークスは思った。
「当たり前だろ。ジェスにも自分の仕事に対する責任ってもんがある。それに…あいつの場合、自分の仕事だけじゃなく、お嬢様に対する責任もあるんだ…。御座成りにしていい事でもないし、等閑なら、なお悪い。」
「はぁ…。」
そういう事なら、例え身内と雖も 厳しい事にも納得がいく。
しかし…責任のある立場というのも大変だと思った。自分だったら、そんな小難しい立場などゴメンである。
尤も、口になど出さないが…。
~~~~~
自分の部屋に入ったローランドを追って来たイアンが扉をノックした。
勿論、マーカスも一緒だ。
返事は無かったが、話がしたかったイアンはそっとドアノブを回した。
鍵が掛かっていなかったから、部屋に入る。と、マーカスもそれに続く。
ベッドに転がっているローランドの隣にイアンが座った。
「 … 」
何も言わない彼に、ポツリポツリと独り言のように話し出す。
「…僕も…シャロの傍にいたのに、何もしなかったんです。中途半端に関わって、慰めて、分かった気になっていたんです。でも…。」
イアンは、シャロと話した内容を、彼女との約束の事も話した。
眼を真っ赤にしたローランドは、不思議そうにイアンを見た。
何が言いたいんだ?
それの何処が間違っているんだ?
そんな言葉が聞こえてきそうな眼だった。
自虐的な笑みを浮かべ、ローランドを見て彼は言った。
「僕も…分からなかったんです。けど…マーカスさんの顔色が悪くなっていくのを見て…気づいた…。」
「…何を…?」
イアンが気づいた事が何か知りたくてローランドは聞いた。
かなり小さな声だったが、イアンの耳には届いた。
「僕は…彼女に同情したとしても、彼女がやろうとしている事を認めちゃ駄目だった。中途半端に彼女の気持ちが分かっちゃいけなかったんです。」
「 ??? 」
益々、訳が分からなかった。
そんな彼の表情を見て、イアンは少しだけ困ったように微笑む。
「分かりませんか…?彼女の気持ちをわかった気になってたんです。…だから…彼女が本当にやろうとしている事が分からなかった。傍にいたくせに、彼女が大切だったのに、中途半端に関わったから…本当の意味で理解出来なかった。そして…失った。」
そこまで聞いて、ローランドはジャスティンが言っていた事が、ジャスティンが言いたかった事が分かった。
ローランドは、専属護衛としての責任を果たそうとすれば、リゼに厳しい態度をとらなければいけない。
けれど、そうすればリゼを傷つけてしまう。リゼを泣かせる事になってしまう。
そんな冷たい仕打ちをリゼにする事は出来ないと思ってしまった。
だから、中途半端な態度しか取れず、彼女に一縷の望みを抱かせてしまったのだ。
リゼは、強く思い続ければ、リンジーがいなければ自分の想いが叶うと思い込んだ。
ローランドの中途半端な態度が、彼女に夢を見させてしまった。
そして、それはリゼにローランドに対する依存心を大きくさせ、ずっと、もっと強く彼の事を想い続ければ、ローランドの心が手に入ると思わせ、執着させ、拗れさせてしまった。
その事が分かった彼の唇が戦慄く。息が苦しくなる。
顔色は青白いを通り越して白く、蝋人形のようだった。
そんな状態の彼の背中をイアンは撫で続けた。
痛ましい思いで、少し前の自分を見ているようだった。
扉に凭れ、腕組みをして二人を見ていたマーカスは、静かに部屋から出て、廊下に待機した。
今だけは、同病相憐れんでもいいと思った。
そして、自分の足で立って前を向いて歩けるのならば…いいと思ったのだ。
壁に凭れ腕組みをして立っていると、相棒が来た。
俺には、こいつがいてくれた。口に出して言うと、恩着せがましく、調子に乗るから言わないが…。
黙って向かい側の壁に、自分と同じ様に立つ相棒を見て、口の端を少しだけ上げて笑った。
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