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化学準備室
しおりを挟む「はい、どうぞ」
「いつもありがとう」
目の前に差し出された珈琲の水面をぼーっと見詰めていると、彼が顔を覗き込んでくる。
近い。
「眠れなかったんですか?」
彼が妖艶な笑みを浮かべると、八重歯がチラリと見えた。
女性の身体を見ても何ともないのに、何故か彼の八重歯を見るとゾクリとする。
「いや、ちょっと嫌なことを思い出しただけだよ」
1限目まであと20分。
珈琲を飲んだらさっさと出よう。
若王子には心の底まで見透かされているような気がしてならない。
それに
「貴方のそう言う顔、ゾクゾクします」
目を細めながら手の甲を撫でられる。
「若、王子くん...っ」
そのまま手の甲に口付けられ、手首に歯を立てようとーーー。
「ふふ...可愛らしい...」
反射的に目をつぶっていたらしい、私の顔を見て可笑しそうに笑う彼を殴りたい。
いつもこうだ、化学準備室に来ると毎回からかわれる。
石井に触られた日なんて本当に凄かった。
触られた場所を何度も噛もうとするのだから。
石井のことが好きで私に嫉妬しているのか、いつも意地悪ばかりする。
私は金輪際誰かと交際する予定はないから安心して欲しいのだけど...。
「そう言えば今日、飲み会がありますね」
飲み会...?
そうだ、完全に忘れていた。
1ヶ月に1度、教員同士で飲み会をしていたが、今日がその日だったなんて。
よりにもよって、こんなテンションが低い日に...。
「姫神主任の隣か前、僕のために空けておいてくれませんか?」
「別にいいけど...」
彼からの突然の提案に驚きつつも、察する。
さては、石井が近場に来るのを見越して、親しくさせないつもりだな?
完全に理解した。
仕方ない、恋のキューピットにでもなってやろう。
「じゃあ、私はそろそろ行くよ。煙草の匂いだけは気を付けてね」
珈琲を飲み干し立ち上がった私を一目見た若王子は、綺麗に微笑み手を振ってきた。
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