2人の男に狙われてます

おもち

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進路指導室

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「ごめんね、おまたせ!」

進路指導室の扉を開けると、神崎は頬杖をつきながらスマホを弄っていた。

「ああ、俺も今さっき来たばかりだよ」

いつも無表情な彼が微笑むものだから、珍しすぎて一瞬思考が停止してしまう。

向かいの席に座り、先程整理したプリントを机に乗せた。

「ありがとう。私の授業で分からない所があったのかな?」

「いや、数学」

...うーん?

「私の担当教科は世界史と日本史と現代社会なんだけど...数学かぁ...」

「先生、数学も出来るよね?この前の授業寝ちゃってさ」

「まあ一応...碓井先生に比べたら教えるのは上手じゃないかもしれないけど」

「大丈夫、先生の教え方分かりやすくて、好きだよ」

私に対して好きと言った訳じゃないだろうが、顔がカッコよすぎて不覚にもときめいてしまった。

取り敢えず教科書を出してもらって、分からない箇所を聞いてから、一緒に問題を問いていくようにする。

その間も真剣に話を聞いて、一生懸命問題に取り組む姿勢には酷く感心した。
教師の立場で比べるのは良くないが、廊下で下品なトークを繰り広げる彼女らに比べれは余程可愛らしい。

「ここの答えはx=6であってる?」

「正解だよ、1発で理解するなんて凄いね」

結局全ての問題を間違えることなく正解した彼は、私が説明したことを綺麗にノートへとまとめていく。

わ、まつげ長いし鼻も高いな...。
髪はムラなく染められており、蛍光灯の光が当たると輝いて見えた。

「ん?どうした?」

目をまん丸くした彼が不思議そうに私を見る。

「あ、いや...!綺麗な顔してるなって思って」

かなり真剣に見詰めてしまっていたようで恥ずかしくなるが、綺麗だと思ったことにかわりはない。

「そんな。先生の方が綺麗だよ...」

口角を緩やかに上げたかと思うと、彼の手が私の手にそっと重なる。

あれ...何だこれ。

「ねえ、先生」

低くて心地のいい声。

冷たい手。

また、ゆっくりと、形のいい唇が開き

「もう1回、俺にぶつかってくれない?」

「......は?」

彼は誰もが想像できないことを口走ってみせた。

「この前の金曜日が忘れられないんだ」

「いや、ちょっと待って...痛かったよね..?」

「まあ...でももう少し痛くても良かったかな。今度は全力でぶつかってくれる?」

え、なにこの子、ちょっとやばくない!?

今までに会ったことがない人種で震えるんだけど。

「流石に神崎の頼みでもそれは...」

「お願い...先生」
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