82 / 197
盗み聞き
しおりを挟む「珈琲飲める?」
「あ、はい!」
マグカップを置く音。
湯を沸かす音。
全てが聴覚頼り。
と言うか、マジなんでこんなことしてるんだろ...めっちゃキモイ、よな...。
「砂糖とミルクは?」
「じゃあ1個ずつ...」
「ん。で、どうした?相談って」
「あの...」
珈琲を飲む若王子は、目を伏せて喋りにくそうな女子生徒をじっと見詰めている。
ああ、これはきっと
「先生って、彼女いるんですか?」
告白だーーーーーー。
化学準備室内に一瞬の静寂が訪れる。
「...んー、と...進路の相談、だよな?」
「いいから答えてください...!」
...やっぱり盗み聞きなんてするんじゃなかった。
ギュッと拳を握り、膝に顔を埋める。
「...付き合ってる人はいないよ」
「じゃ、じゃあ私と付き合って貰えませんか...?私、もうそろそろ卒業だし、そしたら立場も関係なくなるし」
あの女の子可愛かったし、普通の男なら揺らぐところだろうな。
若王子が、もし「いいよ」って言ったら...、そう考えると余計にモヤモヤした。
「...」
「ずっと好きだったんです。先生のこと...」
布が擦れる音と共に、ギシ、と椅子が軋む。
女子生徒はブラウスのボタンに指をかけ1つ1つ、ゆっくりと外した。
露になる胸の谷間と、女性らしいピンクの下着を見せ付けるように若王子に近付く。
「あっ...せんせ...」
若王子が乱れた服に手を伸ばし自分の元へ引き寄せれば、女子生徒は内心とても喜んだだろう。
しかし
「女性なら、自分の価値を下げるな」
彼女の期待を裏切り、動揺する素振りすら見せず、彼は乱れた服装を直してしまう。
「身体で男を誘惑するなんて、自分を安い女だとアピールしてるようなもんだぞ」
「っ...どうして...。卒業した先輩の中で先生とエッチしたって人いた...」
「はぁ?......君からの気持ちは嬉しいよ、でも付き合うのは無理...悪いけど諦めて」
唇を噛み、羞恥で今にも泣き出しそうな女子生徒を冷めた瞳で見詰める。
「どうやって諦めたらいいのかわかんないよ...カッコよくて、優しい先生が好きなのに...」
「じゃあ、1回だけエッチしたら諦めてくれる...?」
!?
思わず声が出そうになり、咄嗟に口を塞いだ。
「せ、先生と...?」
「ん...諦めてくれるなら、してあげるよ」
「...わかった」
さ、最悪だ...何言ってんだよ...。
モヤモヤとしていた感情は大きくなり、やがて怒りと絶望に変わる。
若王子が他の人とセックスするなんて、しかもこんな近距離で聞く羽目になるなんて...
自業自得だが、そんなことは耐えられなかった。
「なーんて...冗談。さっき自分の価値は下げるなって、言ったよな?そうやって簡単に股開くとか...自分の価値下げてることに気付かない?」
「え、だって...」
「はは、笑える...。どうやって諦めたらいいかわかんないって、そんなの僕に聞くなよ...」
21
あなたにおすすめの小説
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
皇帝陛下の精子検査
雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。
しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。
このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。
焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる