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柔軟剤
しおりを挟む「姫神さん気を付けて帰ってくださいね~」
「うん!今日は誘ってくれてありがとう、また遊びに行こう」
爽やかに笑う蒼依に近寄ると、彼は私の耳へ唇を寄せた。
「抱いて欲しくなったら何時でも俺の家においで」
「...!」
「蒼依、今何を吹き込んだ」
「はは、そんな大したことじゃないよ。じゃあ、おやすみ~」
蒼依に手を振り返し、車に乗り込む姿を見詰めていると神崎に腕を掴まれる。
「あんまり他の男のこと見んなよ」
「うっ、だって...蒼依くんカッコイイし...」
「そうでもないだろ...。今日は何で来たの?酒飲んでたから車じゃないよね?」
「うん、家に車置いてタクシーで来たんだ」
じゃあ、一緒に帰ろう。そう口にした神崎の後を着いていくと、ここまでバイクで着ていたらしく、真っ黒なフルフェイスヘルメットを手渡された。
「寒いかもしんねーから、これ着といて」
「え、でも神崎こそ半袖だし...君が着た方が...」
「いいから、先生が着て。風邪ひかせたらたまんない」
肩からパーカーを掛けられ渋々腕を通すが、彼の服が私にピッタリであるはずが無い。
大きいな...ダボダボでかっこ悪いけど、このパーカーから神崎のいい匂いがする...。
「あは、かわいい」
笑うな。
バイクに跨った神崎に手を引かれ、後ろに座る。
初めてバイクに乗るからなのか、彼の大きな背中にときめいたのかは分からないが、何故か異様に胸がドキドキした。
ーーーーー
「寒くなかった?」
ヘルメットを脱ぐと、艶やかな黒髪がハラりと舞う。
フルフェイスヘルメットに覆われていた綺麗な顔が微笑み、思わず言葉を詰まらせた。
「せんせ?」
「っ、ううん!大丈夫、夏場なのにバイクに乗ると本当に寒いね!服貸してくれてありがと」
「昼間は気持ちいいんだけど、夜だと冷えるからな。持ってきておいて良かったよ」
...もしかして、私のためにわざわざ持ってきてくれたのか?
隣で大きな欠伸をする神崎は、それ以上何も言わなかった。
当然のように私の部屋に帰宅する彼は、着いて早々我が家のソファーにダイブする。
「は~...疲れた...」
天井をぼーっと眺める神崎の隣に腰を掛け、両腕をあわせればパーカーの袖を鼻に近付けた。
くんくん
「...」
「...なに匂い嗅いでんの」
「...神崎の匂い好きなんだよね。若王子くんからは甘い匂いがするけど...神崎は石鹸みたいな匂い...」
「えー、返してよ。何か恥ずかしい」
...返さなきゃダメ?絶対?
パーカーに手を掛け、脱がせようとする神崎に背を向ける。
「...やだ、後で返すから...もうちょっと貸して」
くんくん くんくん
「いい匂い...柔軟剤かな?どこのメーカーの使って...」
「俺はあんたの方がいい匂いすると思うけどな。今すぐにでも食べたくなるような...美味そうな匂い...」
甘い声で囁きながら背後から抱き締められると、彼の大きな腕の中にすっぽりと収まってしまった。
に、逃げられない。
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