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汗
しおりを挟む「は~...どうしよ...」
放課後、花壇の花に水をあげながら、私は盛大にため息を吐いた。
暑い中、元気にグラウンドを走り回るサッカー部を横目に、ベンチに腰を掛ける。
周囲の目を惹くような若王子と神崎が、私に好意を寄せているなんて信じ難い話だ。
神崎はぶつかった時に一目惚れしたと言ってたが、そもそもに若王子からは好きになった理由を聞いたことがない。
甘美に愛を囁いた彼が何故私を好きになったのかが気になって、ベンチで考え込んでしまう。
身体の関係になる前から、からかわれたりしていたが、若王子くんはいつから私のことを好きだったんだろ...。
考えれば考えるほど、どんどん気になる点が増えていくが、結局は考えても分からない。
やっぱり直接聞くしかないよな...。
「わっ!」
「え!?あ、すみません...!水かかっちゃいました!?」
グラウンドの水飲み場で水分補給をし始めたサッカー部に、ぶっかけられた。
「お前、蛇口に親指あてんなよ!姫神先生大丈夫ですか?結構濡れちゃったな...」
「せんせ~、マジすみません!」
「大丈夫だよ、暑いからすぐ乾くと思うし...!部活動お疲れさま」
こんなところに座っているのも良くないと思い、謝るサッカー部の子達に別れを告げた後、校内に戻った。
それにしても結構濡れたな...今日はジャケットも持ってきてないし、こんな透けた状態で職員室に戻るのも恥ずかしい。
教室の掃除でもしてれば、いずれ乾くか...。
3-Aの教室に足を運ぶと、教室には神崎と深瀬を取り囲む数名の女子生徒がいた。
「君たちまだ帰ってなかったんだ」
「先生...!どうしたの?そんなに濡れて、誰かにやられたの?」
それまで気だるげに話し込んでいた神崎は私の顔を見るなり勢いよく立ち上がり、すぐさま距離を詰めてくる。
「いや...私がぼーっとしてたから、かかっちゃって」
「そうなんだ。透けてるし、俺のジャージ...着て」
ワイシャツの上に着ていたジャージを、わざわざ私の肩にかけて柔らかな笑みを浮かべた神崎は、その手で頬を撫でた。
「汗の匂いとかしたら、ごめんな」
わ、わ...これ...。
微かな汗の匂いと神崎の匂いが混ざって、えっちしてる時のこと思い出しちゃうんですけど...!
「かんざき...」
「ん...?」
神崎にしか聞こえないくらいの声で名前を呼び、肩から掛けられたジャージに鼻を寄せる。
「この匂い...やばい...、....っ」
「...。ごめん、やっぱ今日はパス。なんか先生が体調悪いみたいだから保健室連れてくわ」
ん?
「えー、神崎って最近付き合い悪くない?」
「また後で埋め合わせするから」
文句を言う女子生徒を無視して私の手を引く神崎は、空き教室に忍び込んだ。
「神崎、ここ入っちゃダメなところだよ」
「入っちゃダメなところだから連れて来たんでしょ...」
死角になった席に座り、彼が私の身体を抱き寄せる。
「そんな可愛い顔されたら、我慢できなくなる...」
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